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「ゆう太」



はじめに

きみは、幽霊を信じるかい?
ぜったい「いない!」と思うだろ・・・ところがいるんだ!

ぼくも幽霊がいないと思っていたが、小学校五年生のころ、ゆう太という名前のやつと親友になってから信じた。

だってあいつは幽体人なんだから。

幽体人とは、幽霊と人のハーフ。そして、ぼくは、今でもゆう太と親友だぜ!

なぞの転校生

なにかが起こるときには、かならず「ウワサ」が出る。
あいつもそうだった。

ぼくの友達、森 陸(もり りく)通称「リック」がウワサを広めた張本人だ。

帰り道ぼくは、のそのそ家へ帰っていた。
そしたら、とつぜんリックがものすごいスピードでとっしんして来た。

おどろいている間もなく、リックは話し始めた。

「おい!くびつり公園でおれがなにをみたのかわかるか?」と言ってきた。

くびつり公園とは、昔その公園にあるもみの木で人がくびつりをやった事から名前がついた。
そしてリックはつづけた。

「今日来た転校生いるだろ?そいつがベンチにすわっていて、向かいのベンチにイチゴドロップをなげたんだ。そしたらドロップがベンチの上でピタッと止まって、なにかに投げ入れるおとがして、ドロップが空中でこなごなにくだかれて、まるでのどを通るみたいに下におちていくんだ!!」と言った。

ところが、ぼくはこう言い返したんだ。

「ばか、そんなわけないだろ!おまえがつかれてんだよ!」と。

うくえんぴつ

つぎの日、みんなその転校生 れい ゆう太には近づかなくなった。
たぶんリックがみんなに昨日のことを話したからだろう。たしかにあいつは気味がわるい。

じゅぎょう中てんじょうに目を走らせたり、休み時間にだれもいないのに話していたり・・・とにかくぶきみ。

そんなあいつを余計にぶきみにさせたのは、ある日のほうかごだ。女子三人がういている鉛筆を見たという。

ぼくはそれでも信じなかった。あれを見るまでは・・・。

幽霊さんじょう!!

日がたつにつれ、ゆう太のことが気になっていった・・・。
ある日、黒川雄介 別名「クロッチ」がぼくの机にやって来た。
「なあ、ひろ・・・・」
ひろ とは、ぼくの名だ。
「ますだ のやつが、ゆう太のこといじめているぜ。」
ますだは、ぼくたちのクラスのいじめっ子だ。おもに女子、一年生、あと転校生がターゲット。しかも何をするのかわからない。
そのますだが、ゆう太をいじめていたのは、グランドのすみ、工事している所のうらだった。

ぼくたちがそこに来たときは、気が強い女子、月葉七海 別名「しちみちゃん」がますだをどなりつけていた。
「あんたね!転校生いじめてどーすんのよ!ゆう太くんにゴメンって言った?」
だけどますだは、ひかない。
「と・・・となりにいたゆう太がいきなりニッて笑ったんだ。すると、どこからともなく「オ〜〜オ〜〜エボ〜〜エボ〜〜」と聞こえてきたんだ・・・・・・・うあーーーーーー!!!!!!!」
「!?????」
なんと、ますだが持ち上げられたんだ!
そのますだを持ち上げたのは、えたいの知れない物だった。
それは、女子中学生なのだが着ているセーラー服はボロボロ、顔のはんぶんがしんしょくしてグロテスクなことになっている。
そして、青白い火の中に所々服には血痕がついている。そして手が一つない。

そういえば聞いたことあるぞ・・・・もともと黒目市小学校は中学校だったっけ・・・。たしか先生が話を聞かない学生を家庭科の時間にさしころしたんだっけ・・・。そしてその場所がこの工事げん場だったっけ。

おい・・・まてよ・・・あれって・・・もしかして・・・・

ゆ・ゆ・ゆ・ゆ幽霊!!だ〜〜!!

ホモ・ゴーストピエス

「ど〜〜ス〜〜る〜〜?」の〜んびりしたような、ひびくような声が聞こえてきた・・・と・・・「やあ」とゆう太はフツーに声かけている。
「な・・・なんなんだこいつ」ぶらさげられたますだが妙な目で空中からにらんだ。
「プールになげこんどいて」とゆう太。
「OK」とその幽霊が言ったかと思うと体育館の屋上へともってった。
そしてドッバーン!!
ますだがプールへ勢いよく落ちた。
先生が三人プールへ行った。まぁ、ますだはびしょぬれで何かわめきちらしながらプールから出て行ったけど・・・。
「あれって・・・幽霊?」と沈黙をやぶったのは、しちみちゃんだった。
「あれ?」とゆう太。「あれはホモ・ゴーストピエス(学名:HOMO EXSPIRARIT SAPIENS)(和名:幽霊)だよ。

