白月セイ

✍🏻星の隙間、ベッドの隅で言葉を紡ぐ|Twitterで1行詩や短歌、俳句も創作してます。…

白月セイ

✍🏻星の隙間、ベッドの隅で言葉を紡ぐ|Twitterで1行詩や短歌、俳句も創作してます。グッズも販売してるのでよければ🌱

マガジン

  • みんなに会えるって、とくべつ。

    ミスタードーナツの2021年11月からのポケモンコラボ。そのキャッチコピーがとても心に沁みました。というお話です。

最近の記事

午前10時は朝か昼か

午前10時は朝だろうか。昼だろうか。 通勤や通学(あるいは通園)の嵐が過ぎ去った後、街は人の匂いを忘れ、夜明け前の静けさを取り戻す。ただし、陽の光はシャワーとなり、猫は眠っている。 開店前のレストランの、濃い茶色(チェロの低音のような)のテーブルの上に、風のない日の雲みたいに、真っ白で清潔なナプキンが置かれている。 レストランはまだ夢の中である。

    • 勿忘草

      いつの間に こんなところに来ていたのだろうか。 頭上に広がる透き通った夜 足元をくすぐる灰色の雲は、 月の光を受けて時折白く輝いている。 ———- 誰かと手を繋いでいたような気がする。 私は笑っていた気がする。 空は青かったような気がするし、 雲なんか真っ白で、 とても眩しかった気がする。 忘れたのは 風と、温度と、声と それから 世界を輝かせていたもの。 眠らなければ明日は来なくて 忘れなくて 色褪せないって 信じてたんだけどな。 これって 手放していいのかな。

      • 【詩】呼吸

        おかしくなったメトロノームみたいな呼吸が いつまで経っても戻らなくて 息の吸い方も 吐き方も みんな忘れてしまった。 ただ膝を抱えて泣いていた。 いつの間にか眠ってて 不意に目が覚めた。 目覚めたくなかった。 まだ夜の中にいた。 ——— 夜空に穴を開けたような 満月があった。 湧き出る光を 深く深く吸い込むと あちこちの傷がシクシクと痛んで 胸の奥が重たくなった。  ——— 空気に満ちたこの世界は ひどく息が詰まる。

        • 【詩】問1

          今日も疲れたな 明日もまたあの続きだな だからもう今日は眠らなきゃ  暗い部屋 天井 水中のような静けさ 湧き上がる泡のような思考 「これってなりたかった            …僕?俺?私?」 朝から心が痛むニュース タイムラインの「大丈夫?」 自分だけ引きずってる? 関係ないけど 昨日の続きの今日 何も変わらない終わらない 明日もまたきっとこのまま 何も変わらない変われない 言えなかった「×××」 言わなかった「×××」 浮かんでは消え 浮かんでは消え 僕は、俺は

        午前10時は朝か昼か

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        • みんなに会えるって、とくべつ。
          3本

        記事

          【日記】昼咲月見草

           好きな花のひとつ、「ヒルサキツキミソウ」。今日のお昼過ぎ、スタバに向かう途中で咲いているのを見つけた。海辺にしか咲かないと思っていたけど、海から離れた家の近くに咲いているのを見つけてうれしくなった。  花びらの淡い色味が可愛くて、アプリで名前を調べたのが去年のこと。初めは見た目で惚れたけど名前を知ってさらに好きになった。私はこの花に、少し自分自身を重ねている。 ———  「ヒルサキツキミソウ」。漢字にすると「昼咲月見草」。昼に咲きながら月を見る草。昼に咲いて月を待って

          【日記】昼咲月見草

          【詩】優しさとは

          優しさとは何か。 太陽に尋ねてみても、 ぬくもりを注ぐだけだった。 優しさとは何か。 花に尋ねてみても、 ゆらゆら揺れるだけだった。 優しさとは何か。 風に尋ねみても、 頬を撫でるだけだった。 優しさとは何か。 星に尋ねてみても、 パチパチ瞬くだけだった。 優しさとは何か。 月に尋ねてみても、 独り夜を照らすだけだった。 優しさとは何か。 爽やかな朝に、 穏やかな昼に、 静かな夜に。 泣いて、 笑って、 考えた。 あなたが、 私が、 君が、 僕が、 両手で掬える

          【詩】優しさとは

          【日記】ファンレターに愛を込めて

           この間、人生で初めてファンレターを出した。中学生の頃から好きなバンド、シドのボーカルであるマオさん宛。手紙の下書きを書きながら「もう10年も好きなのか」としみじみしてしまった。同時に、10年も私は「好き」と自分の言葉で言えてないんだな、と気がついて、後悔のような、寂しいような、なんとも言えない気持ちになった。  身近な人にも、1人のファンとしても、「好きです」と伝えるのが今まではどうしようもなく恥ずかしかった。恥ずかしさが無くなって、むしろ積極的に伝えるようになったのはS

          【日記】ファンレターに愛を込めて

          今日ひさしぶりに乗った路線バスから見えた海、すごく綺麗で、なんだかローズマリーの香りがしそうだった。きっと春が初夏を隠してるんだろうね。もう春の背中を見てるのかもしれない。追う頃になって愛おしくなるのはきっと仕方のない事なんだろうけど。少しだけさみしい。

