本当の戦争の話をしよう
ティム・オブライエンの小説は、3年ほど前に『ニュークリア・エイジ』を読んで以来の2作目。
読み終えて思うのは、紹介文にある「戦争」というのが比喩的なそれではなく、それこそ文字通り「本当の戦争」であったということ。
『ニュークリア・エイジ』の方が読みごたえがあったと感じたけれど、著者の無骨な文体は僕は嫌いではない。誠実さが伝わってくるし、本を読んでいるというよりもそこにティム・オブライエンがずっといるような、そんな暖かさがある。話の内容は怖いものが多かったのだけれど。
いったいどこまでが本当か?というのは愚問だと思うけれど、実際に著者が話の中に登場してくるところをみるとほぼ実話なのだろう。
5人ぐらいの戦友が変わるがわる出てくる。多くは死んだ。いろんな死に方をした。顎は喉元にめりこみ、片眼は大きく星のかたちに切り抜かれ、ある友は糞だめ野原に沈みこんでいった(その戦友は死後、逆立ちの状態で引っ張り上げられることになる)。看護兵は人をみると内臓が透けてみえるという。人が肝臓やら腎臓やらにみえてくる。昼夜が逆転し、多くのものは正常でいられなくなる。ある者はトランキライザーにすがり、メロウに死んでいく。女はかりかり揚げになり、赤ん坊はロースト・ピーナッツになり、兵隊はおやつ!おやつ!と叫んで跨いでいく。
著者は「お話(ストーリー)」は我々を救済することができるという。著者自身も自己治癒の一環として書いている。
表題作「本当の戦争の話をしよう」では、本当の戦争の話というのは・・・と力強く語る。
ひとつ思うのは、10年後には、いや20年後には、オブライエンさんも村上春樹さんもいないかもしれないという悲しさ。
【出版社Webより】
人を殺すということ、失った戦友、帰還の後の日々——ヴェトナム戦争で若者が見たものとは?胸の内に「戦争」を抱えたすべての人に贈る真実の物語。鮮烈な短篇作品二十二篇収録。
*****
2022年…今年は人生の大きな転機だった。
長く暮らした町を離れ、すてきな図書館のある静かな町にやってきた。
マイペースで読み続けます。キープ・オン・リーディング。
来年もよろしくお願いいたします。