「なにそれ。。。。。」とシチミちゃんがつぶやいた。
「簡単に言えば幽霊」とゆう太

「なんでそんな面倒くさい言い方するのさ普通に幽霊と言えばいいじゃん」のんきそうにクロッチが答えた。

「えっ!知らないの!?幽霊って全部の種類のことをまとめていった言葉だぜ。」
「細かく分けると怨霊、船幽霊、近代霊、心霊、ゴシック霊(これはヨーロッパにしかいない霊)、プレデター級(スレンダーマンやモスマンなど特別な進化か突然異変で生まれた生物。幽霊に近い仲間)、ゾンビ(ブードゥーの司祭)亜種として、兵器生物、生霊、そして最後に僕のお母さんが発見した人間に一番近いとされる亜種、霊体人だ!つまり僕」

かなり長い話だったのでゆう太自身も息を切らしていた。

「だ、、、、ゼイハゼイハア、、、だけどこのことを人に、、、ハアハア、、、言っちゃダメなんだ、、ふうふう、、でも君たち三人は知っちゃったから、、、、、」言いかけたその時リックが割り込んできた

「なあ。何話しているんだ?」
「ああ、ゆう太が、、、、、」
と口が軽いクロッチが今までゆう太が話したことを全部言ってしまった。

「、、、、、、、、、、、君たち四人はそのことを知っちゃっただろ」
関係なしにゆう太は続けた

「そのことは絶対に人に言ってはいけない。そのことを約束してくれたら今日僕の家に来ていいよ」

「約束します」と四人は答えた。

「なら放課後、僕の家に集合な」と言って彼は昇降口に走って行った。

いつの間にか昼休みが終わっていたのだ。 

ゆう太の家

黒目市は伊豆半島の先端に位置する地方都市である。
北は鬼手山脈が連なっておりその奥に廃村化した霊首村がある

地区は三つに分かれており一番北が稲荷狐地区、南が姑獲鳥地区、そこから少し行った所の海に浮かぶ三角形の島が鮫島である。

そして二つの地区に挟まれているのが僕たちの住むきさらぎ地区だ

鬼手山脈のふもとにあった旧きさらぎ駅が廃止され(2チャンネルで悪い噂が広まったから)新・きさらぎ駅がきさらぎ地区に建てられたので人口が増加

それからフランスの世界的に名の知れた製薬を専門とする財団、
(読者諸君、この財団をよーく覚えておくんだよ。)
ダイヤクロス財団の研究所、ダイヤクロス・ジャパン研究所が建てられたのだ。

今僕は研究所の前を歩いている。有刺鉄線が上に絡みついたフェンスがを左に、車道を右にしながらゆう太の家に向かっている。

ここからゆう太の家までは橋を越えて、リックのお父さんお母さんが経営している丸森ラーメンの前を通って右に曲がり八尺ノ木公園の前で休んでから坂道を登るとかなりデカい家が右側にある。

コレがゆう太の家だ。

間違いない、大理石の表札にレイと刻まれている。

横にあるインターホンを鳴らすとゴーストバスターズのテーマ曲の序盤の方が十秒間だけ鳴り

「はーい。どなた?」
と女性の声がした。

「あのボク、ヒロと言う者です、今日ゆう太くんに家に来いと言われたんですけど、、、、」

ボクが答えると「アー。ヒロくんね!ゆう太からは聞いているよ!君の友達も来ているよ。早く上がりな。」

と言葉が終わるか否や玄関が一人でに開いた

「大丈夫だよヒロ。」

とまた女性の声が今度は奥の部屋から聞こえて来た。

「そのドアはわたしがコントロールしているから。
 早く入んないと閉めちゃうよ」

その直後にドアが閉まり出した。

僕は慌てて閉まりかけのドアから、中に滑り込んだ。

その後玄関のドアはガチャンと閉まった。

リビング

下駄箱の上にはドイツの旗や見たこともないアメジストが黄緑になったような鉱石が置いてある。

「おーいヒロ!」とリックの声が聞こえて来た。
「奥のリビングルームに居るよ」

僕は靴を脱いで奥の部屋に駆け足で向かった。
ドアを開けると手前にガラスのモダンな机があり
その向こうのソファーにリックとクロッチそしてゆう太が座っており
机の横には座布団が敷かれ左側の座布団にシチミちゃんが正座していた。

