ロジカルシンキング 思考法とは何か
先日、CCDO(中部デザイン団体協議会)で、僕が委員を務める委員会の会議がありました。
この委員会では、デザインセミナーを開催しています。元々は名古屋商工会議所主催でしたが、現在は協議会の主催となっているものです。今年はさらに内容を充実させるため、ワーキンググループでデザイン思考セミナーの内容を検討しています。
このセミナーの特徴は、各テーブル(グループ)のファシリテーターとして、経験豊かな、様々なジャンルのデザイナーが加わり、適宜助言を行うという点です。
デザイン思考のセミナーは色々ありますが、このような内容のものはなかなか見当たらないように思います。
興味のある方は、こちらを参照して下さい。
CCDO 中部デザイン団体協議会https://ccdo.info/
この委員会の会議で、セミナーの内容を作る作業を仰せつかりました。
参加者の方に、限られた時間でデザイン思考を理解して頂くため、適切と思われる思考法や発想法を用いて、プロトタイプを検討しました。
今回は複数のフレームワークやフォーマットを用意して行いましたが、他の委員の方にも好評で安堵しました。
いくつかのフォーマットは、僕が独自に作ったものですが、実は広告デザイン専門学校、ロジカルシンキングの講義で、教材として使用しているものです。
そのことをお話すると、委員会の方から「これを学生さんが勉強してるの?」と、驚かれました。
ロジカルシンキングの講義内容は、実は僕が前任校の大学で、1年生の基礎ゼミで行なっていたものなので、僕としては当たり前に思っているので、この反応にはちょっと驚きましたが、デザインの学校の学生さんがこの内容を理解しているのはスゴイと、評価して頂きました。
ちなみにこのような思考法は、SAEKI Business Economics Laboの有志勉強会でも行っていますので、ご興味のある方はご一報下さい。
さて、このときの出来事は、あらためて「思考法」とは何かという点について考えるきっかけになりましたので、今回は「思考法」について、僕なりの考えを述べたいと思います。
・思考法とは何か
世の中には数多くの思考法が存在します。最近はブームなのか判りませんが、マーケティング思考だとか、数学思考といったものまで目にしますから、正直に言うとちょっとうんざりしているのですが。
端的に言うなら、「思考法」とはマインドセット、つまりそれぞれの分野の専門家の、考え方の癖だと考えます。
デザイン思考であればデザイナーの考え方、数学的思考であれば数学者の考え方の癖ということになるのではないでしょうか。
つまり、それぞれの専門家が、普段から物事をどのように考えているのか、ということになります。
例えば僕は経営経済学が元々の専門なので、科学的思考が染み付いています。今回のセミナーの内容を検討するにあたり、あらためてデザイン思考について学び直しましたが、このために1960年代の論文なども読みました。
このことを委員の方に話すと、「佐伯さんは論理的に理解するためにそこまでするんだ。やっぱり学者さんだねぇ」と言われました。
また友人と伊賀上野への旅行をしたとき、食事が美味しく、名古屋に比べてかなり安かったので、「消費者物価指数はどのくらいだろう?」と、無意識のうちに呟いていたことを、「経済学者さんてそんなことを考えるんだ」と、笑われました。
どんな人にも、それぞれの生い立ちや環境、専門性に基づいた「考え方」の‘癖’があります。
その中でも、一定以上の専門職の人のマインドセット、つまり考え方の‘癖’を思考法と呼ぶのではないでしょうか。
・思考法≠テクニック
ビジネス書や自己啓発(この言葉は好きではありません。Self Development=自己開発と考えています)などでは、思考法を魔法のテクニックのように扱っているように感じるのですが、こうした傾向は好ましくないと考えます。
なぜなら先にも述べたように、思考法はそれぞれの分野の、専門家のマインドセットだからです。
マインドセットは、それぞれの分野を追求する過程で身につく考え方であり、その考え方を必要とする背景や、訓練なしには、なかなか身につかないものなのではないでしょうか。
例えば僕がデザインの学校でロジカルシンキングの講義をするとき、僕の経験(主に失敗談)などを、事例として話します。勿論、デザイナーを目指す学生さんであって、社会科学者を目指しているわけではないので、過剰に教えてはいけないと考えています。だから、デザインの業務において、論理的に考えた方が良いシチュエーションや事例を基に話します。それは学生さんが、論理的なデザイン思考を身につけるべきだと考えているからです。
同じように、有志勉強会は経営者の方が多いことと、僕の勉強会を好んで参加して下さっているので、事例なども、その立場に合わせたものにしています。
世の中には、「万能」なものはありません。専門性が高くなるほど、個別の知識や経験が必要になるからです。
思考法も同じなのではないでしょうか。
単に思考法を学んでも、良い結果には結びつかないのではないかと思います。
みなさんが直面する問題について、どのような専門家の視点が必要なのか。
自身に必要な「視点」を認識することで、必要な「思考法」を選択して下さい。