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日本企業に学び合いの文化を。人材育成に特化したCLOの目指す自発的学習組織づくり

2022年4月1日、SchooはCLO(チーフ・ラーニング・オフィサー:最高人材育成・組織開発責任者)として古瀬康介の就任(現COOと兼務)を発表しました。

日本企業では例の少ないCLOとは何か。どんな役割を担い、Schoo社内、そして社会全体にどんな発信を続けていきたいのか。組織における学びの重要性を、古瀬に聞きました。


「学び続ける」ことが変化の時代における生存戦略となる

――社会人の学び直しの重要性は、昨今ますます注目されています。そもそも、なぜ学びが必要なのでしょう。

背景には急速な社会変化と技術革新があります。社会や企業のあり方も変わり、それに伴い個人の価値観や働き方も変わってきています。

個人においては、自身のありたい姿を捉え新たな分野を学び始めている人や、このままだと変化に置いていかれるという危機感から新しく学び直している人などがいます。

企業の雇用においては、従来のメンバーシップ型からジョブ型へ移行する企業も出始め、人材育成やキャリア形成は多様化しています。

こうした変化に対応するための突破口が“学び”であり、これからの生存戦略だと考えています。

――学びを取り巻く動きについて、世界の流れ、日本の現状をどう見ていますか。

2020年に開催されたダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)では、「2030年までに10億人のリスキリングを目指そう」と、『リスキリング革命』というイニシアチブが発表されました。「第4次産業革命により、数年で8000万件の仕事が消失する一方で9700万件の新たな仕事が生まれる」と言われ、私たちの仕事を取り巻く環境は大きく変わっていきます。

変わりゆく産業構造の中で、自らも変わり続けるためのスキルを習得する必要性はすでに世界では発信され続けています。ジョブ型雇用が中心の欧米諸国では取り組みも進んでいる中で、日本においては取り組みはもとより危機感もまだまだ弱いように感じます。

社会の変化と働く個人の価値観多様化に合わせて、社内の人材育成の仕組みづくりから変わらなければ——。そう危機意識を持って動いている企業とそうではない企業の差は、今後ますます広がっていきます。

――日本企業が抱える課題、経営者が向き合うべき課題とは?

終身雇用や年功序列を軸とした日本型雇用システムは崩れつつあるとはいえ、まだまだ多くの企業はメンバーシップ型で動いています。その際に課題となるのは、入社後の社内育成が、OJTをベースにした「縦型」の育成スタイルになりがちな点です。

上から下への「縦型」伝承方式の育成は、過去の成功体験や現場の上司の知識・経験が前提で、自社に最適化された学びになっています。これだと成果を出す上で短期的に効果的な一方で、変化の激しい、不確実性の高いこれからの社会に適応することは難しくなります。

企業が変化に対応した経営をし、新規事業やイノベーションを起こそうとしたら、新しい考え方やアイデア、技術の投入が必要になります。技術革新が目まぐるしい今、既存の考え方やスキルは数年で陳腐化するとも言われています。

社内に適応した学びだけでは通用しない。そこにいち早く気づくことが必要です。

――社員のリスキリングや人材育成に対して、企業はどう動いていくべきですか。

従業員に対して、「1人ひとりが自分のキャリアを捉え、自らの未来に向けたアクションをしたいと思えている状態」、もしくは「このままだと置いていかれるから、学び直し含めて変わるためのアクションをしたいと思っている状態」のいずれかになるように、「未来志向」と「現状維持志向」の両面から個々に働きかけをし、マインド形成をするところから始めるべきです。

そして、「育てる」から「育つを支える」という意識転換をした上で、学び直しやキャリアオーナーシップを育む仕組みを用意し、社内外にもそのプロセスや成果を発信する。

これができなければ、魅力的な人材育成が叶わず、採用力も落ちていくことでしょう。学びの機会を生み出すことは、企業力に直結していくものだと考えています。

――マインド形成だけでなく、スキル習得などの直接の学習支援も必要ですか。

もちろんです。働く個人が「今後のキャリアのためにプログラミングを学びたい」「語学習得のために留学したい」と考えたとしても、企業側が「うちの会社で求めるポジションにおいては不要だから」と考えていては、時間やお金の面で支援しようとはなりません。

