論理的思考のススメ 思弁的思考、批判的思考

僕が企業経営のお手伝いをさせて頂く中での、主要な業務の1つが、戦略立案です。戦略立案と言うと、難しく感じるかもしれません。簡単に言えば、経営者の方が、企業や事業などを「こうしたい」という希望に合わせて、実現までのシナリオを作り、実行の方法を示す、いわば「経営者の軍師」です。

戦略を立てるうえで、論理的に道筋を示し、説明しなければなりませんが、このとき大切な考え方が、思弁的思考、批判的思考です。

僕は元々マルクス経済学派ですから、カント、ヘーゲルを勉強させられているので、思弁哲学や批判哲学は必修で学んでいますので、当たり前のような考え方なのですが、一般的には、かなり難しいようです。

・思弁的思考
思弁的思考とは、簡単に言えば、記憶や経験、人の思いなどを、全て排除し、論理的な判断だけで考える方法です。
マルクス経済学では、基本的な考え方として、「唯物史観」というものがあります。この基となるのが、「唯物論」と「弁証法」という考え方です。
これらは、「物事をモノのようにとらえ、気持ちや概念で判断しないこと」そして「物事を論理的な推論によって導き出さこと」を指します。
「思弁的思考」では、存在(物事の在り方)を、人の気持ちや感覚を排して考えます。

・批判的思考
批判的思考とは。思弁的思考に加えて、現状を是としながら、その矛盾を非とし、新たな視点や価値を見つける方法てす。
これは単に何かを否定(批判)するというものではありません。現状をありのまま捉え(テーゼ)、現状の反対(反定理)の側面を考え(命題:アンチテーゼ)、これらを統合した考え方(ジンテーゼ)を見つけるというものです。

・なぜ問題解決に哲学が必要なのか
思弁哲学(思弁的思考)や批判哲学(批判的思考)は、現代科学の基礎となった学問です。あらゆる現象、例えば、このnoteを読んで下さっている方が、それぞれ悩んでいたり、直面している問題について解決しようとする解き、自分の感覚や思い込みを排除たうえて、科学的に判断し、必要な理論と方法を、客観的に導き出さなけれなならないためです。

例を挙げましょう。
企業のお手伝いをしていると、クラウドファンディングやサブスクリプションでビジネスを行いたいという相談を受けます。これらは近年、新しいビジネスモデルとして特に注目されていますが、本当に新しいのでしょうか。

まずクラウドファンディングについて考えましょう。
SNSやビジネストピックスとして、クラウドファンディングの成功例、「200%達成」などという記事が見られます。しかしクラウドファンディングサイトを見て下さい。ほとんどのものが、達成はおろか、ほとんど資金を集められていません。

これを論理的に考えるとこうなります。

クラウドファンディングに限らず、新規事業を行うため、企業は資金を募ります。これは「株式」と同じです。
投資家は、事業の収益性を精査して、投資するかどうかを決めます。このとき、十分なマーケティングが行われているかどうかが、とても重要になります。
クラウドファンディングの場合、出資者=購入者ということになります。つまり多くの人が求めている製品かどうか、消費者から、ダイレクトに評価されていることになります。

つまり、消費者が求めているものを提供するという、「商い」の基本と何ら変わりません。

次にサブスクリプションについて考えます。
以前のnote、「成功例(体験談)が、あまり役に立たない論理的な理由」で、ロボット掃除機の、サブスクリプションの成功例の話を挙げました。

これについて、僕はこう考えました。

■ロボット掃除機の使われ方

■自動で掃除、外出時の掃除

■ロボット掃除機=自動掃除サービス

■ロボット掃除機=家庭内インフラサービス

■家庭内の一般的なインフラサービス

■電気、ガス、水道=サブスクリプション

つまり、家庭内のインフラサービスは、そもそもサブスクリプションで提供されていますから、これと類似したサービスとして提供したことで、成功したと考えられます。

Q.E.D.

つまり、多くの問題は、論理的に分析することによって、本質が明確になります。

・経営戦略と哲学(思考法)
今回は戦略が本題ではないので、戦略をあえて簡略に考え、プランニング(実現可能なシナリオ)と、条件整備(選択と集中)としましょう。

実現可能なシナリオは、簡単に言うと、将棋の先読みに似ています。

この手を打つと、相手がこの手を打つ、この状況では、今後こうなる、、、という推論、つまり演繹による将来設計です。将来の不確定要素は、批判的思考によって、新たな変化を推察(予測ではありません)をすることの積み重ねです。

またこのとき必要な条件が、経営資源の選択と集中です。
将来この条件が必要になる、だからいつから、何を、どのように準備するのか。

こうしたことを考えていけば、自ずと取るべき行動が見えてきます。

勿論、イレギュラーや事故もあるでしょう。僕自身、経験不足や、理解できない要素で、失敗も重ねました。しかし、結果的に、目指すべき道が間違っていたということはありません。


哲学は、未来を切り開きます。

この代表的(基本的な必須条件)なものが、思弁的思考や批判的思考です。

次回、批判的思考の実例を記したいと思います。

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