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ナナメに憧れて 20210808

俺は昔から"ナナメ"に憧れていた。
いわゆる斜に構えるみたいな事なんだけどちょっと違う。
斜に構えるだけだとただの皮肉屋ってイメージ。
俺が憧れるナナメは物事を正面から捉えないだけじゃなくて、新しい面白さを見出す視点だ。
普通に見ればこうだけどこの角度から見たらまた別の面白さがあるよね、みたいな。
みんなが気付きづらい物事のポジティブな側面を引き出せるような視点を持っていたかった。

そうなる為には物事を正面から捉えるだけでは足りない。
違う何かが見える角度があるはずだと、あらゆる事を疑ってかかった。
でも、なかなか憧れたナナメは手に入らなかった。
何故なら俺は中々のひねくれ者、あまのじゃくだからだ。
憧れたナナメよりもずっと、斜に構える事が板についてしまった。

おかげさまであらゆる事を正面から受け取らずに一旦疑ってかかる事に関しては徹底的に癖づいた。
自分で言うのもなんだがこれに関して言えば生まれ持った才能とさえ言えるかも知れない。
大人がどんな事を言ってきたとしても素直に"はい"と返した試しが無い。
先ずは心の中、頭の中で一度受け止めてその物事の色んな側面を考える様になった。
でも、そこから見える俺なりの解は大抵ただのひねくれや皮肉だった。

正直に言おうと思うが、俺は性格がよろしくない。
いや、これは嘘だな。全然正直じゃない。
俺は自分の性格は悪くないと思ってる。
そして俺以外の誰も彼もなかなかまともじゃない奴が多いって思ってる。
お前は間違っていると指摘される時、間違っているのは世の中(強いてはお前)の方だと大抵思っている。
客観的に見ると浮いているのは俺の方で、性格が良くないのも俺の方だってのは理解している。
ただ、性格が悪いことを認めてはいない。
この段落一つで自分が拗らせた人間だと言うことを改めて悟っている。

ともかくだ。
俺はナナメを以ってポジティブを見いだす事が苦手だ。
代わりに斜に構えてネガティブを死ぬ程炙り出す事が得意になってしまった。
何かと言えば屁理屈や皮肉を垂れ大人たちには嫌われた。

中学生の頃はいわゆる厨二病というレッテルのおかげで"一時的"に拗らせてしまっているのだと周りは認識していたと思う。
ところが不思議な事にどんどんどんどんと俺の斜めは強固になっていった。
高校に入れば、学校なんざ退屈なだけだとほざいた挙句自主退学をした。
最早取り返しのつかない過去だが我ながら馬鹿らしいと思う。
大学に入っても大学生にロクな奴なんかいないと周囲を徹底的に見下し空っぽの万能感だけを4年間育て続けた。
膨れ上がった万能感のおかげで就職活動からも逃げ出した。
俺ならなんとか生きていけるだろうから洒落臭い就活なんてやってられるかと本気で思っていた。
周囲の奴らの様に何も考えずただただ流されるだけの人生はごめんだと格好付けていた。
(もっとも格好は付いていないのだが。)
家族と疎遠になって久しいがそれすら自分を特別にする材料として捉えている。
要するに周りと違う事をなんとか探しては(或いは作っては)、自分という人間のプロフィール欄を埋める事で自分が周囲とは隔絶した特別な人間であるという事をどうにか信じようとしているのだ。
そしてこの悪癖は今なお続いている。
こんなナルシスティックな文章なかなか書けないでしょう?
それが何よりの証左だ。

ただ、社会に出て少し変わった事もある。
自分の力量を少しずつ分かり始めた。
自分が大した人間じゃあないという事を認められる様になってきた。
自分は変わった人間だ、これはまだ信じている(というよりもまだ信じていたい、しがみついていたい)。
だけれども特出した"力"のある人間でない事は受け入れられる様になった。
ベタな話だが社会に出ればいくらでも上には上がいる事を痛感する。
また、身近な事でさえ上手くやり遂げられない己の無力さに常日頃ぶち当たる。
こうした経験がようやく俺に素直に"はい"を言わせ始めた。

だから、今の俺は斜に構えただけのへっぽこ三流野郎というところだろう。
これはこれで人生を生きていくには面白い在り方だなと我ながら思っている。
少なくとも正面だけを素直に見てきた人とは違うフィーリングを持っているのは事実だ。
だからこそ生まれる周囲との違いを楽しみながら生きていければいい。
自分が感じる違和感はきちんと取っておく。
そしてその違和感が現実の問題になった時、俺の斜めはいつか日の目を見るかもしれない。
そう思うと性格が悪いってのもなかなか面白く思える。

話はズレるが日記に書いた通り一年程うつ病という奴を患っている。
俺が思うに自分は特別だという願望が病気に一噛みしているんじゃないだろうか。
子供の頃から抱えてきた"ななめ"願望が今になってようやく社会との折り合いを付けようとしているのかも知れない。
だとしたら、その折衝を俺は大人しく見守ってやらなきゃならないのかもな。
自分らしく生きるとかそういう言い回しは大っ嫌いだけど、すげえ要約して分かりやすく言うと多分そんな感じの事なんだろう。
俺にとっての休むは、心の立て直しって事なのかも知れない。
自分と世界の折り合いを付けるみたいな。
その為には自分の内面のぐちゃぐちゃももう少し整理整頓が必要そうだけどね。

俺にとっての斜めは捻くれてて皮肉屋のろくでなしだけど、もう捨てようにも捨てられない立派なアイデンティティになってしまった。
仕方ないからこれからも引きずって周るよ。
病気が良くなったら少しは恩返しして欲しいもんだけど。

今日はここまで。

U2 / Stuck In A Moment You Can't Get Out Of

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