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悪夢の起源

 ゆめをみたんだ、と息子が言います。

 こわいゆめ。誰もいない夢。

 ひとりぼっちは寂しいから怖いんだよ、と言った息子の恐怖の象徴は孤独のようです。オバケが出てきたり、吸血鬼ノスフェラトゥが出てきたりすることもあるそうです。

 思えば息子は夜泣きの激しい子でした。

 1歳になる前は毎日のように激しい夜泣きをして、およそ効きそうなことを端から試しましたが、漢方治療が幾らか効果をみせたくらいで、根本的な解決には至らなかったと記憶しています。

 4歳になった息子は、朝まで覚醒することは滅多にありません。うなされているようなこともありませんし、眠りながら怖がる様子もみられません。彼の中で何かが快方に向かっているのでしょうか。

 どんな夢だったの。

 息子に訊ねると、ぽつりぽつりと言葉を選びながら教えてくれました。

曰く、
・家に誰も居なくて怖かったけど、パパが帰ってきた。
・オバケが出てきたけど、パパと一緒に戦った。
・マジンガーZに乗って機械獣と戦った。
吸血鬼ノスフェラトゥをパパが波紋で祓った。

 パパ大活躍でした。

 私自身が彼にとって恐怖の対象になっていないことに安堵し、いつか彼に「怖い夢のときはパパを呼んでくれよな」と言ったことも役に立っているようでした。


 自分のことを振り返ると、成人するまで悪夢を頻繁に見ていたと思います。小学生の頃までは少なくとも月に1〜2回程は夜驚症の如く絶叫と共に深夜に覚醒していましたし、成人後も時々「こわい夢」をみていました。

 幼少期から中学生頃までの悪夢を、ふと思い出すことがあります。もちろん全てを記憶しているわけではありませんが、特に印象的なものや繰り返し見ていた夢のことはよく憶えています。

 当時、夢で現実に知っているところに居ると、怖いことが起きるというジンクスがありました。特に、実家と祖父母の家。眠ってから目覚めるまでに実家か祖父母の家にいると、ほぼ必ず、怖いことが起こります。

 それは家族が別人にすり替わっているとか、部屋に閉じ込められて殴られるとか、両親の顔が溶けるとか、夜と朝を繰り返しながら金切り声と怒鳴り声に取り囲まれるとか、四肢を切断されたこともあれば、熊の生き餌になったこともありました。すべて夢の話ですが、現実の体性感覚を伴う明晰夢のこともありました。

 痛くないから夢の中?
 いいえ、痛みを感じる夢もあるのです。

 今思えば、安全基地であるはずの「家」が、私にとっては恐怖の象徴だったのかもしれません。或いは恐怖と隣合わせの危うさが、私を安心から遠ざけていたのでしょうか。

 
 父も、子どもの頃から悪夢を見るそうです。

 金縛りに遭うこともあると聞きました。


 断ち切らねばなるまいと、私は決意しました。

 息子の寝顔にそっと触れたとき、愛しさの雫が頬を伝いました。



 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の夢があたたかく優しいものでありますように。

 


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