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白い嘘×黒い真実 【白い嘘 #1】

「白い嘘」

相手を思いやる
優しい嘘

見えていた現実リアル
真実のように映る

仮想バーチャルな真実


***


仮想世界の中心である
大きな大きな城

その城と城下町を結ぶ
長い長い橋を

ただただ
ぼんやりのんびり渡っていた


ゲームストーリーも中盤に差し掛かったところ
お城に住むこの世界の「勇者」に出会うため
玉座に向かう途中だった


>> 良かったら


橋の真ん中で、唐突に呼びかけられるチャット


>> フレンドになりませんか?


振り向くと
銀色短髪で長剣を肩に背負った
青年のアバターが立っていた

青年は続けてこう送ってきた


>> なんだか、すごくさびしそうだったから声をかけてしまった


ぽつんとふたり
橋の上

これがあなたとの出逢いだった


オンラインゲームの仮想世界において

>>  フレンドになろう

なんて唐突に呼びかけられたら
少しの警戒心を持つべきなの

優しい方もたくさんいるけれど
フレンドとしてこれから一緒に
仲良く遊んでいけるのか
楽しくコミュニケーションがとれるのか

その判断をするためには
アバターが向かい合って挨拶しているとはいえ
初対面では情報が少なすぎる


それでも
あなたと少し会話をしてみようかしらと
好奇心がわいたのは

わたしのことを ”さびしそうだ” と
見抜いたからだ



現実世界のわたしはさびしかった

深い海底に落ちたわたしを
冷たく重いさびしさから
引っ張り上げてくれるのならば

誰の手を掴んでも良かった


例えあなたに
「誰でも良かったのよ」と伝えたとしても

>> そうか、それでも俺はリィと出会えて良かった


と答えてくれるでしょう

わたしたちは
そういう関係

お互いにさびしいくせに
さびしさを隠し通して
さびしさを紛らわせる


嘘と真実が混じり合い
白と黒ともはっきりつかない
マーブルグレーな関係

とでも言えたのかしら

きっと本当のことなど
当事者のわたしたちにだって
わからない


実際に起こったことだったのか
見事に仕組まれた罠なのか
優しい嘘だったのか
残酷な真実だったのか

今となっては
わたしの記憶の断片を繋ぎ合わせて創り上げる
単なるフィクションでしかない


白い嘘と黒い真実が
交差する


わたしが愛した男性の中で
ただ一人

顔も名前も
真っ白に塗りつぶされて
全く思い出せない人

それがあなた


唯一覚えているのは

あなたがわたしを
「ゆり」と呼ばずに
「リィ」と呼んでいた事

きっとお互い本当の名前も
知らなかったはずね


これから綴ることは
たった3か月の短い恋のお話

恋と呼べるものだったのか
恋心の一つも思い出せないけれども


愛狂い心乱れるほどに
愛し愛されたって事実だけが
わずかに残っている

そんな気がするの



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1話目無料公開です。「白い嘘」それは相手を思いやる、優しい嘘。見えていた現実は、まるで真実のように映る仮想の真実だった。海底を堕ちたわたし…

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恋し続けるために顔晴ることの一つがnote。誰しも恋が出来なくなることなんてないのだから。恋しようとしなくなることがわたしにとっての最大の恐怖。いつも 支えていただき、ありがとうございます♪