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"教育系" note まとめ

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"教育系" noteのまとめです。
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2022年12月の記事一覧

役に立たない古文を学んで何になる?

「古文教えて楽しいですか?」と先日、 知り合いの大学生の女性に聞かれました。 英語の講師をやっている人です。 「楽しいよ」と私が答えると、 「でも、古文って 役に立たないじゃないですか?」 と彼女は重ねて尋ねました。 私の知る範囲では 彼女は真っ直ぐな人なので疑問をそのまま 言葉にしただけのことでしょう。 こういう忖度のない質問は ありがたいものです。 古文講師という 自分がまとっている職業の意義を 捉え直すことができるからです。 「まあ、直接役には立たないかな」 そう言

『学校するからだ』(晶文社)発売!――日本マドンナをめぐる思い出

 植草甚一でおなじみの晶文社より『学校するからだ』という本を出しました!  2017~2018年くらいに企画が立ち上がって、のんびり書いていたらコロナ禍に突入、最後は起きた出来事をほぼリアルタイムで書いていました。以下、書くにあたってのいくつかの文脈を。 【文脈1】出版関係の人と話していると、学校というのは外部からは謎めいているらしく、意外と面白がられることがあるのだな、と思ったことがあります。また、けっこうな偏見があるのだなと思ったこともあります。学校をめぐるつまらない

機械学習で「日本言語地図」を作る

ことしもアドベントの季節が来ました。この記事は、アドベントカレンダー「言語学な人々」2022の12月12日のエントリーとして書かれました。    ★★★★ 昨年は敬語の話を書いたが、今年はプログラミングのことでも書いてみよう。ここ2年くらい機械学習や深層学習のプログラミングを少しずつ学習できたので、自分でできることがかなり広がった。何か応用問題をやってみたくなって、言語地図を書いてみることに挑戦してみた。言語地図とは、言語地理学の中で発展してきたもので、特定の単語や音韻の

文系のための大学院進学準備(1)  大学院入試の仕組みを理解しよう

 「大学院に進学しよう」と思った方、少しだけその意識を持ち始めた学部生や高校生の皆さんに向けて書いてみたいと思います。  大学院入試に向けた準備、何をしたらよいかわからない方もいるかもしれません。  私自身、手探りで準備して本番に臨んだタイプでした。    今回は、「あの頃(学部3,4年生)の自分に伝えておきたい」こととして、まとめてみたいと思います。  もとから大学院進学の準備をされている方にとっては「当たり前」なことかもしれません。そっと画面を閉じて、研究に集中してくだ

141年の歴史に幕を閉じた小学校③(最終回)地域から学校がなくなることについて -みまさかぞく#038

2016年3月に閉校した岡山県美作市立梶並小学校。新しい年度が始まり、子どもたちと私は、統合先の新しい小学校へ行きました。 1.新学期スタート新学期が始まると、梶並の子どもたちは、スクールバスで片道約20分の道のりを登校するようになりました。毎朝、ちゃんとバスに乗れるかな?新しいクラスに慣れて、笑顔で過ごせるかな? 小さな世界から大きな世界へ出た時、どんな力が要るだろう…。「まずは慣れること」。そのためには、踏ん張る力も大切だけど、時には流される脱力もあった方が良い。どれ

音読や音読指導をめぐって感じるギャップ 〜石川&ちょん『対話で学びを深める 国語ファシリテーション』〜

石川晋、ちょんせいこ『対話で学びを深める 国語ファシリテーション』フォーラム・A、2022年 晋さんもせいこさんも、これまで何度も仕事でご一緒してきた方々。とはいえ、二人のタイプは違う。 一筋縄ではいかないというか、頼んだようにはやってくれないけれどこちらの求めには必ず応えてくれる晋さん。 テクニック化の限界を見定めつつも、テクニックの習得および共有が可能にする地平を信じ、そのためのトレーニングを凄まじい高水準で展開してきたせいこさん。 気まぐれと構造という相反するところに

