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オンラインでTask-based Language Teaching(TBLT)をやってみよう!

 休校期間が長引くにつれ、生徒の学びをどうサポートするのか、各学校で手探りの取組が進んでいます。

 「授業動画を撮影して生徒に視聴してもらう」オンデマンド形式の授業や、「ZoomやSkypeなどを使って生中継の授業を行う」ライブ形式の授業に挑戦し始めている先生も多いのではないでしょうか。

 しかし、その授業で生徒が何を学んだのか、どんなことができるようになったのか、成果をどのように測ればよいのでしょう?これはオンライン授業を今後続けていく上での大きな課題の1つではないかと思われます。

 そこで、生徒の学びを測る手段の1つとして、Task-based Language Teaching(TBLT)を使ったオンライン授業をご紹介します。

1. Task-based Language Teachingとは?

 Task-based Language Teaching(タスク中心教授法)(=TBLT)とは、第2言語習得研究において提唱された教授法の1つです。TBLTの特徴は、生徒に課題(Task)を与え、そのTaskの達成度合いによって評価を行う、つまり成果(outcome)を重視するというところにあります。

 Taskを達成するため、生徒は自分の言いたいことや表現したいことを伝えるために幅広い語彙や文法事項を組み合わせて英文を作り出していくことになります。

 これは実際のコミュニケーションの場面で私達が普段行っていることと同じです。

 つまり、この方法によって生徒の真のコミュニケーション能力を育成することが可能になると言えます。TBLTについては海外に多くの論文があり、高い学習的効果が認められています。

2. オンライン授業でTBLTを行うには?

 例えば、次のような感じでオンライン授業にTBLTを導入してみてはいかがでしょうか。

 ①生徒に取り組むべき課題を与える
 ②発表する日時を設定して、告知をする
 ③ZoomやSkypeなどで発表させる

 ④発表内容や関連する事柄についてWritingタスクを課し、提出させる

 発表をして終わり、というのではなく、発表後にはその内容をきちんと推敲してEssayという形にまとめて提出させることで、accuracyの強化にもつながります。

 発表は、生徒の能力に応じて様々な方法が考えられます。

 ・調べたことや自分の考えなどをオンラインで口頭で発表する
 ・パワーポイントでスライドを見せながらプレゼンテーションを行う
 ・テーマに沿った動画を作成し、流す 
etc.

 ずっと家にいる生徒にとっては、自分が取り組んだ課題をただ提出するだけではなく、オンラインでクラスメイトに対して披露し、生のリアクションを得る機会があった方がずっと励みになると思います。

 また、この方法だと、動画を見たりオンライン授業に参加したりしている以外の、いわゆる「オフライン」の時間を使って生徒たちが各自課題に取り組むことになるので、家庭で過ごす時間をさらに有効に学習に充てることができるのではないでしょうか。

3. オンライン授業でTBLTを行う上での注意点

 もちろん、ただ課題を与えてやらせっぱなしというわけにはいきません。

 生徒が課題達成への手順や道筋を具体的に理解し、課題に取り組む中でどんな点を重視すればよいのか、教員がポイントを明示しながらフォローすることが必要です。

 以下のような点を各教員が考え、生徒の実情に応じて適切な方法で示すことで、はるかに効果が違ってくると思います。

発表のルール
(時間制限、必ず盛り込むべき内容、使用するものetc.)
評価のポイント
(何が重要視されるか、ルーブリックを示すetc.)
学習者に評価のポイントをどう意識させるか
(チェック表を作って、生徒に1つずつチェックさせるetc.)
peer-feedbackやself-reflectionをどうするか
(友人の発表をどう評価するか、自分の発表を反省するポイントは?etc.)
質疑応答をどう進めさせるか、生徒が質問やコメントを積極的にできるようにするにはどうしたらよいか
(Discussion strategiesなどを渡しておく、司会者を作る、発表を見る際のポイントをあらかじめ伝えておくetc.)