机の真ん中に窪みがあり、そこからホログラムのような物が映し出されている。

部屋の隅に奇妙な人物が立っていた。

茶色っぽい髪の毛で後ろは束ねてある、ジーパンを履きワイシャツを着てその上から白衣を羽織っている。

何より気を引くのが頭につけてるゴーグルである。
レンズが黄緑で少し発光している。
右側のレンズには照準が付いている。

「どーぞ座ってください。」

と白衣の女の人が言った。

白衣の女の人に言われるまま座布団に腰を下ろし部屋をグルーと見回してみた
シチミちゃんの後ろに大きな棚があり本やファイルが入っている。

入り口のドアの横にもガラス張りの戸棚があり
三段目にバイオハザードに登場するフィギュアのコレクション。
二段目はバック・トゥ・ザ・フューチャーのフィギュアコレクションが置いてあり、一番上の段はNobel Prize(ノーベル賞)と色々ごちゃごちゃ書かれているガラス製の板が置いてあった。

「どうも。わたしはゆう太の母のレイ・水蓮です。」

と女の人が言った

「は、、、、、初めまして、水蓮さん」僕たちはその言葉しか思いつかなかった。

「アハハハ!いいよ良いよ。わたしの事は愛称で呼んで。愛称はソーレンだから」
笑いながらソーレンは続けた
「そのかわりあなた達もあだ名で呼ぶからね。あと、、、」

そしてクルリとゆう太の方に向いて
「何考えてんの!四人も幽霊の存在を知っちゃたじゃない!」

何かブツクサゆう太に言っていたが僕たちの方に向き直った

「ここで質問ある人」

「ハーイ」
シチミちゃんが手を上げた
「ソーレンさんはどこで働いているんですか?」

「うーん。口で言うより見た方が早いかな、、、?
まっ、良いや。君達わたしについて来な。面白い物を見せてあげるから」

と言い残すとドアを押してリビングの前の部屋に入って行った。

僕たちもソーレンの後を着いってってその部屋の中に入った。

僕が最後に部屋に入るとソーレンが振り向いてこう言った。

「ドアはキチンと閉めといて。奴らにわたしの研究成果を見られたら大変だから」

ラボ

その部屋はまるでドロボウが入ったように散らかっていた。

至る所に書類や本が散乱して右の壁にくっついているカウンターの上には奇妙な機械と試験管やフラスコが立ててあり他にも弾丸のような物、「清め塩」とラベルの貼ったプラスチックの缶が置いてあった。

「ここは誰の部屋なんですか?」

とシチミちゃんが質問した。

「フッフッフッ。わたしのラボだよ。」

とソーレンが答えた。

「ここでHGLに勤めているわたしは10年もの間存在しない物を研究していた。」

「そのHGLって何ですか」クロッチの質問。

「HeidelbergerGeheimlabor(ハイデルベルク秘密研究所)の略さ。
第二次世界大戦中、敗戦に追い込まれたドイツは有能な科学者や技術者、設計士などを国内からかき集めてドイツ帝国防衛研究院を設立したが次の日にドイツは降伏してしまった。
その後はハイデルベルク大学によって運用されていたが、コレと言って研究する事もなくダラダラやっていたんだ。しかし、欧州の原子核研究機関セルンが一緒に研究をしないかと手紙が届いた。コレにより1999年に学会でセルンと合併する事が発表され、それ以来第二ルネッサンスとして活動しているのがHGLなんだ。」

「そういえばどのような仕事をHGLに入る前はやっていたの?」僕が質問すると

「元々鮫島の和邇神社の巫女だったけど才能が無いから追い出された・・・・・・まあ、気にしない気にしない。そうだ!見せたいものがあるんだ。こっち来て」とデスクの方に手招きした。

その頃・・・・・

イニング・A・ペンサーと名刺が貼っているドアに一人の白衣姿の男がノックした。

「入れ」

と中からフランス語訛りの声が聞こえその男は部屋の中に入って行った。

その部屋は真ん中にソファーがあり手前にはコーヒーテーブルが置いてある。部屋の左側の壁には本棚が飾られ、右側には茶色い木製の書斎机があり、その上にはパソコンや書類が置いてある。

その後ろの椅子に金髪でメガネを掛けた人物がパソコンに何か打っている。

「やあ。ペンサー!」
と白衣の男は言った。

「今、僕は所長だ。ペンサーと呼ぶのじゃ無くて、イニング・アルバーター・ペンサー所長と呼んで欲しいね。イザン・アイモンド博士。」
とメガネを取ってペンサーは言った。

