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文学的娼婦 《詩》

「文学的娼婦」

鮮やかな幻影は 
また鮮やかに崩れ去る

自らの行為に自覚の無い者達が

不特定多数の人々の魂を傷付ける


汚濁に満ちた滅びの美学 

万人が認める傑作だけが全てでは無い

僕は詩を書く上での
師も持たず仲間も持たない

時代を同行する詩人達が

此処に存在するだけだ


魂の静かな震え 

僕等の吐息が空中で結晶化する

全ての旗は僕等に向かって
たなびいている

風はあの頃と変わらず今も吹いている

地べたから見上げる事により

作り物では無い肌触りを

独自の景色を此処に描き続ける

自分にしか切り取れない風景を
自分にしか語れない話法で綴り続ける


其の目的は自分自身の救済と等しい

謙虚な種類の事柄は無く

誰にも遠慮なく切り込んで来る

其処にあるのは痛みであり

小さな声でボソボソと語る物では無い


見事なまでに完成された
未完成に脇の甘い言葉の羅列

其処には読む者に多大な
余地を委ねている

僕は文学的娼婦に溺れ均等を崩す

何かが軋む音が聞こえる 

其の音すら心地よい

其の詩には君自身が
閉じ込められている 

曲折 浮沈 黙殺 

意図的に区分された小宇宙

異なった種類の世界の積み上げ

僕は僕でしか無い 

君が君でしか無い様に


そして君は僕の文学的娼婦となり
僕は君の娼婦となる

其れはある種の麻薬と同等の力を持つ

たった一度の詩との出逢いが
永遠に心に残る事もある



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