          今日ひさしぶりに乗った路線バスから見えた海、すごく綺麗で、なんだかローズマリーの香りがしそうだった。きっと春が初夏を隠してるんだろうね。もう春の背中を見てるのかもしれない。追う頃になって愛おしくなるのはきっと仕方のない事なんだろうけど。少しだけさみしい。

          恋とは呼べなくて

           あの時抱いていた気持ちに名前を付けるのだとしたら「恋」になるのだろう。でもあの気持ちに名前を付けてしまったら、そこで何かが終わってしまうような気がしていて、私はそれをまだ「恋」と呼べずにいる。  友情とその先の区別がつかないままに世界は大人の都合で回っていたし、宿題にもテストにも模試にもうんざりしていたし、雨も降ったし雪も降っていた。寝息も私服の好みも知っていたけれど、別れの言葉もないまま、今はどんな風に笑うのかさえ知らない。  私はそれを未だに「恋」と呼べずにいる。

          恋とは呼べなくて

          桃花したたる春の露(陰影)

          桃の花が咲いていた。 冬が解けて滴っていた。 心は冷たいままだった。 昨夜は月の見えない夜だった。 タイヤが雨を弾く度に 帰りを待つ誰かの幻が弾けた。 あまりにも清々しい 今朝咲いたばかりの桃は 木の根元の濡れたままの影を知っているのだろうか。 知らないのだろうか。 花はただ泣いているのだろうか。

          桃花したたる春の露(陰影)

          寂寥、夕闇、暮残り

          夕陽が落ちたあとの 灰の中で息をするような時間になって 今日のどこかに 「記憶」だとか 「思い出」だとか そういうやつになってしまうんだろうけど とても幸せな瞬間を置いてきてしまったような そんな気持ちになって 少し寂しい。 雪が溶けて、水は流れて、花が咲いて。 溶けた雪は雪には戻らないし、流れた水がまた透明になることはないし、花はもう散るか枯れるだけ。 私は昨日の私をどこに忘れてきたんだろう。 思い出せない。

          寂寥、夕闇、暮残り

          空想、海、橋の上から

          橋の上から海を見ている。 海に飛び込む想像をする。 着の身着のままで、頭から。 体を丸めて落ちて行く。 水面に最初に着くのは首の後ろか、肩か背中。 押し戻されるような抵抗を少しだけ感じて沈む。 海に包み込まれる。音が消える。 季節は夏でも冬でも構わない。浅瀬じゃないから水温は少なくもとも体温よりは低いはずだ。 服と肌の隙間がなくなり、布が身体に纏わりついて少し鬱陶しい。ペットボトルからグラスにジュースを注ぐような音がした。口か鼻から出た気泡が地上へ向かう。気泡の行くとこ

          空想、海、橋の上から

          みんなに会えるって、とくべつ。3/3『みんなに会えるって、とくべつ』

           どうしようもないけれど、家の中から「笑い」が消えるのは寂しくて悲しかった。耐えて耐えて耐えた2年半。ようやく少し落ち着いた頃、また従姉妹夫婦が会いにきてくれた時の祖母の幸せそうな顔ったら。また目尻が床につきそうになっていて、笑ってしまった。従姉妹の娘ちゃんはもう10キロを超える体重なのに、祖母は「抱っこしてあげるからおいで」なんて言う(家族全員が止めに入った)。  「ああ、これが幸せか」と思った。この笑いに溢れた空間こそ「幸せ」だと、奇しくも会えない期間があったからこそ知

          みんなに会えるって、とくべつ。3/3『みんなに会えるって、とくべつ』

          みんなに会えるって、とくべつ。2/3『笑わない日々』

           私の家は祖父母、母、私の3世代同居だ。昔はそれはもう賑やかな毎日だったけれど、10年も経てば家の中はすっかり静かになってしまっている。そこに従姉妹の娘ちゃんの誕生だった。私の祖父母にしてみれば待望の「ひ孫」である。従姉妹夫婦が連れてきた時にはもう目尻が床につきそうな顔で、これ以上ないくらい幸せそうだった。クリスマスやお正月、初節句の時だって、幸せの空気が溢れていた。  そんな日々が、コロナ禍になってぷつりと途切れてしまった。高齢者と乳幼児の組み合わせなんて特に避けなければ

          みんなに会えるって、とくべつ。2/3『笑わない日々』

          みんなに会えるって、とくべつ。1/3『会いたいけど、会えない』

           みんな大好きミスタードーナツが11月12日から行っているポケモンコラボ。このコラボでのコピーの1つ「みんなに会えるって、とくべつ」は、私の心には痛いほどに沁み入るものだった。  緊急事態宣言が解除され、少しずつ、コロナ禍以前の生活が戻ってきたように思う。この間、しばらく会えていなかった従姉妹が家に来た。最後に会ったのは1年以上前になる。従姉妹は子供たちを相手にする仕事をしている上に3歳になる娘ちゃんがいて、コロナ禍になってからはまさに「会いたいけど、会えない」状態だった。

          みんなに会えるって、とくべつ。1/3『会いたいけど、会えない』

          今日の散歩

          冷たい風に揺れる真っ赤なブーゲンビレア。 新築の家の壁を登る点滅するサンタクロース。 錆びたバイク。 人参やじゃがいもを煮ている匂い。誰かの家のカレーかシチュー。 今日の天気は曇り。風はまあまあ強くて、信号待ちの背中や頬に当たって寒かった。 海は、今日も、青かった。

          今日の散歩