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関連付けて記憶を伸ばす/ベイカーベイカーパラドクスとは何か 【実践記憶術/心理学】

 ほら、あの人。
 背が高くて長い帽子を被っていて、恰幅の良い中年のパン屋さんで…顔まで思い出せるんだけど、名前が出てこない!

 誰しもこうした経験があることでしょう。
 これを心理学領域で「ベイカーベイカーパラドクス」といいます。
 名称の由来は「あの人の仕事がパン屋(Baker)であることは思い出せるのに、名前がどうしても思い出せない…」と思っていたら、実は名前もBakerだったというジョークです。

 この現象は、人のプロファイルが様々な関連性をもって覚えやすい一方で、「個人名」は独立した概念であるゆえに関連性を結びにくく、記憶に残りにくいという背景に起因します。
 脳神経学的には、記憶のネットワークが1つずつ独立したものではなくて、共通回路を含むニューロンの結合パターンで構築されていることが推定されています。

 事実として、ある知識に関連付けて覚えていった方が長期記憶に残りやすいことが様々な場面で提唱されています。

 イメージは簡単な木の幹を作り、そこから枝葉を伸ばしていくような感覚です。木の幹はとても重要ですから、「好き」という根のしっかり張ったものを選ぶと良いでしょう。

 例えば、ティラノサウルス・レックスという恐竜を覚えたとします。約6700万年前に生存していた大型の獣脚類で、体長13メートル、体重9トン、史上最大級の肉食恐竜です。
 「同時代に生きた」と関連付けて、捕食対象であったエドモントサウルスやトリケラトプスを覚えます。戦うイメージ映像が良いでしょう。
 「似ている恐竜」と関連付けて、アロサウルスやタルボサウルスを覚えます。骨格の違いや時代の違いも参考になりますね。アロサウルスはティラノサウルスと異なり頭骨にツノのような突起があります。
 「同じ肉食恐竜だが小型の」と注釈をつけて、ヴェロキラプトルからラプトル系に派生するのもよいでしょう。
 ところでトリケラトプスは近縁種がたくさんいますね。先祖にあたるプロトケラトプスから、ズニケラトプス、カスモサウルス。ところでトリケラトプスはツノが3本の顔という意味らしいですね。

 このように関連付けると知識の木がどんどん成長していきます。

 既存ニューロンの共通回路を利用するため、長期記憶に残りやすいこと、そして関連して思い出しやすいことが利点です。


 さて、ティラノサウルスに似ていて、しかし頭骨にツノのような突起のある肉食恐竜の名前は何でしょうか。
 お時間の許す方は30秒ほど考えて、思い出せなければ上の文章をご参照ください。

 「気になり」ましたでしょうか。
 実践記憶術はシリーズ構成により、「関連付けて」記憶に残りやすいように工夫しています。

 振り返ります。

ベイカーベイカーパラドクスを理解する。
記憶は関連付けて増やしていく。
記憶の幹は、覚えやすい「好きなもの」がいい。

渡邊流・実践記憶術

 
 拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の記憶の森林が、豊かに繁栄していきますように。

①ワーキングメモリを意識する
②組み合わせ記憶のコツ
③脳の渇きに染み渡らせる

実践記憶術シリーズ


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