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【読書録】『張込み』松本清張

先週に引き続き、松本清張先生の短編集のご紹介。今日は『張込み』。秀逸な作品8編を集めた短編集。このうち多くの作品が、映像化もされている。

『張込み』

刑事が、犯人逮捕のため、犯人が昔の女に会いにくるとふんで、今では別の男性の妻となった家庭の主婦の張り込みをする。昔の男と再会した平凡な主婦のせつない感情が伝わってくる話。

『顔』

妊娠させてしまった女性を殺害した売れない俳優、井野良吉が、その後、映画に出演し、注目されるようになる。井野は、被害者の女性と同席しているところを目撃された男性のことが気になって、行動に出る。

『声』

新聞社の電話交換手の高橋朝子が、間違って電話をかけてしまった先で、殺人事件が起こって、犯人らしき人物が応答した。その後、朝子の自宅に夫が連れてきた夫の会社の同僚のなかに、その声の持ち主がいた。

『地方紙を買う女』

夫のシベリア抑留中に東京で女給をしている潮田芳子が、Y県でのみ販売されている甲信新聞の購読を依頼した。その理由は、同地方紙に掲載されている小説を読みたいからだという。しかし1か月後、小説がつまらなくなったからといって、購読をやめた。小説の作者である杉本隆治は、潮田芳子の勤めるバーに客として会いにいく。

『鬼畜』

腕の良い印刷職人の竹中宗吉は、妻のお梅に隠して、8年間、料理屋の女中であった菊代を別宅に囲い、3人の隠し子を持っていた。しかし、宗吉の商売が凋落し、十分な金が渡せなくなると、菊代が本宅に乗り込んできて、3人の子供を置いていった。怒り狂うお梅が宗吉に命じたのは……。

『一年半待て』

情婦のもとから泥酔して帰宅して、生活をひとりで支える妻や子供たちに暴力を振るわれて、恐怖から夫を殺してしまった妻。世間の同情を集めて執行猶予の判決を得たが、その背景にあったのは……。

『投影』

東京の新聞社をやめて地方新聞社に就職した太市が、自転車で海に墜落して過失死として扱われた市役所課長の真相を暴く。

『カルネアデスの舟板』

売れっ子の歴史科の教授であり、教科書の印税で財をなした玖村は、追放になって田舎に引っ込んでいた恩師の大鶴に便宜を図っていた。しかし、教科書検定の方針が変わり、大鶴に教科書や参考書の執筆依頼を奪われそうになって焦ったとき、「カルネアデスの板」の話(※海で2人が遭難したとき、自分が助かるためにはあと1人を犠牲にしても罪にはならないという話)に思い至る。

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以上です。名作ばかりの短編集で、お勧めです。

ご参考になれば幸いです!

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