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3回読んでも新発見がある『漢文力』【徒然読書59】

ふと本棚を見ていると、「あれこの本何回も読んでいるのに記事にしていないな」という本がありました。

それがこの本。


もともと漢文が好きで、短い文の中に宇宙が存在しているような錯覚をしばしば抱いていたものです。

和歌も同様でどうしてこんな31文字の間に人間の心情や本質を閉じ込められるのだろう?と惹かれたり。

だから論語や老子荘子、戦国策、貞観政要、八代集などを読みたい欲が時々沸き起こります。
今は懐風藻を読みたい…

その漢文を幅広く引用しながら書かれた本なのですから、私にとってバイブルに近いです。

著者は中国文学の専門家で中国史に造詣が深い方です。
ですので、中国思想や文学も合わせて学べる本でもあります。

その著者は本のタイトルにもなっている「漢文力」について、以下のように述べています。

漢文を読み、そこに展開されている古人の思索を追体験することによって身につく力。
歴史や宇宙など、より大きな時空のなかに自分を位置づけ、明日を生き抜くための設計図を描く力。
p2

「漢文力」を根底に置きながら、自己内面やあの世、自然と宇宙、文明など幅広いテーマで漢文を用いながら論じています。

その中で自分の指針にもなっている漢文を抽出しました。

漢文全体は写していませんので、気になった箇所がありましたらぜひ調べてみてください。

①『荘子』(秋水篇)「知魚楽ちぎょらく

荘子が魚が泳いでいるのを見て魚の楽しみを知ったという逸話。

一見不可能に見えても「他者の心を知ることが出来る」という望みを表しています。
ここでの他者は人間以外も含まれていますね。

暗黙知や自分の心の奥底を言語化することの難しさから、人を理解することの大切さと苦悩も上手く示しています。

②『説苑ぜいえん』建本「炳燭へいしょくの明」

年はとっても老けこまず、毎日を前向きに生きる。
そんな生き方だそうです。

漢文の訳として、「老年で勉強を好むと夕闇の中の灯火のように見えてくる」とのこと。

若さを保つ秘訣は好奇心の灯火を持ち続けること、勉強を始めるのに早い遅いはないと知ることなのかもしれませんね。

③『楚辞そじ』「天問」

こんな異色な漢文もありました。
最初から最後まで宇宙に関する問が書かれているのです。

しかも紀元前3世紀に!
原本を読みたくなってきました。

ただ反対に人間の生は有限なのに知は無限と知らずに学にのめり込むことは殆いと『老子』『荘子』は言う。

この多層性の面白みを漢文の組み合わせで示している本書に感服です。


時々また読みたいなと思える本はなかなか出会えません。

そうした本を増やしていって糧にしていきたいなと思います。

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