「よしてくれよ。博士なんて。オレはまだ二十六だぜ。それに本名で呼ぶなよ、いつも通りイザでイイよ。」

とドッカリ、ソファーに座りながらイザは笑った。

「お前、二十年前から変わっていないな。そういえば何の用だ。まさか暇つぶしに来たんじゃないんだろうな。」
ギロリとペンサーの目がイザの方に向く。

「まさか」
とイザがニヤリと白い綺麗な歯を出した。

「インドミナスプラントの実験体が出来たんだよ。それをペンサーに見てもらいたくて、今日こうして教えに来たんだ。」

インドミナスプラントと聞くと今まで冷静だったペンサーがちょっと興奮した声で答えた。

「早速みに行こう」
「決まったな」

とイザがソファーから立ち上がるとペンサーが机の引き出しからベレッタ92マガジン(弾庫)を取り出した。

ベレッタ92

「そんな物騒なもの持っていくのか?」イザが聞いた。

地下研究所

次の章に入る前にここの事について書かなくてはならない。

ここは黒目市のきさらぎ区のダイヤクロス・ジャパン研究所だ。
実はある目的がダイヤクロスにはあったのだ。だがそれを言うと読者の皆さんがこれからの話がつまんなくなるので秘密にしていよう。

「チーン」

エレベーターのドアが開いた。

「ようこそ!地下研究所へ!」イザが大声で叫んだ。

ラボは廊下側に沿って四つ鉄のドアが並んでおり、壁や天井にはパイプや換気ダグトが張り巡らされている。
イザは一番後ろにある鉄の観音開き型ドアの前に立ちそこに着いているパネルに手をかざした。

「スキャン完了。入場を許可する。」

ブザーが鳴り鉄のドアは重々しく開いた。

ぎゃー!」

と耳をつん裂く叫び声が聞こえた。
見るとカプセルのような物が割れ、そこから植物の蔓のような物が伸び、何かを掴んでいた。

それは、研究員だった!

「たっ助けてー!」

ぶら下がっている哀れな研究員は叫んだ。

「バーン!!!」

銃声が部屋に轟いた。

「バーン!!!」
「バーン!!!」


続けて2発。

するとその蔓はネズミ色になり、灰のように崩れ落ちた。

「母体を打ったら枯れるのか。」

ペンサーがベレッタ92を手に握りながら言った。

「母体を打っても枯れないように研究し直せ!イザ!」

彼のピストルからはまだ青い煙が立ち上っていた。


地上では、、、


僕達は目を疑った。

ソーレンの手の上に乗っているこの異様な物は本当に危険な物だから。

それはピストルだった。
ただ引き金の前に小さな箱のようなものが付いていた。

「あの,,,,,,コレって,,,,,,めちゃくちゃ危険な物じゃねー?」

とリック。

「これは霊視銃。H&K USPピストルをベースに改造した物だよ。」

ソーレンが説明する。

「霊体達つまり幽霊はこの次元に存在が固定されてない事で壁などをすり抜けれるんだ。霊視銃はその幽霊を次元に固定できるんだ。」
「だが4発、弾を撃ち込まないと固定出来ない。この弾の中には霊視石を砕いて煮詰めた液体が入っている。霊視石とは幽霊が成仏した時にできる黄緑色の結晶体で・・・・」

僕たちがキョトンとしているのに気づいたのだろうか、ソーレンは玄関先にも置いてあった黄緑色の石をポケットから出した。

「コレが霊視石。成仏したての時には、強力な霊気やケガレを放っている液体だが24時間清め塩に漬けたり札を貼ったりすると固まって固体になる。その時に粉砕機で粉々に砕いて水を張った鍋に線香の燃えカスと大量の塩と一緒に煮詰めるとドロドロに溶けてくる。それを薬莢に詰めると弾丸の完成だ!わかったかな?」

