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「実践心理学」とは何か

 人工知能Artificial Intelligenceが如何に発展しようとも、極めて遠い未来まで医者という職業は人間固有のものとして存在し続けると、私は考えます。
 
 研修医を連れて病棟回診しているとき、診察を終えて部屋を出てから「あの患者さんは嘘をついていたね」とか「何か隠してるね」などと研修医に声をかけると、なぜそんなことがわかるのかと不思議そうにしています。十数秒の会話でその人の性格や思考の癖を見抜いたり、背景にある人間関係を推し量ることもあります。

 病状説明の場に若手医師を同席させると、患者さん本人やご家族が理性と感情のバランスをとりながら、医学的に考えて妥当な選択肢に着地していく様子を目の当たりにして、これはいったいどういう技術なのかと驚かれます。

 彼らに「心理学は勉強したか」と訊ねると、十中八九は勉強していないという回答が返ってきます。繊細なコミュニケーションを要する医療者こそ、日常に心理学の素養があった方がいいはずですが、医学部の六年間で心理学を学ぶ機会は殆どゼロに近いのが現状です。

 

 世の中に学問と呼ばれるものは数多ありますが、私はこれを四つに分類して捉えるようにしています。

 ひとつ、今すぐ役に立ち、今後も役に立つもの。
 ふたつ、今すぐ役に立つが、やがて廃れるもの。
 みっつ、今は役に立たないが、今後役に立つもの。
 よっつ、今は役に立たず、未来永劫無用なもの。

 例えば数学はひとつ目の特徴が色濃い学問ですが、ふつうの社会生活を営む上では個人が修めるのは算数の段階までで十分かもしれません。
 最先端の数学はみっつ目の分類になりますが、同様に多くの基礎的研究はみっつ目に分類されるように思います。専門外からみると何が重要なのかサッパリ分からない研究成果が、数年から数十年経って文明に還元されるのはよくあることです。

 しかしながら研究段階ではそれが将来役にたつかどうか見極めるのが困難なことも度々あるようで、よっつ目の分類に影を潜めていった領域もあるでしょう。
 とはいえ役に立つとか立たないとか、その価値基準も曖昧で流動的なものですから、絶対的に無用と断定する学問は存在しないような気もしてきます。

 さて、心理学と呼ばれる学問は極めて広範囲に及びます。私が特に興味を抱く領域は、その中でも特に実践的、すなわち実生活に直結するものです。

 心理学領域の研究報告について、日常的な具体例を交えて分かりやすく、かつ即実践に結びつくような方向性を示しながら解説することを目指し、心理学系の記事を執筆し始めました。

 ここでは、過去に「実践心理学」として公開した記事を整理して参ります。
 気になるタイトルがございましたら、是非ご一読くださいませ。



 皆様のお陰で一年半で30以上の心理学記事を投稿することができました。刺激的な内容のものや有料記事を除き、24本をまとめて公開いたします。

 

 拙文に最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。願わくは、貴方の日常がほんのり生きやすくなりますように。




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