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残響 《詩》

「残響」

自発的で有機的に絡み合う言葉の
文字像が僕の前で映像化される

不協和音に似た混濁や安易な

馴れ合い的な凡庸に堕する事無く

言葉を重ねれば重ねる程 

其処にある文脈の体温はじりじりと
上がって行く


其れは時代を画する
巨大な長編小説では無い

人の心に届く言葉は其の物理的な

大きさで計れるものでは無い

感覚的で鋭敏であったり

淡色で親密度の高い空間であったり

整然とした正論を語る必要も無い


その文章は僕自身の中で
感覚的に微調整され

然るべき位置に確実に収まる

陰影と其の奥行きが僕の心を掴み

其の余白には
僕の個人的な想いが綴られる

新世代の洗礼を受ける事無く消えた

彼奴の詩は無価値なのだろうか


文壇とは無縁の場所に存在し

静かに

自分のスタイルを模索して貫く

麻薬に終止符を打ち書き続けて来た言葉

不慮の死だったと誰がそう言った

文学的感性や境遇に相通じるところ

僕等は無意識に言葉を選択していた

ロマンチシズムと静かな硬派性

より高い体温を求め適度な
暴力性と攻撃性を獲得する


熱意と自負の反映と傑出した文体と 人としての浮き沈み

安易な風潮に搦め取られる事の無い

独自の世界が其処にある


好むと好まざるにかかわらず

まともな選択肢すら提示されない
現地点で過去を振り返る

切実な残響に耳を傾ける

言葉に体温がある事を
僕等は知っている

彼奴の声が聞こえるか 

残響が聞こえるか

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