ソーレンは他にもにも色々な物を見せてくれた。

その後は覚えていない。どうしても思い出せない。

しばらくして気づくと自分の家のテーブルの前に晩御飯を前にして座っていた。

怪しい噂

次の日は、授業に全く集中出来なかった。ノートに蘇我氏の事を蕎麦氏と書いてしまったほどだ。

そんな時に昼休みに廊下を歩いているとある子の口から怪しい噂が僕の耳に飛び込んで来た。

校庭の西に立つ廃校舎の2階の窓がなぜか板が打ち付けられている。その部屋の中はお札が沢山貼られている・・・。

その事を僕はリックとクロッチに話した。

「つまらーん!!」

とクロッチが叫んだ。

「だいたい廃校舎は立ち入り禁止だぞ。そして確かめた人はいるのか?」

「だったらお前も全くお札が貼っていないのを見たのか?」
オカルトファンのリックが反撃した。

「コーソク(校則)にも書いてあるんだぞ!」

二人がケンカしそうになった時シチミちゃんが割り込んで来た。

「いい加減にして!先月は「学校中で一番〇〇をしたクラス(放送)で学校で一番問題を起こしたクラスNo.1に入ったのよ!」

シチニちゃんは学級委員長。彼女の矢のような目で見られたやつは文句なしだ。

二人は一歩引き下がった。その時帰りのチャイムが鳴り始め、みんなランドセルを引っ掴んで教室をドヤドヤ出ていき始めた。僕達もそのドヤドヤに乗って校庭に出たが・・

超怪奇現象調査車両「彗星」


校庭に出るとバンが止まっていた。

見たところベンツ・310Dトランスポーターのようだが(いつか雑誌で見た)屋根の上にはごちゃごちゃした沢山の装置のようなものをつけパラボラアンテナまで装備し、チューブが車を囲むように付いている。

それに車体はオレンジ色で塗られて、おまけにサイドには大きな字でKEMONOと書かれている。

突然、後部ドアが開いて緑色の煙が津波のようにでて、化学防護服を着た人物が出てきた。

しばらくキョロキョロ辺りを見回していたが、呆然としている僕たちを見つけると怒り狂ったバッファローのように突進してくる。

「シュコーシュコー」

ここにいても息が聞こえる。

しばらくすると僕たちの前に宇宙服(防護服)を着た怪物が立っていた。

「おーい」

防護服オバケが言った。
聞き覚えのある声だ。

防護服のバイサーを覗くと女の人の顔がうつった。

「あっ!!」僕は思わず声を上げてしまった。

その人はソーレンだった。

何かを言おうとしているが声がこもっていて聞こえない。

「マスクはずしたら?」

ゆう太が言った。

その言葉に納得したらしい。
頭の部分に手を添えて右に少し回した。

「ふう。スッキリした。」

ソーレンがため息をついた。

「なんで、防護服を着ていたんですか?」シチミちゃんがとっさに聞いた。

「彗星の原子炉の核燃料棒を交換していたのさ。」ソーレンが答えた。

「核燃料棒!?」僕達は驚いた。

「そうだ。彗星には莫大な電力が必要。計算にもエンジンにも…」

「ちょっとまってください!原子炉はコンビニで買えませんよ?!」

「そりゃそうだよ。だから作った。」

「へ??」

自家用車や自家用ジェットは聞いた事あるが自家用原子炉なんて………..

「見せてやろうか?」

「ぜひとも!!」

一番先に答えたのはクロッチだった。
ソーレンが僕達の前で初めて笑ったのはこの時だった。

内部

彗星の中は機械や動線、パイプでいっぱいだった。

「これが霊波探知機だ。」
ソーレンが説明し始めた。
「幽霊は動く時に次元に波を作る。それをいち早く探知するんだ。」

「あれは何ですか?」

シチミちゃんが壁に付いていある装置を指差した。

装置の上にはピストルのような物が6丁はまっている。

「霊視銃。充電中だから触らないで。」

「何だこれ?」
リックがメーターが付いた箱のような物を触ろうとした。

「触るな!!」

ソーレンが怒鳴った。

「そこの中には今晩使う物が入っている。」

「何ですか?」

「それは…言えない…..」

急にソーレンの声が静かになった。
「あそこに反応があったんだ….」

「?????」

「旧校舎の方から…霊気の反応が。」

「つまりあそこに、幽霊が住み付いたって言う事?」

「そ、そうだ。だから君達に手伝ってもらいたい。夜中の12時にここに来てくれ。」

決断

(チッチッチッチ)11:32だ。

僕の頭の中は行こうか、それとも行かないかでいっぱいだった。

「…………….!行く!」

突然頭の中の僕が決断を下した。善は急げ。

身じたくをして窓から外に出た。

秋の夜は寒い。

「まず、リックのとこ行くか・・・」

リックの家は中華料理店だ。
表から入ると100%疑われる
(だいたいこんな時間に外をウロチョロしている6年生がいる?)

