本に愛され呪われ翻弄される/『この本を盗む者は』感想
突然ですが皆様は、「物語の世界に入り込みたい!!!🥰」と切望したことはありませんか?
私はとっても楽しいお話を読むと、読み終わって、本とさよならするのが寂しすぎて、彼らの今後やこれからを追えないことが辛すぎて、「もういっそこの世界に住みたい…!」と願うことがあります。
特に、私が本を好きになるきっかけとなった…イギリスの小説家・イーニッド・ブライトンが書いた全寮制の学校で双子の姉妹の成長が描かれる『おちゃめなふたご』(ポプラ社)のシリーズを小学生の頃に読んだ時は、もう本当に小説の中に行きたかったです。
全寮制の学校で真夜中のパーティとかね…。めちゃくちゃ経験したかったです。笑
😀😀😀
さて。のろのろ進めている( ̄▽ ̄;)「本屋大賞ノミネート作品勝手に感想書いてみる」の企画もようやく5冊目。
今回感想を書きたいのは、本が大嫌いなのに、物語の中に何度も入り込んで泥棒を捕まえねばならなくなった女子高生の物語『この本を盗む者は』(深緑野分/角川書店)。
本好きにとって非常に夢のあるワクワクする物語でした!
本作は、本の蒐集家を曾祖父に持つ、高校に入学したばかりの深冬が主人公。
多種多様の本好きで賑わう本の町・読長町で、曾祖父は古今東西の本・23万9122冊が所蔵されている書物の館・「御倉館」を建設します。
そこは町の人が自由に本を借りられる図書館として機能していたものの、30年前の盗難をきっかけに、祖母たまきの命令で一般公開は中止され、家族しか入室が許されなくなったのです。
祖母も亡くなり、現在、御倉館は父のあゆむが管理しているものの、ある日父は入院し、シングルファーザーの元で育つ深冬は、本が嫌いなのにも関わらず、御倉館の管理を任されます。
…というのも、御倉館には、父の妹で、なんと御倉館の蔵書を全部読んだという、本を読んでる時以外はいつだって寝ている…ひるね叔母さんが住んでいたからです。
彼女は、頭は良いのに、誰かが面倒を見ないとろくに生活できない大人でした。
本が嫌いで、ついでに窓の少ない牢獄のような御倉館も苦手な深冬。
叔母さんの面倒を任されたことにうんざりしますが、ある日、叔母さんに食べ物の差し入れを持って御倉館を訪れた深冬は、とても不思議な体験をします。
いつものように昼寝をしている叔母さんの手の中に「この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる」とメッセージのメモが残されていたのです。
その瞬間、あどけない顔をした、真白と名乗る謎の女の子が現れ、御倉館から本が盗まれたから、深冬が泥棒を捕まえねばならないことを告げてきます。
どうやら、御倉館の本には全て「ブック・カース」という本の呪いがかけられており、御倉一族以外の人間が館に一冊でも本を持ち出せば、呪いが発動する模様。
物語を盗んだ者は、物語の檻に閉じ込められるらしく、深冬の暮らす読長町が、物語の舞台へと一気に姿を変えていくのですーー。
泥棒を捕まえねば街が元に戻らないと知った深冬は、様々な本の世界を、犬に変身する不思議な少女・真白と共に冒険するのですが…!?
😀😀😀
ここだけの話、私はファンタジー小説が苦手なのですが😭😭😭
本作はめちゃくちゃ面白く、一気に読み終えてしまいました。
深冬は歯に衣着せぬ発言をする、しっかりとした…でも普通の女の子です。
学校の友達といまいち仲良くなれないことに悩んでいたり、本の帝国・御倉の人間であるゆえ、色んな厄介な人たちが近づいて来たり、父親と手分けして家事をしたり、色々苦労も多い女子高生でした。
彼女が本嫌いになったのも「それはしゃあないわ…」という理由がちゃんとあって。
本の呪いが発動して、様々な本の世界を冒険することで、その傷が少しづつ癒され、時には危険極まりない物語の世界に惹かれていく様子は、とても印象的でした。
頭がお花畑の私は、「本の世界に入りたーーい!」と軽い気持ちで言ってしまいましたが…。
最初こそ、月がウインクしたり、真珠の雨が降ったり、狐を抱えて泥棒を探したり、うっとりする物語の世界を冒険していましたが。
徐々にハードボイルドの暴力的な夜の世界へ行って危険な目に何度も遭っていたので、「そうやわ…本は普通に恐ろしい物語もあったわ…ミステリー小説とか絶対ごめんやわ…」と今さらながら思ったのでありました。
本が関わる世界にも、悪い人と良い人がいて。
でも、なぜこの世に本が存在せねばならないのか。
人はなぜ物語に救われるのか…。
そんなことも考えさせられた、とってもキラキラしていて、優しく切ない最高のファンタジー小説でした。
本屋大賞ノミネート作品はやっぱりめちゃくちゃ面白いです🥰🥰
あと5冊、楽しみたいと思います😋😋😋
さゆ
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