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Good Luck 《詩》

「Good Luck」

ソファーで猫が眠っている

アメリカンショートヘア

バルコニーから夜の海 

その上に琥珀色の月が輝いて

僕はワインの瓶を静かに開ける 


そんな風景を信号待ちの
サイドミラーの中に描いて

素敵な夜を想像していた

信号は青に変わり

僕はアクセルを踏み込む

時事的で複雑な
定義に溢れた街を走り抜ける


思想性は何処にあるの 

助手席の彼女はそう僕に聞く

多分そんなもの何処にも無いよ

この街には そう笑って答えた

彼女が手に持っていた

ファッション雑誌 

表紙にGood Luckの文字

指先に挟んだメンソール

サンルーフを少し開けて

煙草を持つ手を
ルーフから突き出して僕を見る

風に煙草の煙と灰が舞う

あの映画のワンシーンみたいだな


月明かりを待つよ 

いいだろう今夜ふたりで

そう言った僕に

Good Luck 彼女はそう言って
小さな微笑みを浮かべた

助手席で組み替える脚 

細かなナイロンのデニール

悲哀な輝きを微かに放つ


琥珀色の月は
雲に隠れて見れそうにない

そんな夜もある

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