だから僕は、裏に回った。
もちろん勝手口から入るわけではない。窓から侵入する。

トタン板と空のプロパンガスボンベを登ってリックの部屋の窓に登り着いた。電気は付いていた。

突然、リックが窓を思いっきり開けてきた。

「うお!!」」びっくりした拍子に乗っていたトタン板が滑って地面に落ちた

(ガシャーン)

「アブねー」

「早く中に入れ!」
リックは僕を窓の中に引っ張り込んだ。

「なあ。ソーレンのとこ行く?」
「うーん。暇だからなー………」
「人の約束破るのは良かねえぜ。」
「…….ならソーレンの車、「彗星」がいるか確かめてみよう」

これで決まり。
クロッチとシチミちゃんを巻き込むわけにはいかない。
二人の家にはいかずに出発した。

学校周辺は暗くて気味が悪い。

「街灯でも点けりゃ明るいんだけどなー」
闇の中でリックがつぶやいた。

そしてやっと僕達は学校の校門に付いた。

真の闇なので前も後ろも見えない。

「門は閉まっているぜ。」
「登ればいいだろ。」

ガチャガチャ音をたてながら門を登って反対側に降りた。

その瞬間、僕は目眩がした。
リックも同じだったらしい。

「なんかクラクラしない?」

「気のせいちゃう?」と言った僕も吐きそうなぐらい周りの景色がグルグル回っていた。

その瞬間、運動場の方からチカチカ光るものが見えた。

当ても無くふらふらするよりマシだ。
運動場の方に僕たちは駆け出して行った。

運動場に足を踏み入れた途端に目眩が止まった。

「彗星」は昼間と同じ位置にあったが、屋根から傘の骨組みのようなものが生えていた。

「誰だ!!」急に怒鳴り声が聞こえ、彗星の後ろからソーレンが出てきた。

手にはピストルを構えている。

「??!」

僕とリックは何もわからず反射的に手を上げた。

「あっ!君達か!ごめん!奴らかと思った。」

僕達の顔に見憶えがあったらしい。
ピストルを静かに腰にいつのまにか付いていたホルスターに戻した。

「FNブローニング・ハイパワーだ。」
リックが耳元で囁いた。
こう見えても彼は銃器に詳しい。
「遊底に書いてあった。あれは本物だぜ。」
「マジか。ただ日本で銃を持つのは違法だぞ。どっから持ってたんだよ。」

「HGLでは自衛用に拳銃が配られるんだよ。」
どうやらこの会話はソーレンに筒抜けだったらしい。

「色々な意味でHGLの科学者や発明家は命を狙われる。襲ってきた奴らを逆に襲うんだ。」

どうゆう解釈か分からんがとにかく納得(?)

「そういえば何で学校に入った途端、目眩がしたんですか?」

「次元が歪んでいるからさ。幽霊はこの次元に存在が固定されていないことは言ったよな。幽霊のいる次元はこの世の常識が通用しない。そんな奴がこの世に現れると、この次元に負担がかかって歪んでしまうんだ。今ここは私の作ったSFAMで無理矢理元の空間に戻しているがな。」

ソーレンが傘の骨組みのようなものを指さしながら言った。

(あとで分かっ事だがSFAMとはSpace force adjustment machineの略で空間強制調整機の意味らしい。)

「さて。それじゃあ本題行くぞ。」

彗星の後部ドアに手をかけながらソーレンが言った。

「これ持ってけ。」

と僕達に昼間見た霊視銃を投げた。

意外と重い。

「弾は4発ある。霊気を自動的に探知してくれるから、幽霊を発見したら構わず打て。」

「ちょっと待って下さい!ゆう太は?」

「先に廃校舎に行っているよ。」

そう言い残してソーレンは彗星の中に入って行ってしまった。
「しょうがねーなー。おいヒロ!ゆう太探しに行くぞ。」

リックが廃校舎の方に歩き出した。

巣食うもの


僕たちは入り口に貼ってある立ち入り禁止テープを潜って中に入った。
これが僕の人生で最初のコーソク(校則)破りになった。

中はとにかくカビ臭かった。
ところどころ腐った木材のギシギシいう音が聞こえてくる。

霊視銃の電源を入れると先端に付いていたフラッシュライトが光って丸い黄色の円を床に作った。よく見るとフラッシュライトの横から赤い線が出ている。

触ってみようとしたら透けてしまった。

「レーザーサイトだよ。」

同じように霊視銃の電源を入れたリックが言った。

異様な雰囲気のする木造の廊下を歩いて行くと手前に教室のドアが見えて来た。なぜか板が窓に打ち付けられており、入り口には警察の立ち入り禁止テープが貼ってある。

「どうする?」
リックの方に向いて僕は聞いた。

「行き止まりだな。」
リックがため息混じりに言った。
「ここはなんか….」

ガタン!