社員のキャリア自律こそが企業の競争力の源泉ともなることを理解することで、企業側にもリスキリングやキャリア支援のインセンティブが生まれます。自身のキャリアや業務にオーナーシップを持って動ける人材を増やすことが重要です。

社内に閉じた学びから、開かれた、自律的な学びに変えていく。そのためには、副業・兼業を通した社外にまたがる経験の機会もそうですし、社内の部署を横断して学び合う風土や仕組みづくりが有効です。

一人で学び続けるのには限界があるので、学ぶコミュニティ形成などの環境支援が、企業ができることの一つです。

メンバーの変化を通じて、「学びが人生の中心にある」と気づいた

――古瀬さんは、“学び”の重要性をどう捉え、キャリアを歩んできましたか。

大学院では半導体の開発・設計を学び、2000年にNECに入社しました。「世の中を大きく変えられることをやりたい」と、当時普及し始めたインターネットサービスを生み出せる企業を選びました。配属は企画職になり、新規事業立ち上げや携帯モバイルコンテンツの企画など、新しいこと、面白いことをたくさん経験させてもらいました。

その後、2007年にリクルートに転職。当時始まっていた新しいモバイルコンテンツ事業に興味を持ち、「世の中に仕掛けを作り、仕組みを変えていく」リクルートの事業やカルチャーに魅力を感じ、門を叩きました。

リクルートでは、「R25」や「SUUMO」の企画職でマネジメントも多く経験させてもらいました。マネージャーとして経験を重ねていくうちに、もう一段ステージを上げるなら、まだ足りていないことがたくさんあると痛感し、仕事をしながら大学院に通い直しました。

――大学院で通い直すほど、“学び”の大切さに気づく経験があったのでしょうか?

前職のリクルートに入社したての頃は、マネージャーから「どうしたいの?」と自分の内面をどんどん深堀りしてくることに戸惑いがありました。でも、あるとき、採用プロジェクトで「未完成力」という概念に出会い、「自分にはこれが足りなかったんだ」と気づいたのです。

何かを守って踏み出せない自分がいる。その変なプライドが成長の妨げになっている。「未完成であること」を受け入れ、素のままでもいい。そこから学びを積み上げればいいだけなんだ——

足りない自分を認めて”本当の自分”を開き始めてから、いろんな情報が入ってきたり、周りが助けてくれるようになりました。それが成長につながったと実感しました。

そして、”学び”が人生にとって大事だと考えるようになりました。大学院で学び直したのも、私にとっては自然な流れでした。

また、メンバー育成においても、”学び”について考えさせられることがありました。

「自分はこのままでいい」と閉じてしまっているメンバーに対して、粘り強くコミュニケーションを取りました。相手を否定することなく意見を聞いているうちに、本人の中に「今できていなくても大丈夫」という安心感が生まれてきます。そこから、少し先の自分を描き行動してもらうことで、学びが生まれ、大きく成長していく瞬間がやってくるのです。

学びが人を変えて、周囲の人間や環境を変えて、結果、社会を変えていく。メンバーの変化に触れ、「学びが人生の中心である」と思えるようになりました。

――Schooへの入社を決めた理由も、そこからつながっていますか。

そうですね。人生の中心にある“学び”を活動のど真ん中にしたい、どこで実行できるだろうと探して出会ったのがSchooでした。

「世の中から卒業をなくす」というSchooのミッションには、「未完成力」に通じるものがありますよね。前に進む営みを面白がる力が大切だなと思ってきたので、「学びには卒業がない」というメッセージに強く共感しました。

――Schooでの業務内容や役割、これまでの取り組みを教えてください。

当初はマーケティングや営業など事業部門の責任者をしつつ、人事部門も管掌し、人事・評価制度の見直しなど、組織づくりを担っていました。

評価制度づくりでは、Schooが大切にしている「学習・変化・尊重」というフィロソフィーに向き合える仕組みを作ろうと、評価シートの見直しを手がけました。

他にも、仕事を楽しめる環境づくりのために公園で「青空ミーティング」をやったり、横のつながりを作ろうと部署横断の学びプロジェクト「Schoo&Me」という企画を実施したり。

