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"DIE WITH ZERO"(ゼロで死ね)

"DIE WITH ZERO"(ゼロで死ね)は世界中でベストセラーとなった本で、お金の『貯めかた』よりむしろ『使い方』について考察する本だ。ずっと前に読んで忘れていたのだけれど、最近読んだ経済評論家の山崎 元氏の感想が興味深かったので紹介したい。

山崎氏にとってこの本のポイントは以下の4点。「濃淡はあるが」基本的には賛同すると述べている。

(1)真に価値のあるお金の使い道は「経験」だ。良い経験は思い出として長らく効果を発揮する。
(2)人間の楽しむ能力は年齢に依存する。適切な時に惜しまずにお金を使え。
(3)「仕事が面白いからお金を使う時間がない」は適切な理由にならない。
(4)寄付や相続も生きているうちに有効に行うこと。

(1)と(4)については全面的に同感だ。特に(1)の「モノ」よりも「経験」に投資しようという考え方には100%賛成だ。

(2)の適切な時を掴むにはお金だけでなく人生において直感と経験必要だろう。自分にとっての『適切』を識るには、日頃からよく内省して、考えて、自分はどんな人間で何を価値として生きているのかを知っておく必要があると思う。

(3)についてはあまり響いてこなかった。この本を読んだ時は原文で読んだので、翻訳がどうなのかわからないけれど、仕事にカマかけて楽しみを忘れてしまう人が多いことを言っているのかもしれない。

ともかくも本全体を要約すると「お金を有効に使い切って、死ぬときには所持金がゼロになっているのが、ある意味では理想だ」ということらしい。

しかしながらこの本は「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」については懐疑的で、若い頃に生活費を極端に切り詰め、貯蓄・投資にお金を回して目指すFIREのスタイルは、投資(人的資本への投資)と消費(経験の消費)の両面で「最適」から外れているのではないかという疑問を投げかけている。

例えば、手取り収入が年間500万円だとして、半分の250万円で暮らし、250万円を投資に回し、投資が年率4%で回るなら、17年強で金融資産は6250万円を超える。6250万円が4%で運用できるとすると、年間250万円の収益が得られるので、今まで通りこの金額で暮らすなら働かなくても生きていける計算になる。それがFIREの考え方だ。

それが日本の消費者には勧められない理由として、山崎氏はこう述べている。

一つには、将来、年齢と共に所得が上がると期待できるか否かについては、これまで以上に個人差が広がると思われることが問題だ。将来所得の増加に対する楽観は「誰にでも」勧めていい前提条件ではなさそうだ。

 また、もう一つには、「ある程度の備え」を持っていると、リスクに対する対処について「保険」という加入者側にとって著しく不利な手段に頼らずに済むからだ。

『DIE WITH ZERO』の著者は、成功したトレーダーであり、端的に言って平均的な人よりもかなりお金持ちだ。例えば、著者は、将来何歳まで生きるか分からない「長生きのリスク」への備えとして、年金保険の購入を勧めている。しかし、並みの日本人の経済力でこれをまねようとすると、若い時分の消費が高額な保険料支出でかなりの程度阻害されることになるだろう。そうなっては、この本の主旨に反する。

引用:Daiamon Online

山崎氏の言うとおり、将来は所得が増えるのだと信じて20代、30代の頃に所得の大半のお金を使ってしまうのは「誰にでも」勧められることではないし、「ある程度の備え」は必要だろう。

日本人とアメリカ人のお金に対するリスクの取り方はかなり違うことを、これまで日本とアメリカに住んで実感してきたわたしは、この部分で山崎氏に同意する。

最後に山崎氏はもし自分がまだ若かったらこうするだろうというアドバイスを述べている。その中から抜粋すると次のようになる。

  • 就職後2、3年は少々のお金の蓄えよりも、自分が仕事のスキルを得ること、自分の人材価値を高めることに、自分の時間とお金とを使うだろう。この段階では借金をせずに暮らすことができれば上々だ。

  • 25歳くらいから、例えば収入の1、2割を貯めて、経済的な備えを作るだろう。ある程度の備えがあれば、医療保険なども含めて、ほとんどの生命保険が不要になる。この効果は大きい。

  • 20代後半以降、将来も役に立つような「良い経験」のためにはお金を惜しまない。

  • 遅くとも35歳くらいまでにファーストキャリアで大いに稼げる転職先を見つけるか、仲間と起業するなどで生活の基盤となる収入源をつくる。

山崎氏の勧めるNISA(少額投資非課税制度)とiDeCo(個人型確定拠出年金)の初期設定については、日本で資産運用しないので詳しくないが、アメリカでは全世界株式のインデックスファンドやETFには若いうちから投資すべきだと考える。特にS&P500とナスダックに重点を置いて、エマージングマーケットについても投資の知識を若いうちに学んでおくこと。

そして最後に「『お金は、貯めることよりも、使うことが楽しい!』と思うのが健康な状態だ」という氏の意見には100%賛成する。





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