「遊びのつくり方」は、全業種の必修科目である

Twitterで、「 #遊びのつくり方」というコラムの連載をほぼ毎日しています。↓ 今回は皆様に、よかったら毎日このハッシュタグを追いかけて自分の仕事に纏わる「遊びの作り方」を考えていってほしい、というお話をします。 この「 #遊びのつくり方 」というハッシュタグを見た大人の多くは、自分の仕事には「遊びをつくる」なんて関係ない、というイメージを持ち、素通りするでしょう。 その理由は、 1.「遊び」という言葉の曖昧さ 2.「遊び」と「仕事」という言葉のイメージのかけ離れ

第11回 『山月記』は日本の高校生をどうしたいのか? 石原千秋の国語教科書論|三宅香帆

日本の国語教育=道徳教育?2022年末、なんだか今年は「国語」に関する話題が盛り上がったな、と感じるのは『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(石井光太著、文藝春秋)の流行ゆえではないだろうか。「ごんぎつねが読めない子どもたち」といったエピソードがニュースやネットでたびたび見られた。ちなみに「ごんぎつねが読めない子どもたちの話」は『ルポ 誰が国語力を殺すのか』のまえがきに登場する話題である。 とはいえ子どもたちの国語力に関する本が話題になるのは、今年に始まったことではない。若者の活

もしも高校倫理の先生がアリストテレスだったら。『ニコマコス倫理学(上)』

『ニコマコス倫理学』のテーマは「幸福とは何か」 アリストテレス「皆さんこんにちは。私はアリストテレス、古代ギリシアから来ました。今日は私の倫理学に関する著作をまとめた『ニコマコス倫理学』をテキストとして皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。よろしくお願いします。」 生徒一同「よろしくお願いします。」 アリストテレス「今回の授業のテーマはずばり【幸福とは何か】です。ほぼすべての人間は幸福になりたいと願っています。皆さんが一生懸命勉強するのも、大人が必死に働いてお金を稼ぐ

公教育の未来を探す。日本でいちばんパブリックなまちづくりを始める小さな田舎の挑戦

「安平町が日本一パブリックな町へ?!」 新しい小中一貫校の見学に行ってきました。全国各地で先進的な学校づくりに関わっている教育環境研究所が教育環境計画を担当、建築設計はアトリエブンク、チームラボがICT環境設計を行っているミラクルな学校です。 場所は、北海道勇払郡安平町(ゆうふつぐん・あびらちょう)! 車で新千歳空港から20分、札幌へも70分の自然豊かな町で、サラブレットの産地として知られ、カマンベールチーズとゆきだるまポスト、菜の花はちみつが有名で有機野菜農家さんもた

教員養成のための英語科教育研究

神奈川大学外国語学部英語英文学科です。 髙橋ゼミでは、中学校教員養成を主たる目的として2年次から4年次までの以下に示す3年計画で、理論と実践のバランスを取りながら「プロの英語教員」を育てています。2022年度にゼミ出身の教諭が104名となり、「ゼミから教諭100名!」の目標達成を達成できました。卒業生は北海道から沖縄まで全国の小中高大の教育現場で活躍し、指導主事も生まれています。 <2年次・教職基礎研究> 前期:「英語授業基本知識・技能トレーニング」 10のテーマを掲げ、

🦊「かいけつゾロリ」🦊の原ゆたか流 物語のつくりかた

今年35周年を迎え、12月9日(金)には劇場映画「映画 かいけつゾロリ ラララ♪スターたんじょう」も公開される大ロングセラー「かいけつゾロリ」シリーズ。12月7日(水)発売の『かいけつゾロリきょうりゅうママをすくえ!』でなんと72冊にもなる大シリーズの作者、原ゆたかさんはどのように物語と絵をかかれているのでしょうか。制作秘話を伺いました。 児童書作家になったのは? 私は『ちいさなもり』(1975年/フレーベル館刊)という自作の絵本は作っていましたが、元々は作家ではなく、他の

「だれ」を増やすことが学力向上に効果的?

教育予算、特に「ヒト」に関する予算をより拡大してほしいというのは、公教育に関わる方々の多くが願うところです。しかし、財務省曰く、1) 日本は教育支出の対GDP比は低いものの、在学者1人当たり教育支出の対1人当たりGDP比はOECD諸国平均と遜色がない、2) 諸外国に比べて学級規模は大きいが、教員1人当たりの児童生徒数は主要先進国並みである(日本は1クラス当たりの担任外教員数が多い)と主張しています(令和4年5月25日 財政制度等審議会 参考資料より)。 さて、単純に他先進国