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非常階段 《詩》

「非常階段」

神様がまだ赤ん坊だった頃

僕は誰かの泣き声を聞いていた

其れは
神様の泣き声なのかもしれない

僕自身の
泣き声だったのかもしれない

僕等は まだ出逢っていなかった


軌道を逸し全ての音階が

崩れて行くのを感じていた

一環される事の無い

不協和音に似た奇妙さが其処にある

古より普遍的にある
一種の源泉には 

理論的な整合性は無く

抑圧的な風に
崩れ落ちる音だけが響き渡る


其の音は境界を超えた

妄想性の中に息づく

僕がずっと求めて与えられなかった

言葉が此処にあると信じていた

現世的な価値と
力を欲して追求する俗物

全ては契約的に結び付けられた事柄

自我を削り
他者に譲渡し生命を繋ぐ弱者

手にしたものに形は無く

曖昧な空虚でしかない


非常階段の扉は開いている 

其処で僕等は出逢った

君の求めていた言葉は
僕の求めていたものと一緒だった

君はゆっくりと其の階段を昇る

僕の前で其の扉は閉ざされ

君の後ろ姿を見送る 

君は一度だけ振り返って微笑んだ


僕は 
さよならを言いかけて胸にしまった

君の意識の中に入り込み 

愛してる 何度もそう叫んだ

非常階段は何処までも
高く空へと続いていた


僕等は決して離れる事はない

ふたりの約束が永遠に変わる時
僕等が此処に居る意味を知る 

命の燃える音が聞こえた

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