4. オンラインTBLTの例

 ここでは、実際にどんな内容の授業が考えられるか、生徒の情報活用能力や英語能力に応じていくつか具体例をご紹介します。

 Taskの内容は、学習者の興味や関心を引くもの、意味内容を伝えることが中心となるものを選ぶと良いでしょう。

(1)Show & Tell---英語でビブリオバトル

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テーマ:「Stay Home期間中におススメの1冊を紹介しよう」

Task:自分が持っている中でおススメしたい本を1冊選び、実物を見せながら1人3分以内で本のあらすじや自分の感想などを紹介する。     

手順:
①Zoomでオンラインクラスを開講する。
②Breakout Roomの機能を活用して、4~5人の小グループに分ける。
③1人司会者を設定し、順番に本の紹介を行う。本の紹介の後は2~3分質疑応答の時間を設ける。
④最後まで終わったら、「最も読みたいと思った本」に投票を行い、グループ内での「チャンプ本」を決める。
⑤発表後、時間が許せばクラス全体で各グループのチャンプ本を共有する。
⑥オンライン発表授業の後、本の紹介をEssayにまとめて提出する。

参考:How to write a book review
https://reedsy.com/discovery/blog/how-to-write-a-book-review

 これはパワーポイントや動画作成などパソコン操作が苦手な生徒でも比較的簡単にできる活動です。本以外でも映画や音楽など、色々なテーマで応用可能ですね。

 質疑応答は、直接口頭で行っても良いですが、Zoomのチャット機能を使って発表中に質問を書き込んでもらい、発表後にそれに答えてもらうという形でも実施できます。

(2)Power Point Presentation

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テーマ:「旅行業者になったつもりで旅行プランを作ろう」

Task:ある国の3日間の旅行プランを立て、パワーポイントを使ってプレゼンを行う。スライドは全部で5枚以内、時間は5分以内とする。日本からの行き帰りのフライトは含めないが、旅行中の国内の移動方法や移動時間などは考慮してプランを立てる。 

発表:
①Zoomでオンラインクラスを開講する。
②Breakout Roomの機能を活用して、4~5人の小グループに分ける。
③発表者はZoomの画面共有の機能を活用してパワーポイントの画面をグループのメンバーに見せながら旅行プランのプレゼンを行う。
④全員のプレゼンが終わったら、どのプランの旅行が一番魅力的だったか投票を行う。
⑤オンライン発表授業の後、自分のプレゼン内容から1か所史跡や観光地を選び、その場所について紹介するEssay(どこに位置しているか、何が魅力か、その場所で何ができるかetc.)を書いて提出する。

参考:ESLのサイトなどには様々な場面に即したワークシートが載っているので、Task前の学習に使用することができます。
https://en.islcollective.com/english-esl-worksheets/search/travel+agency

 教科書などでどこかの国についての文章を読んだ後に行うと、その国についての理解がぐっと深まります。

 旅行プランを立てようとすると、どんな観光地があるか、魅力は何か、食べ物は何がおすすめか、移動手段は何があるか、など様々なことを調べる必要があるので、自分になじみの無い国についてたくさんのことを知ることができ、視野が広がるので楽しいですよ!

(3)動画作成

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テーマ:「外国の友人に日本の慣習を紹介するhow to 動画を作ろう」

Task: 日本の慣習や文化(箸の使い方、神社での参拝の仕方etc.)を1つ選び、そのやり方を紹介する動画を作る。動画はナレーションと字幕を含み、2分以内とする。

発表:
①Zoomでオンラインクラスを開講する。
②Breakout Roomの機能を活用して、4~5人の小グループに分ける。
③発表者はZoomの画面共有の機能を活用して動画をグループのメンバーに披露する。
④全員終わったら、どの動画が最もわかりやすかったか投票を行い、グル―プ内でのBest 動画を決める。
⑤グループでの発表後、時間が許せば、クラス全体でBest動画を共有する。
⑥オンライン発表授業の後、動画内で紹介した日本の慣習や文化を説明するEssayを書いて提出する。

参考:見本になるHow to 動画をYouTube等で探して見せると良いですね。
https://youtu.be/FBxgm5VfOYQ

 教科書などで日本文化についての文章を読んだ後に行ってはどうでしょうか。ネタは「抹茶の飲み方」「神社での手の洗い方」のような正統派なものから、「納豆の食べ方」のようなささいなものまで、何でもOK!

 普段自分が何気なく行っていることが、実は日本固有の文化であることに気が付くと同時に、それを全く知らない人相手にわかりやすく説明するためには様々な工夫が必要なことがわかります。

 動画編集は今はスマホなどで比較的簡単に行えるので、意外に得意な生徒も多いかもしれません。


 いかがでしたか?

 このような形の授業であれば、生徒がどんな学習を行ったのか、どんなことができるようになったのか、オンラインであっても成果をしっかり把握することが可能です。

 Zoomなどによる双方向のオンライン授業が可能な場合は、ぜひ挑戦してみてください。

・参考文献

Richards, J. (2015). Key Issues in Language Teaching. Cambridge: Cambridge University Press

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