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1918年に作られた「ラブ&ピース」をテーマにしたSF映画『火星飛行』…ってあれ?第一次世界大戦のまっさいちゅうにコレを作ってたの!?

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皆さんこんにちは。SF好きなヤシロと申します。

最新、すっかり、二十世紀初頭のサイレント時代のSF開拓にハマってますが、また珍しいものを見てしまいましたよ。

タイトルはHimmelskibet。珍しいことにデンマークで、1918年に作られた作品です。

なんとなんと大正時代の日本でも、少し遅れた1920年に劇場公開されたらしく、その時の日本語タイトルは『火星飛行』!

ちょうど少女漫画でいえば『はいからさんが通る』に出てくるような人たちが行き交う、

大正帝都東京は浅草の映画座で、たまにこういうSFがかかってたんでしょうか!ハイカラさんこと花村紅緒さんもこの映画を観てたかな?

で、私の鑑賞の感想を言いますと、

特撮が、かなりのハイクオリティ!映像もなかなかオシャレで、今見ても、なかなか楽しめるSF冒険映画なのです。

まあストーリー自体は、なかなか他愛もなく、

宇宙船を発明し、火星へ飛び立った冒険家のチームが、火星人たちに歓待され、火星の高度な文明を見学し、やがては火星人の女性と恋に落ちて、彼女を地球に連れ帰ってくる、という、ラブ&ピースなホノボノSFです。

ちなみに、火星人たちの都市というのは、こういう感じ。↓他愛もないかわいいデザインですが、

エキストラの数にはちょっとビックリしたw。この時期のデンマークでは映画エキストラの人件費安かったの?画面の向こうのほうにまでゾロゾロいますね、、、。

そしてこの典雅なデンマーク映画では、

火星人は、みんな金髪碧眼の美男美女ばかり。戦争も犯罪もなく、しかも「生き物を殺すこと自体が罪!」と考える文明なので、いっさいの殺生をしない、菜食主義の文明だとか。

、、、。

、、、え?

ええー!

あれ?

ちょっと待って!

この映画が作られたのは1918年でしょう?!第一次世界大戦の真っ最中でしょう?!

あ、そうか!

デンマークって第一次世界大戦では中立国だったから、こんな映画を撮る余裕があったのか!でも、国境の南、ドイツ帝国では日々、壮絶な戦死者の山が築かれている真っ最中です!1918年っていえば春季攻勢とか第二マルヌ会戦とか、大詰めの死闘がドイツ西部戦線を襲ってた時期じゃないですか!

そうか、、、そんなときに、「殺生を嫌う高度な文明」を見学してくるというユートピアSFをねえ、、、

作られた時期のことを思うと、一気に重くなった。

残念ながら私は、この映画を使った人たちのことをほとんど知らない(なにせデンマークの百年前の映画の制作のこと、調べるのも難しい)。

だから、この映画が、

進行している第一次世界大戦への痛烈な反戦意識を込めて作られたものなのか、それとも中立国の人々が国境の向こうで起きている恐ろしい戦争のことを少しでも忘れたい現実逃避の気持ちで作ったのか、それは私には判断できませんが、

こういう、一見すると、他愛のない、大衆向けの娯楽映画や娯楽小説や娯楽漫画の中に、ふと、こういう、「世界史の年表と照らし合わせるとドキリと怖くなる重み」を感じさせる作品があるから、

どうにも大衆向け娯楽芸術の歴史というものの追跡はやめられないし、特に、SF史は実に面白い、、、!

というわけで、

作られた年代を気にしないと「他愛もないクラシックSF」とスルーしてしまうが、作られた年代と「デンマークは中立国だった」という世界史の教科書の内容を思い出すと、一気にスルーできない、それどころかいろいろ気持ちが重くなる映画、『火星飛行』の鑑賞記でした!

※ところで、デンマークのSF映画についてですが、この『火星飛行』が1918年に作られた後は、ずいぶん長いことSF映画は作られなかったそうです。で、この次に作られたデンマーク産SF映画といえば、Wikipedia情報によると、1960年代の『冷凍凶獣の惨殺』になるそうですが、、、

↑、、、って、ちょっと待って!なんだこのめちゃくちゃ、、、つらなさそうなSF映画はw!いやだなあ、また、なんとか探し出して鑑賞したくなってきちゃった!ヨシ!この、謎のデンマーク映画、『冷凍凶獣の惨殺』も、いつか、絶対に、観てやる!

こうして、クラシックSF映画史の探究に、終わりはない、、、🎥


子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!