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勝負強さは悔しさの中から生まれる。中日の板山選手が古巣阪神から値千金の決勝打。昨季に戦力外通告。新天地で育成契約からはい上がった

勝負強さは、時に悔しさの中から生まれるかもしれない。中日の板山祐太郎選手(30)が値千金の決勝打を放った。相手は昨季まで在籍していた阪神だ。戦力外通告を受けたが、まだ現役でプレーできると手術に踏み切り、新天地で育成契約からはい上がった。プロ9年目。古巣への「恩返し」にもなった試合。はい上がる男の強さが凝縮されていた。

25日に倉敷で行われた竜虎対決。両チームの先発は、阪神が才木浩人投手、中日が小笠原慎之介投手だった。

両投手の好投で、イニングボードには「0」が並んでいく展開に。先に勝負に動いたのは中日だ。八回表。7回無失点ピッチングの小笠原投手に代打を送る。このイニングで絶対に得点を取る意思表示に思えた。

代打のバッターが倒れるなど2死を取られたが、2番田中幹也選手がライトへ三塁打を放った。

チャンス到来。ここで左打席に立ったのが板山選手だ。相手の才木投手は今季の交流戦で3戦全勝。波に乗っている投手をどう攻略するか。

板山選手はカウント1-1からの3球目。真ん中よりの134キロスライダーを振り抜いた。打球はライト前へ。均衡を破る先制点となった。

虎の子の1点をリリーフ陣が守り抜いて、中日が阪神に競り勝った。板山選手の値千金の一打が勝利を呼び込んだ。

板山選手は東京の成立学園高から亜細亜大学へ進んだ。2015年の大学4年秋の最後のシーズンでは、東都大学リーグ優勝、明治神宮大会を制して日本一となる活躍を見せた。

この年のドラフト会議で阪神から6位指名を受けて入団。翌年のルーキーイヤーには40試合で115打席に立った。しかし、それ以後、出番は減っていき、昨季はわずか12試合の出場で戦力外通告となった。

阪神がリーグ優勝、そして38年ぶりに日本一となったが、複雑な思いだった。それでも板山選手には確信があった。まだプロ選手としてプレーできる。10月に右ひじの手術を行い、現役続行をめざした。

板山選手は昨年11月に中日と育成契約を結んだ。プロとして戦う「セカンドチャンス」。この機会をものにする。今季は2軍の試合で活躍を続け、今年5月に支配下登録選手にはい上がった。

5月5日に1軍に昇格すると、同じ日に移籍後初安打をマーク。6月の交流戦では楽天戦で3安打と大暴れ。チームの信頼を勝ち取った。

そして、この日、古巣との戦いで貴重な決勝打を放った。今季通算6打点目。阪神在籍時には1シーズンでの最多打点は新人時代の5だった。これまでの自分を上回ったのだ。

勝負強さは、時として悔しさの中から生まれるのかもしれない。今年は辰年。ドラゴンズでセカンドチャンスをつかんだ板山選手のさらなる活躍が楽しみだ。

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