突然僕たちの後ろで音がした。

「おい。」
僕はリックの方に囁いた。

「先生ちゃう?」
そう言い終わらないうちに足音が聞こえて来た。

しかもこっちに真っ直ぐ向かって来ている。

「ヒロ!この中に入れ!」

いつの間に開けてたのか、リックがテープの貼った教室のドアに半分体を突っ込みながら小声で言った。

僕も教室のドアの隙間に体を滑り込ませるとリックがドアを静かに閉めた。足音はドアの前で止まったがまた元来た方向に戻っていった。

「ホッ......」

僕とリックも同時にため息をついた。
だが初めてその教室の中を見回した時また息を飲まないといけなかった。

放送室

電気が付いていなかったが、部屋の大きさは二つの懐中電灯で十分照らせるくらいだった。

放送室だったのかデスクの上にマイクや調整盤が置いてある。

その手前の床、僕達から三十センチメートルぐらいの所にチョークで描いた人型の白線が三つもあった。
初めは落書きだと思ったが、周囲の壁や床に付いている血痕でここで何があったのかすぐに分かった。

死だ。
それも殺人…………。

そう思ったとき霊視銃のフラッシュライトの部分がビデオカメラの画面みたいに展開した。書いてある内容はこうだ。

1980年 三人死亡
死因
2人 女
リンチ

1人 女
毒殺

霊気 90%
歪み 99%
今日のラッキーアイテム 割り箸

このような事が表示されていた。
(こんな機能があったんだ。ラッキーアイテム測定器は別として)

呆気に取られていると…

ドンドン!

ドアを誰かが……、
何かが強く叩いた。

トンデモナイ者

リックの顔は青ざめていた。

「な…なあ!…これもう先公レベルじゃないぞ!」

バンバン!!叩き方はもう両手レベルまで達していた。見るとドアに付いている曇りガラスにヒビが入り出している。

しばらくするとガラスが割れ始めた。いっぺんにではなく少しずつ割れている。
とっさにリックが霊視銃をガラスに向かって打った(パニックになっていたのかは知らないが)。

ガンガラガッシャーン!!!物凄い音がしてガラスが粉々になった。

その時僕は見た。
曇りガラスの後ろにいたトンデモナイ者を。

そいつは女性で十二歳ぐらいで透けて見えた。

顔はアザがいっぱい出来ていてみみず腫れも沢山ある。
目は完全にイッてしまっている。
首にはロープを強く締め付けた跡があった。

何より奇妙なのが淡い青のような炎に包まれている事だ。

(何だコイツ?!死んでいる?....大丈夫か?声かけた方がいい?)

「##########!!!!」

そいつのこの世のものでは無い悲鳴で僕の思考はストップした。

リックの放った霊視弾がヘッドショットしたらしい。
すると今まで透けていた体がはっきりと見えて来た。

相当痛いのか、そいつはうめき声を上げながら廊下を張って逃げて行く。「ヒロ!追いかけるぞ!」リックが僕の手を引っ張った。

だけど、僕の注意は廊下の反対側に転がっている捩れたものに向いていた。

ゆう太


僕はその捩れたものに近づいていった。
腹の部分が動いているので生きている。
そいつを仰向けにすると顔があらわになった。ゆう太だった。後ろを見るとリックが遠巻きに眺めていた。
「それついさっきの幽霊JKの仲間か?」

リックが警戒しながら聞いた。

「違う、ゆう太だ。気絶しているから例の気付け薬を使っていいか?」

「OK」

リックから許可が出た瞬間、僕は思いっきり
ゆう太の股座を蹴った。
例の気付け薬とは相手の股座を蹴る事なのだ。

「ウギャ!?」

ゆう太も物凄い悲鳴を上げた。僕の蹴りがゴールデン玉にクリーンヒットした。

「お目覚めけ?」

リックがからかう調子で聞いた。

「何で君たちがここにいるの?」

ゆう太が何が何だか分からない目をして聞いた。

「アンタのお母さんに言われて来たんだよ。」

僕もからかうように答えた。

「何で廊下の真ん中で気絶しているんだよ。」

「アイツに首を絞めかけられたからだよ。」

ゆう太が立ち上がりながら答えた。

「君達も見たと思うけど、あの女性中学生は廃校舎で殺された一人なんだ。自分をロープで締め殺した奴の代わりに誰かを殺したがっているんだ。」

そこまで話し終えたとき、またその幽霊が角を曲がってやって来た。何かブツブツ言っている。気をつけて聞くとそいつの発している言葉が分かった。

「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」

ゆう太とリックが霊視銃を構えた。僕も意識的に構えた。すると幽霊は物凄い叫び声と共に飛びかかって来た。

「#####################!!!!」

すかさず僕はトリガーを引いた。弾は腰らへんに当たったがまだ襲ってくる。
ゆう太が今度打った。段々と弾が命中するごとに幽霊の体がはっきり見え始めた。
4発目を打ち終わった時には完全に見えていた。


