進行形JR乗りつぶし日記(少しのオマージュ)#26~関東圏集中旅(5)【木更津→安房鴨川→大網→成東】
東日本管内廃線候補一番手の久留里線を乗り終え、木更津に戻ってきた。朝食も摂っていなかったので、駅階段下にある駅そば屋に入る。駅そば屋の立地条件としてはホーム上が最高で、時点が改札近辺となるのだが、この木更津駅そばはロータリーに面した場所にある。しかも立ち食いではないので、そういう観点では減点なのだが、朝限定のたらこご飯セットなるものがあって、これが遅めの朝食兼早めの昼食にすこぶるフィットする。
そばで空腹を成敗した私は再び駅構内に戻った。2023年3月9日(木)9時31分木更津始発の内房線各駅停車に乗り込む。内房線は太平洋側の安房鴨川まで延々と続く長大路線だが、運転系統は木更津・君津でほぼ分断されていて、都心からの特急列車も臨時を除けば君津止め、そこから半島西端の館山を回って安房鴨川まで行くのは1時間に1本程度の各駅停車しかない。特急の本数も東回りの外房線の方が多く、東京からの比較的近距離というイメージとは相反して少々意外な感がする。いずれにしても18きっぷで鈍行に揺られる私には関係ない話ではあるが。
木更津の隣の君津は発電所や製鉄所が立ち並ぶ工業都市で、多数の引き込み線や留置線もあって車窓は賑やかである。やがて東京湾に突き出た富津岬に近づき、カメラを精一杯望遠にしてみるが、ぼんやりと先端の展望台が見えただけだった。内房線・外房線というとずっと海沿いを走っていると思いがちだが、海が展望できる区間は存外に少ない。紀勢本線や予讃本線なんかも同じように実際は海はあまり見えない海沿い路線で、かといって山岳風景が楽しめるというレベルでもないので却って始末に悪い。
10時12分浜金谷駅到着。浜金谷と対岸の神奈川県久里浜の間に就航する東京湾フェリーはアクアライン開通により大きな打撃を受けたのことだが、経営努力を重ねて今でも1時間おきの運航ダイヤを確保している。いつか混み混みのアクアラインを横目に眺めながらゆったり船の旅というのもやってみたいと思うが、今日は駅階段に掲げられた「東京湾フェリー」の大きな看板をちらりと見ただけで、船影を見ることもないまま列車は無造作に発車した。
2両編成で座席がほぼ埋まっている列車は初春の陽を受けながら淡々と南下していく。E131系という新しい形式らしいが、もともと形式にはあまり詳しくないのに加えて、最近の車両は似たようなステンレス製が多く、更に普段馴染みのない関東地方なので、形式に注目しているというより備忘録として記していると言った方が正しい。その方面に造詣の深い諸子からすればけしからんことであろうが、基本的に緩い鉄道ファンなのでお許し願いたいところである。
木更津から1時間走って、10時36分に館山駅着。乗客の大半はここで降りてしまい、内房線・外房線の最もローカルな区間に入ると、乗客は一桁となってしまった。しかしここから安房鴨川あたりまでが一番眺望の開ける区間でもあり、しばらくして太平洋側を北東に走り出した列車からさすがにスケールの大きい太平洋をしばし見つめる時間が続く。
安房鴨川、安房小湊と少し大きめの駅をとおるが、どの駅も停車時間は僅かで乗降客も少ない。夏の海水浴シーズンなどはもっと賑やかなのかなと思うが、春のようなまだ冬のようなこの時期は駅自体が冬眠しているような静けさに包まれている。
安房鴨川からシームレスに内房線に入り、やがて「行川(なめがわ)アイランド」という淋しい小駅に列車は停車した。この難読地名を冠した駅は昭和から平成前半に隆盛を極めたレジャー施設のために設置されたらしいが、20年以上前に施設が閉園したあともそのままの駅名で存在している。なんでも昔ここで飼育していたキョンが野生化して千葉県全域で4万頭にまで増えて農作物被害も深刻なんだそうで、今となってはそういう負のイメージとなってしまった駅名をそのままにしているのはどうしてなのかなと思う。
漁港としては栄えているのだろうが、駅はやはり淋しい勝浦駅を過ぎて、木更津から2時間以上走ってきた鈍行列車は12時6分に大原駅に着いた。外房線の大原から先の千葉方面には以前乗ったことがあるので、外房線の未乗区間はここでおしまいとなる。
各駅停車がたどり着いた終点の上総一ノ宮駅で向かいのホームに待つ12時39分発東京行き快速に乗り換える。いきなりの東京行きでいきなりの10両編成である。2両編成房総鈍行からの浦島太郎感を抱きつつ、しかし私はまっすぐ東京には向かわず、20分後に東金線と分岐する大網駅で降りた。
東金線は外房線の大網駅と総武本線の成東駅を結ぶ15キロ弱の短い路線で、ここから再び未乗路線の旅が始まる。大網駅の東金線ホームは房総線から長い渡り通路を歩いた先にあり、大きな俯瞰でみると駅は扇形をしている。やや小高い場所にある東金線のホームは見晴らしがよく、そしてホーム右側のレールには終端構造だが、左側のレールは外房線につながっているという中々に興味深い構造である。
昼過ぎの陽射しは暖かく、少し吹く風も心地よい。やがて来た列車はまたしてもの近郊型電車でつまらなかったが、高校生でそこそこ混雑した車内で席を確保した私は不覚にも夢の人となり、折角の未乗線区をほとんど寝て移動してしまった。
成東駅は東京から銚子まで走る総武本線の特急も止まる主要駅である。総武本線は成田方面に分岐する佐倉から銚子まで、というか厳密には銚子のひとつ前の松岸駅間までが未乗区間なので、ここからは銚子まで往復して、戻りは成東を通り過ぎて佐倉まで乗車して総武本線を完乗せねばならない。
14時43分成東駅発車の銚子行き各駅停車に乗る。ここから九十九里浜に沿って北上していく訳だが、ここも線路は海から3キロ以上離れていて全く眺望はきかない。そろそろ下校時間帯ということで高校生の乗降は激しいが、どっかりと座席を確保してしまった私はまたしても微睡みに落ちた。寝てばかりで全くどうしようもない。
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