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"歴史" 系 note まとめ

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2024年3月の記事一覧

【現地リポート】日本史講師が”歴史フェス”に潜入!!

皆さん、こんにちは。 日本史講師のSatoです。 今回、私は2024年3月17日に名古屋大学東山キャンパスで開催された”歴史フェス”に潜入してきました。 その模様をお届けしたいと思います。 ”歴史フェス”とは・・・ 歴史フェスは、歴史に関心のある人が一つの場に集まって、ともに歴史を楽しむお祭りです。 (歴史フェス公式HPより) 歴史研究者や社会科(日本史・世界史)教員のみならず、歴史を楽しみたいすべての人が一緒に歴史(学)について考えたり、情報共有したりするという新しい

益田勝実氏と歴史学の立場

 「益田勝実氏と歴史学の立場(400×5枚以上。9月24日しめきり)」という標題があるのですが、どこに発表したか忘れました。一〇年以上は前のものです。  益田勝実氏の仕事を読むようになったのはいつ頃のことか記憶がない。ただ、大学時代に『火山列島の思想』を手に取ったことは確実で、変わった名前の本だと思ったことが記憶に残っている。そして手許に益田さんが登場する『文学』の一九九〇年冬号があるから、そのころからは意識していたのだと思う。  ただ、この「研究の対象としての文学」という

楽しく学ぼう! 戦後日本と「WGIP」についてのQ&A

3月16・17日の東京新聞/中日新聞に、風元正さんの『江藤淳はいかに「戦後」と闘ったのか』の書評を寄せました。Webにも転載されたので、こちらのリンクから読めます。 平山周吉さんの『江藤淳は甦える』が「実証史学」的な江藤論だとすれば、風元さんの本は「文芸批評」的な江藤論。ちなみにどちらも、編集者として生前の江藤と面識のあった方ですね。 さて江藤淳の戦後との闘いというと、いま多くの人が連想するのがWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)ですよね。風元さんの

なぜ「モンゴル帝国=キリスト教国説」が流布したか

我々の感覚的にはあまりピンときませんが、モンゴル帝国が台頭し周辺各国を怒涛のように飲み込んでいく様を聞き、西欧人の多くは 「異教徒からエルサレルムを解放しに東方のキリスト教大国がついに動いた」 と歓喜の声を上げました。 後にそれは間違いだったと分かるのですが、それでも「実はモンゴル皇帝はキリスト教信者である」という話を教皇や国王を含む多くの人が信じていました。 それは 「絶対にいるはず」の東方のキリスト教大国の存在を多くの人が切望した結果でもありました。 1. プレスター

図書館史と学校図書館と情報検索と

みちくさのみちpodcast史上初のゲスト回です。 学校図書館の歴史について研究し、現在も様々な取り組みを行われている図書館情報学研究者の今井さんにお話を伺いました。 (2024年3月某日、Zoom収録)。 卒論のテーマ決めから、高校生と大学生の検索の目的の違い、Wikipediaとの付き合い方まで、ぜひお聞きください(全4回配信)。

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・東京書籍の比較編

これまで山川出版社の『詳説世界史:世界史探究』(ややこしいタイトルだ…)の索引をベースにして、ほかの教科書の索引の比較を試みてきた。 帝国書院の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/neeb8e1b5eae4 山川出版社『新世界史』の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/nf81a976401fb 実教出版の索引と比べる https://note.com/sekaishi/n/ned12e0c4dfbf

研究日記 Day10

イベントで疲れた週末。 金曜の夜は、職場の年度末お疲れパーティ。土~日は、西アジア考古学の報告会が自分の研究所で開催となっていたので、もろもろ忙しかった。ただし、土曜日はオンライン講座(NHKカルチャーセンター)があったので、私はそちらに専念。日曜日は丸一に学会でした。 土曜日のレクチャーは、アジアの船について。主に船体構造の話。著名な沈没船を紹介。また、ハイブリッド船について。二つの文化的特徴を持つ船が時々見られます。中国と朝鮮半島の船のミックス。日本の船だけど中国の特