「あ!!」


リックが叫び声を上げた。
幽霊が飛びかかって彼を床に押し倒した。
そしてリックの首を締め付け始めた。

「キュー!」

リックがまた叫び声を上げた。だがこの叫び声はリコーダーを吹くのを失敗したような掠れた叫びだった。
すると、入り口の方からドタドタと足音が聞こえソーレンが走って来た。
手には昼間見たメーター付きの箱を持っている。

次の瞬間ソーレンはその箱の中から紙切れみたいなものを取り出して幽霊の背中に叩くように貼り付けた。

「バシッ!!」

成仏

「##########アアアアアッ..........」
ソーレンが紙を貼り付けた直後に苦痛のような叫び声がはっきりし、死んだように聞こえなくなった。ざっと1分の出来事だった。

幽霊は正座をして俯き加減に座った。傷は治っていないが、炎は青から柔らかいオレンジに近い赤に変わっていった。
僕は背中に貼ってある紙を覗き込んだ。お札だ。

「危険じゃ無いよ。」ソーレンが静かに言った。「ただし怨霊だから気をつけて。下手すると取り憑かれるよ。」

リックも珍しそうに近寄ってた。
「へー。怨霊か....」僕はつぶやいた。
「ゆう太。あんたのクラスの女子の名前、全員言ってみて。」

「え〜と、彩芽(アヤメ)
柚(ユズ)、純連(スミレ)、桃江(モモエ)、
阿瀬火(アセビ)、和良美(ワラビ)、
菜乃刃(ナノハ)、柏和(カシワ)、
久留美(クルミ)、水夏(スイカ)、
羽茶美(ワサビ)、涼蘭(スズラン)、
美甘(ミカン)、伊秩子(イチゴ) 、
安月(アズキ)」

「シチミちゃん忘れているぞ。」リックがつっこんだ。「あと七海(ナナミorシチミ)...ちゃん。」

この時、僕はゆう太がシチミちゃんに惚れている事を悟った。まあシチミちゃんは美人だし頭も良いから沢山の男子から惚れられている。僕も惚れt.....

「その中で姉がサツがいされた人いる?」

黒い手帳をポケットから引っ張り出しながらソーレンが変な質問をした。
手帳の表面には銀色のワシが、下にはHGLとブロック体で書かれてある
「ええと....いないな。」
「ならコイツはただの[構ってちゃん]だったんだな。」なにかメモしながらソーレンが呟いた。

「さてと。そろそろ成仏してもらうか。」

そう言うとソーレンは線香のようなダイナマイトのような物を取り出した。

「気をつけろ。下手するととんでも無い事になるぞ。」そう言うとその線香ダイナマイトに火を放った。
僕達は一歩後退りした。
ソーレンは霊の近くにダイナマイトを置くとダッシュで戻って来た。
すると不思議な事が起こった。

ドンッ!!

爆発と共に真っ白い彗星のような物が、物凄いスピードで天井をすり抜けたのだ。
幽霊がいた所に目を戻すと、そこには緑色の石で出来た石像があった。あの幽霊が石になったみたいに、細かい所まで精密に出来ていた。

「………行っちまったな。」ソーレンが静かに言った。

「ちょっ、何が起きたんですか?」リックは慌てていた。「今の何ですか?」

「今の彗星はタマシイさ。んで、この石像はアイツが持っていた怨みだ。」ソーレンが石像の表面を撫でながら答えた。
「ヨシッ。ゆう太、ツルハシ。」

「よいしょ。」
ゆう太からツルハシを受け取ると、ソーレンは石像を壊し始めた。

あっという間に石像は綺麗さっぱり無くなっていた。

「この石は霊視弾の素になるんだ。霊視弾は怨みがすでにいっぱいの幽霊にさらに怨みを注入する事で、奴らの体をオーバーロードさせる。怨みが多くなり過ぎてオーバーロードすると次元に存在が固定されていない幽霊は(自分の意思では無いが)、自動的に存在を強めて負担を減らそうとするんだ。それを繰り返せば気づかないうちに、完全に次元に存在を固定してしまうだ。」
僕とリック、そしてゆう太までが呆気に取られていた。

「まあ良いや、今日はありがとう。それじゃ、また明日。」ゆう太がやっとケリを付けてくれた。
リックとは校門で無言で別れた。

あの夜、確かに僕は見たのだ。怨霊はこの世に存在する事を僕はこの眼で見たのだ。

その夜は、いつもとは違った。あんな不気味な夜は今まで過ごした事がない。
布団に入って目を瞑ると、何処からか声が聞こえたような気がするのだ。全ての音がこの世の物とは思えないのだ。だが必死に目を瞑っていると僕は深い眠りに落ちて行った。

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