――そうした組織づくり、チームづくりへの思いはもともと強かったのですか。

環境づくり、仕組みづくりによって個人が変わっていく姿を見るのが好きなんだと思います。自分と接点を持った人が、その後の長いキャリアを築く中で、「あのときがあったから今がある」と振り返ってもらえたら、これほど嬉しいことはありません。

「Schoo&Me」という横断の学びプロジェクトも、もっとコミュニケーションを活発にできたら、もっとみんなが働くのが楽しくなるだろうし、仕事ももっとよくなるだろうという思いから立ち上げました。学びを中心にして、社内の横のつながりを作るにはどんな施策がいいか。参加メンバーと議論するプロセス自体が楽しいし、一人では到達しえない答えにたどり着くだろうと考え、みんなで一緒に熱く議論して実行に移していきました。

高まる人材育成の優先度。CLOを社会全体で増やしていきたい

――COOに加え、新たにCLOに就任しました。どんな役割を担うのでしょうか。

担う役割はSchoo社内の人材育成・組織開発の責任者として、会社の中の学びや育成の「あるべき」を定義して、そのための仕組みを作ること。組織として”学び合う“風土の醸成もリードしていきます。

加えて社外に向けた役割として、Schooの学び合いプロセスの仕組みを外部にも波及させていき、「世の中から卒業をなくす」というミッションにつなげていくことです。

CLOは、「人が学び、成長し続けるには何が必要なのか」に特化して見ていきます。ミッションに対してSchooの従業員たちが、学び合うカルチャーを体現できているのかを問いかけていく。そのためのアクションとして、学習、育成にフォーカスしていくのが私の責任だと考えています。

――CLOは国内でも珍しいポジションです。人材育成・組織開発の重要性をどう捉えていますか。

労働人口が減り、生産性向上が必須になる中、人材育成の優先順位はどんどん上がっていきます。人材育成を指揮し、企業の経営戦略の一環として動かしていけるCLOは、これからの社会において絶対に必要になります。

学びを事業の中心に置くSchooだからこそ、CLOというポジションでの活動事例や発信を進め、社会全体にCLOが増えていってほしいと考えています。

――今後、挑戦したいことは何ですか。

「世の中から卒業をなくす」というミッションを実現している組織として、新しい学びの形を実験・実践していくことです。そして、グローバルにも誇れる人材育成のプロダクトを世の中に発信していきたいですね。

その一つとして考えているのが、Schooユニバーシティ構想(社内大学)。Schooでは創業以来、共に学ぶ「仲間」と「場」が大事だと言ってきました。そのフィールドとして、社内の”タテ・ヨコ・ナナメ”をつなげ、さらには会社の”ソト”の人たちをもつなげて、学び合いができるコミュニティを作っていく予定です。

学び続ける組織が、個人と企業の成長にとって、そして社会全体にとっても大事である——それをSchooで実践し、社外にも広げていくために発信していきたいですね。

――最後に、“学び続ける”ための姿勢、大切にしている考え方を教えてください。

学生の頃から定期的に自分のことを振り返る習慣があり、過去と今の自分がどう違っているのかを客観的に見直していました。それは学び続ける上でとても大事なことだったと思います。「不完全でもいいと思えた瞬間に変われたんだ」という気づきは、振り返りの中で見えたものでした。

また、自分を客観的に振り返りながらも、過去の成功体験にとらわれない「ゼロリセット力」も大切です。私はNEC、リクルート、Schooと、組織規模も事業内容も大きく異なる環境でキャリアを築いてきましたが、それを支えたのはゼロリセット力でした。

もう一度学び直そうとアンラーンできる人は、周りのご縁を大切にし、吸収しながら成長していけます。CLOとなった今も学ぶべきことはたくさんありますし、新たな挑戦を続けるために、これからも生涯学び続けていくつもりです。


株式会社Schoo
http://corp.schoo.jp/

MISSION:世の中から卒業をなくす
VISION:インターネット学習で人類を変革する

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