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スタイリッシュなサイコホラー 『Blink Twice』

ある日突然、億万長者の所有するプライベートアイランドの瀟洒なパーティに招かれる。そんなちょっとスリリングな体験からすべては始まる。

そのタイトルにふさわしく、ゾエ・クラヴィッツの長編デビュー作『Blink Twice(原題)』は、興奮し、驚き、そして恐怖におののく主人公の瞳の中で展開する。

フリーダ(ナオミ・アッキー)はケータリング・ウエイター。 ある日のパーティでハイテク億万長者のスレイター・キング(チャニング・テイタム)の目に留まり感激する。最初は豪華で贅沢な食事と終わりのないカクテルやワインに囲まれて幸せで夢見心地だったが、その雰囲気は少々異様で、フリーダはやがて、何か恐ろしいことが起ころうとしているのではないかと考えるようになる。そして実際にそうなるのだ。

『Blink Twice』は、もうひとつのホラー長編デビュー作、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』を思い起こさせる。けれどもクラヴィッツの映画はコメディ色が薄く、視覚的にスタイリッシュだ。原色が画面を埋め尽くす: キングの島の邸宅は血のように赤く、噴水に囲まれていて、この家が大量に出血しているような印象を与える。

壁、そしてあるシーンではジェル状のスパのフェイスマスクはまばゆい青色で、ある場面では鮮やかな黄色い蛇が鮮やかな草むらを走る。女性たちは揃いの白を身にまとい、妖精のように身繕いしてシャンペンを口に運ぶ、そして、悲鳴のような不穏な音を立てて重いドアが開く。

全体を通して新しい世代のサイコホラーだなあと感じた。カラフルで明るいタッチで、ダークな影の存在との対照対比が鋭く描かれている。

一つ言えば映画は必要以上に長引きかせるシーンが多くて、このジャンルの多くの作品と同様、監督は第3幕でコントロールを失ったかのように見える。けれど主となるキャラクターの演技(アッキーは鮮烈で傷つきやすい主役を演じ、テイタムは善良な笑顔の裏に、スクリーンでは見せたことのない不気味さを発見する)は、しっかりとしたド迫力だ。

この島に来た女性たちはお互いを救うためにチームを組む必要があり、白いドレスはやがて血と汚れで汚れていく。



『Blink Twice』のオープニング・ショットは、映画の他の部分とほとんど同じように、爬虫類がゆっくりと焦点を結んでいく様子を映し出す。その冷血な緑色のトカゲのように、テクノロジー界の大物スレーター・キング(チャニング・テイタム)は常に謎の笑みを浮かべている。

彼のカムバック戦略は確かに大胆だ。映画の冒頭で垣間見えるインタビューで、キングはプライベートアイランドで長期間暮らすつもりだと明かしている。どうやら、億万長者が定期的に遠く離れた、取り締まられることのない隠れ家に出かけているという設定だ。

この映画は、楽しいひとときのなかに重い威圧感を漂わせていて、それをスタイリッシュに生き生きと伝えている。


最後にトラビアを一つ。この『Blink Twice』の題名は最初は『Pussy Island』だったらしい。これはちょっと軽すぎて、確かに映画に沿わない題名だ。


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