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風の音 《詩》

「風の音」

正確な事まではわからない

僕の見上げた頭上には空は無かった

時計は止まり

其の秒針は意味を成していなかった


全てが静止した沈黙の中に
僕ひとりが存在していた

ただの錯覚なのか 

僕の内部で生まれる

断続的な映像なのか


潤いの無い乾いた単色が

色彩を塗り潰した後に

不規則な光が見えた

前後の脈絡を欠いた唐突な風

確か前にも同じ夢を見た

茫漠とした霧が匂いさえも包み込む

僕は目に映る光景の中に 

もうひとつの

別の新たな光景を鮮明に描いた

そうする事でしか僕自身を維持し

平常を装い

誤魔化し続ける事が出来なかった


見え透いた
安っぽい輝きに吐き気がした

時間は永遠に続く 

僕の時計の秒針が時を刻まなくても


そして風の音に耳を澄ませた

この空の無い空間は生きている

僕がこの手で殺した自分自身を

血の海に沈めた  

やがて其の風も止む 


今 僕は何処に居るんだろう

ずっと前にも 
こんな別れをした様な気がする


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