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「そんなにフィリパ・ピアスを読んでほしいなら自分で全エピソード解説付オススメ記事を書けばいいじゃないか」そうですね、はいスグに!

先日、以下の記事で、ジュニア層向けのホラー小説というならフィリパ・ピアスをぜひ復刻出版してほしい!という話をしましたが、

ここでひとり慨嘆しているだけじゃなく、日本でもファンが増えてほしいと思ってるなら、しっかりオススメ記事にして宣伝しなくちゃ、SNSやっている意味ないですよね

と思い直しまして、さっそく!

フィリパ・ピアスの『幽霊を見た10の話』について、細かく、アツく、語らせてください!

序・そもそもフィリパ・ピアスって誰?

児童文学の超超超名作『トムは真夜中の庭で』を書いた人です。『トムは真夜中の庭で』は学級文庫の定番なのに読んでいない人が多いが、読まずに大人になった人は損してると思う。

今回紹介するのは、その著者が1970年代に出した、『幽霊を見た10の話』。

本書は10個の短編ストーリー集となっているのですが、以下ではその全10作品の逐一紹介をさせていただきます!本邦初ではないかもしれませんが、note上では初と思います。たぶん。

第一話・影の檻

その土地は、「ホイッスラーズヒル」と呼ばれていました。街の人々は「昔、ホイッスラーという名前の人が住んでた丘なのだろうな」くらいにしか地名の由来を考えていなかったのですが。

ある夜、学校の校庭に忘れ物をとりに忍び込んだ少年が、恐怖とともにその本当の意味を知ることになります。

※好きすぎる作品なので、私の中でのイメージを挿絵にしてみました↓

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「夜の校庭のジャングルジム」が、隠れ場所としてのキーになる、そのイメージ感覚が秀逸!

たしかに自分も子供の頃、怪物に追われて公園の遊具の影に隠れるものの今にも見つかりそうになるという悪夢のパターンがあった。その夢の風景のままの怪談。

それにしても「夜の学校に忘れ物を取りに行く」というシチュエーションは東洋西洋を問わず「アヤシイモノとの遭遇フラグ」なんですねー。

第二話・ミスマウンテン

子供の頃、田舎のおばあちゃんの家に一人で泊まりに行くのは楽しかったけど、夜、寝るときに怖くなるのが嫌だった」という経験の持ち主なら、この主人公の気持ちはわかるはず!

最後は世代を超えた成長物語に収斂します。この作者は怖い話で始まっても、どこか、いつも、視線があたたかい。

第三話・あててみて

宮沢賢治あたりのファンタジー物語を想起しました。子供にだけ見える「ふしぎなともだち」系のオハナシ。

第四話・水門で

第一次世界大戦に出征したはずの兄弟がなぜかそこに?!その影が消えた後、前線からは戦死通知が送られてくる・・・。

日本では太平洋戦争の時代を背景に類似のゴーストストーリーが多くありますが、同じ構造の作品であることに、西洋東洋を問わない死者への弔いの気持ちを感じる。第一次世界大戦におけるイギリスの若者の死亡率を知っている人ならばなおさら泣ける

第五話・お父さんの屋根裏部屋

妖怪話なのか、幽霊話なのか?

と思って読んでいたら、父と娘の世代を超えた「共通体験」と、そこから生まれるキズナの話だった。

そういえばフィリパ・ピアスって、『トムは真夜中の庭で』もそうですが、子供が大人(あるいは老人)世代の因縁やワダカマリを解いて、ともに何かを克服し成長するという、「世代のギャップをこえたキズナ」テーマが多い気がする

第六話・ジョギングの道づれ

嬉しいくらいにド直球なゴーストストーリー!

このタイトルと、このオープニングと、この家族関係の登場人物とが揃えば、まあ、オチはそうなりますわな。奥ゆかしい話が多い本書の中で、逆にこう堂々と「出たー!!」ときてくれる本作にとても愛着を持っています。

ジュニア向けとは言え、ホラー短編集となればやはりひとつくらいは、こういう打ち出しのよいゴーストストーリーがなくちゃ!待ってました!

第七話・手招きされて

これもド直球ですが、どちらかといえば「幽霊屋敷」物語の伝統か。それにしても、西洋東洋を問わず、「見知らぬ家の庭に飛び込んでしまったボールを取りに行く」というシチュエーションも、これまた「アヤシイモノとの遭遇フラグ」なんですねー。

第八話・両手をポケットにつっこんだ小人

直接的描写ではないとはいえ、ジュニア向けだからといって容赦のない血液量に笑った。これは変種のモンスターホラーというところですかね。

どうでもいいことながら、この物語に登場するアフリカからのお土産の怪しげな人形、実は恐ろしいシロモノだったという展開を含め、TOKYOディズニーシータワーオブテラーの「シリキ・ウトゥンドゥ」を連想した

第九話・犬がみんなやっつけてしまった

これもまた「子供の冒険物語が、実は世代を超えて老人の因縁を解消してあげていたのだ」というフィリパ・ピアスの得意パターン。ただし、犬がキーキャラクターになっている分、ユーモラスで軽妙な味わいになっています。

第十話・アーサークックさんのおかしな病気

最後のオハナシは、、、やっぱり、フィリパ・ピアスのオハコ、「前の世代の因縁を新世代が浄化する」パターン。この作者は本当に、こういうあったかい「和解オチ」が好きなのですね。作者の人柄がにじみ出ているような、ホッとするエンディングです。

まとめ

と、かなりの長文になってしまいつつ、『幽霊を見た10の話』について語らせていただきました。

どこかにビビッときた方はぜひ手に取ってみてください!そして私はますます、このように、自分の好きな「マイナーな隠れ名作」を紹介する活動を今後もしていきたいなと、あらためて。



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