渋谷の風景印散歩で國學院大学博物館へ

昨日、渋谷の風景印散歩で塙保己一の史料館へも立ち寄った事を書きました。 が、それ以外にも行ったことのない所へ立ち寄りました。 國學院大学博物館です。 ⬇️此方は博物館のパンフレット表側 ⬇️パンフレット裏面の地図です。 まち歩き、最終箇所。 高齢者の方々、よく歩きましたね。 主催者の方が 埴輪や土器が所狭しと雑貨屋のように並んでいる と仰っていて まさかねぇ…と思ったのですが、 はたして その通り!言い得て妙、な表現でした。 先ずはかわいいお二方がお出迎え

MEMSO-研究者による、研究者のための中世史研究ツール

MEMSO: Medieval and Early Modern Sources Online <246-528> (TannerRitchie Publishing) 極東書店日本総代理店商品 - お問い合わせはこちら MEMSO(Medieval and Early Modern Sources Online)とは、中世・近世のイギリス、アイルランド、スコットランド、そしてヨーロッパ大陸に関する政治・社会・宗教・経済・外交・文化などの幅広い貴重な資料を収集したデータベ

【ニッポンの世界史】#32 少女漫画がひろげた世界史の担い手:『ベルサイユのばら』を中心に

 はじめに結論から。  少女漫画『ベルサイユのばら』が、世界史をコンテンツとして楽しむことのできる広汎な読み手を育て、歴史の関わり手を男性だけでなく女性にひろげる役割を果たした。  今回ここで述べるのは、たったそれだけです。 *** 歴史を物語として楽しむカルチャー  歴史を物語として楽しむ行為自体には、口伝えの伝承や軍記物語など、それこそ長い長い歴史があるわけですが、日本ではとりわけ近世以降、商業的な出版や演劇、講談を主要なメディアとして、たとえば『三国志演義』の二

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・実教出版の比較編

今回比較するのは、山川出版社『詳説世界史:世界史探究』と、実教出版『世界史探究』の索引です。 実教出版の用語の選び方をみるため、山川にはないが実教の索引にはある用語のうち、気になるものをピックアップしていきます。 実教出版の特徴はウェブサイトによると以下の通り。 あ 愛国啓蒙運動 愛国派  アメリカ独立戦争における愛国派(パトリオット)  アウグスライヒアウスグライヒ(訂正:2024/03/19) アタワルパ  ローラン・ビネ『HHhH』に出てきますね。  実

【世界史教科書比較】山川詳説vs新世界史

ながらく"定番"と目されていた山川出版社の詳説世界史と、のびのびとした ”攻める” 記述で知られる新世界史(採択数は少ない)の記述を、今回は索引の異同に注目して比較します。 参考にしたのは新世界史は見本(2022年検定済)と詳説世界史は2023年刊(2022年検定済)の索引。 「王の道」のように、索引にはないが本文には掲載されているものもあるが、すべてに目を通しているわけではないので、おおよその傾向として参考にしてください。 新世界史の特徴 初めに特徴を箇条書きにしておく

【2024年版】世界史教科書 消えた用語、増えた用語:山川出版社・帝国書院の比較編

この記事の要約この記事は長い(約40000字)のではじめに要約を書いておきます。 以前、山川出版社の新しい世界史教科書の用語がどのように変化したのか記事を書いたことがあった。しかし、必ずしも単純に「増えた」「減った」と言えないのではないかという事実がみえてきた。 そこで今回は帝国書院の世界史探究教科書の収録語と、山川の収録語を比較することで、山川が収録しなかった用語とは何かをあぶり出してみることとした。 これによって、世界史の教科書にも多様な編集方針があり、その背後には

【ニッポンの世界史】#31 学習参考書と世界史:なぜ世界史は「暗記地獄」化したのか?

 これまで私たちは、「ニッポンの世界史」は、アカデミズムや学習指導要領のような“公式”世界史と、それらと対抗関係にある“非公式” 世界史の綱引きによって形成されてきた経緯をみてきました。  “公式”の語りを、“非公式”の語りが突き崩すといっても、両者の間に厚い壁があったわけではありません。  ときに、ひとりの書き手が、両者を行ったり来たりすることもみられました。  歴史学者の土井正興(1924〜1993)がそれにあたります。 土井正興: スパルタクスの研究者から教科書執