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【詩】 カヘキシア

あなたの足がまだ床を踏めていた頃
それでも立ち上がるのがつらくなって
リビングのソファにじっと座って

トイレに行こうかな

と呟いて
いつものように机に手を伸ばして
しばらく歯を食いしばってから
あなたは泣きました

立てないんだ

そういって大粒の涙を流しながら
浮腫んだ膝下と細くなった大腿をみつめて
膝のあたりを痩せた手で何度も何度も
さすったり叩いたりして

くやしいなぁ
なんで動かないのかなぁ

掠れた声を絞り出すあなたに
体調には波がありますからと
私は嘘をついて
今日は少しお手伝いさせてくださいと
肩を貸すように勢いをつけて立ち上がって
あなたとトイレに歩きました

良かったよ
久しぶりにおしっこがでたよ
ありがとう

肋骨と肩甲骨の浮き出たあなたの身体を
抱えるようにして今度はベッドに送ります

それからあなたの足が
床を踏むことはありませんでした
あなたの身体を蝕む病が
たとえ全てを奪い去ろうとも
あなたの魂の輝きは
決して消えることはないでしょう

大丈夫
私はあなたを忘れない


ー了ー


 拙作にお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方と貴方の大切な人が幸せな時間を過ごせますように。



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