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進行形JR乗りつぶし日記(少しのオマージュ)#28~ひさびさ二人旅北海道(1)【新千歳→釧路→根室→釧路】

 子どもの頃から人見知りで団体行動が苦手なのに加えて、年齢を重ねてきたせいもあり、最近の私の乗りつぶしはほぼ一人旅だが、今回は久しぶりにCさんと二人旅に出た。お互いに未乗線区の多い東北に行こうかと以前から相談していたのだが、いよいよ根室本線の富良野~新得間が来春廃止決定との報を聞き、急遽北海道に行き先を変更したもので、多くは昨年9月の北海道大周遊ルートと被るが、二人旅ならではの再発見もあるだろう。

 2023年9月21日(木)6時45分関西空港発のピーチで出発する。始発電車でも搭乗時間ギリギリというスリリングなダイヤで、少し早めに空港に着いた私が「もうすぐ同乗者来ますから待ってください!」と新千歳行きの看板を持ったピーチのお姉さんに哀願して事無きを得るという波乱ぶくみのスタートである。
 新千歳空港でのJR乗り継ぎもこれまた余裕がなかったのだが、意外とすんなり成功し、一駅先の南千歳駅から特急『おおぞら3号』に乗り込んだ私たちはようやく一息をついた。
 初日はこの特急で終点釧路まで行き、更に根室まで往復して釧路泊という行程になっている。ずっと雨時々曇りといった天気で車窓は冴えない。二人それぞれが写真を撮りましょうということで横並びではなく窓席縦並びで指定券を取ったが、これではあまり意味がない。後ろに座っているCさんは何をしているのかしらんと思いながら、南千歳駅で買った帯広名物の豚丼弁当を食して、あとはボォーっとしているうちに13時20分釧路駅着。去年大いに感銘した狩勝峠越えもあっさりと終わった感がある。。
 次の根室行き鈍行は5分後の発車で、どうも今回はタイトな乗り継ぎが多い。甲高いディーゼル音を最高潮に響かせている列車は昨年も乗ったキハ54形2両編成で、先頭車両は黄色くラッピングされ、車内は木目調に改装されている観光仕様だったが、既に観光客でいっぱいだったので、私たちは同じキハ54形ながら昭和っぽく朽ち果てた後ろの車両にのそのそと乗り込んだ。

 さてこの二人旅の企画に際して、私はCさんに釧路~根室間(通称「花咲線」)の景観が如何に素晴らしいかを力説したのだが、厚岸駅を過ぎていよいよ別寒辺牛湿原を踏破するハイライト区間に差し掛かっても何だか昨年のような高揚感を感じない。やはりどんよりと曇る空模様が大きいのであろう。晴れであろうと雨であろうと貴重な素晴らしい景色には違いないはずで、むしろ湿原の生物に恵みをもたらす雨の方が大事なのだが、通りすがりの旅行者の感動を呼び起こすのはあっけらかんとした晴天なのかなぁ、などと考えてしまう。この区間は初乗車となるCさんに「いや天気良かったらね、もっと感動するんですよぉ」と当事者でもないのに言い訳をしてしまう。
 いつの間にか客の数も減ってきたので前方の観光仕様車両に席を移す。遥か彼方に雄大な落石岬を僅かに望見したところでカメラを構えるが、昨年同様に望遠限界なのかロクな写真は撮れない。Cさんは私のチャチなものとは段違いの高性能カメラでシャッターを切っている。
 空は相変わらずどんよりと曇っている。列車は「晴れでも雨でも走るだけですわ」といった感じでガタゴトと進んでいき、東根室駅の板張りホームに定刻15時54分に滑り込んだ。

 昨年来た時はほぼ無人だった東根室駅は、今日は団体客らしき年配の方々で大混雑である。トラピックスの旗を持った兄ちゃんがいたので訊いてみると、道東を周る団体ツアーで、この駅にバスで来て次の釧路行き列車に乗っていくことのこと。やはり日本最東端駅のネームバリューは凄いわいと思ったが、早く行ってくれないかなぁと切に思ったことも間違いない。
 駅前、と言うには淋しい単なる空地を所在無げにうろついて喧騒をやり過ごし、16時15分発の釧路行き鈍行を迎える。トラピックスの兄ちゃんは「一列に並べ」だの「乗車口は一つしか開かない」とか大声で案内しているが、おじさんおばさん方は殆ど聞いていない。やがて大騒ぎの末にようやく団体さんが列車に乗り込み、列車が3分遅れで発車すると、ようやく日本最東端駅はいつもの静寂を取り戻した。

 ひととおり写真を撮って、しばし感慨に耽ったあと、私とCさんは終着の根室駅まで一駅歩いた。列車は全く来ないし、タクシーの姿のカケラもないので歩くしかないのである。さほど遠い距離ではないが、雨が強くなってくるし、グーグルマップ先生に無駄なアップダウンを強いられたりしたので、根室駅に辿り着いた頃にはすっかり疲労困憊の体となってしまった。
 既に閉店間近の観光案内所で「日本最東端駅到達証明書」を貰い、しばし歩いた所に見つけたログハウス風の喫茶店で夕食を摂る。焼きカレーとホットコーヒーが冷え切った体に染み入った。
 食事のあと更に激しくなってきた雨の中を何とか行軍し、駅から先に延びたレールの終点を訪れる。昨年見逃した「根室本線終点~滝川駅から444k339m、東京駅まで1,607k576m」と記してある看板を見て、富良野~新得間が廃止になったらこれ書き換えるんやろか、と思った。

 傘が役に立たない程の雨でボトボトになりながら根室駅に戻り、19時4分発釧路行き最終列車に乗り込む。真っ暗な上に大雨なので、最早車窓も何もない。
 21時39分釧路駅着。雨は上がったが冬のように寒い北の大地をしばらく歩いて、去年と同じビジネスホテルに投宿し、二人旅の初日は終わった。

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