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【紙の本で読むべき名作選#1】「失われた時を求めて」で電子書籍を越えてゆけ!

以前予告した通り、「紙の本で読むからこそ感動できる名作」というものを、私自身が「本のソムリエ」となったつもりで紹介する連作を、これより始めたいと思います!

その一番手として、いきなり超ハードコアなものを出しても良いでしょうか!?

そもそもよほどヘンタイ的な読書好きでもないかぎり、この小説は第1章の読破すら困難だろう、というほどのオオモノが、本作「失われた時を求めて」です!

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私見としてはこれこそが人類史上最強の小説であり、テーマは究極の「生への讃歌」であり、アルベルチーヌこそ世界文芸史上最高のヒロインであると思っていますが、いっぽうで最初から最後までちゃんと読み通した人は世界に数人ではないかと思うくらいの難読書であることも確か。

※偉そうに言っている私も、さすがに『ゲルマントの方へ』と『ソドムとゴモラ』は、あまりの冗長さに飛ばしてしまいました。。。

私はこの小説を初めて読んだのが大学生の時で、それから何度も挫折してはまた読み直し、を繰り返し、ようやくここ数年で「途中の巻を容赦なくスキップしよう」と諦めた途端に「よさ」に気づいた、という次第です。ということは既に20年近く格闘してまだまだトドメを刺しきれていない作品となります。。。一生のうちに一度でも「最初から最後まで」読み通せる機会が来るかというと、いろんな意味でムリかもしれない、と予感しています。

本気でコンプリートするにはそれこそ翻訳者か研究家になって、一生かけて仕事として付き合うしか手はないんじゃなかろうか、とも。

というわけで、以下、読み方のアドバイスです。

・コンプリートは最初から諦めましょう!
・気に入った章だけを読み、苦しいところは章単位でスキップしましょう!
・特に序章「コンブレー」の次に控える章「スワンの恋」は最初の挫折ポイントと思います。これは飛ばして、「コンブレー」の次は「土地の名、その名」の章に行ってしまっても物語の理解には問題がないことをアドバイスとしてお伝えします!(むしろそのほうが時間軸はわかりやすくなるかも)
・そうやって飛ばし読みしつつ、いったん最後までいきつき、「あ、こういう小説だったのか!」と全貌を掴んだら、また気になった章だけをピックアップ読み。これを繰り返しましょう!
・飛ばした章は「いつか年齢を重ねると面白いと思えるようになる日が来るかもしれない」とおおらかに構え、熟成させておきましょう!
・そうやってたぶん一生涯の付き合い方をするべき小説です!

翻訳としては光文社文庫のものがオススメなのですが、残念ながら2019年9月現在、まだ完結していません。

最終巻までの翻訳が揃っているものとしては、私の好みとしては集英社文庫版をあげておきます。

また解説本としては、以下の『プルーストによる人生改善法』が、洒脱な味わいでオススメです。『失われた時を求めて』の作者であるマルセル・プルーストという風変わりな人間のことが、めちゃくちゃ好きになってしまう本です。

最後に、裏ワザ的にですが、「失われた時を求めての面白いところだけ知りたい!」という方には、以下のマンガがオススメです。「『失われた時を求めて』をマンガにできるわけがないだろう!」と思っていたのですが、読んでみると、たいへんうまくまとめてあり、驚きました!特にヒロインのアルベルチーヌの魅力をうまく描ききっています。

それにしても、この「失われた時を求めて」という小説、どこがそんなにいいのか、と聞かれると難しいのですが。。。

私なりに言えば、「20世紀初頭のお金持ちのお坊ちゃんの、実に平凡な人生が描かれているのに!そして、初恋の思い出とか、夏の海水浴の思い出とか、親友との出会いと別れとかいった、社会にも歴史にも何にも関係ないプライベートな事件ばかりが出てくるのに!それらをよくよく探求すると、平凡な人生のひとつひとつの事件とは、こんなにも豊穣で愛くるしくて、神秘的に見えてくることなのか!」という感動となりましょうか。

そういう意味では、物語そのものよりも、「我々一人一人の人生、一見平凡に見えても、本来はそれぞれひとつひとつが大河小説になり得るくらいに豊かな深みをもったものなんだ!」という気づきを与えてくれる本という紹介が正しいでしょうか。「どんなファンタジー小説よりも一人の人間の平凡な現実の人生のほうが物語としてはスゴい!」、この気づきこそが、プルーストからの最大の贈り物ではないでしょうか!

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