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小説「M 愛すべき人がいて」感想

同い年のアーティスト

初めに言っておくが、私は浜崎あゆみのファンではない。

そんなあゆと私は同い年である。

1990年半ば、高校生だった私はV系と小室ファミリーに心酔し、他アーティストも包括して当時のJ-POP全体が好きでたまらなかった。

しかし、私を音楽に目覚めさせたX JAPANが1997年に解散、翌年には最も愛するhideが急逝、我が青春を彩ったTKミュージックも徐々に失速していく・・・。

hideへの深い愛を綴った記事はこちら。
【hide】長年のファンが魅力と愛を語る(1992~1994)
【hide】長年のファンが魅力と愛を語る(1994~1998)
【hide】長年のファンが魅力と愛を語る(1998~2020)

J-POPを取り巻く目まぐるしい変遷に絶望する中、

そんな私を救った女神は、1998年にデビューした椎名林檎だった。

『無罪モラトリアム』

このアルバムを初めて聴いた時の衝撃は凄まじく、私は救いを求めるように彼女の信者になった。

↑本当は、一番好きな1曲目の「正しい街」を入れたかったけど、PVがないので「ここでキスして。」をどうぞ。

実は、そんな椎名林檎も私と同い年だったりする。

椎名林檎のレビュー記事はこちらをどうぞ。
【椎名林檎】初のベストアルバム『ニュートンの林檎』Disc1の曲
【椎名林檎】初のベストアルバム『ニュートンの林檎』Disc2の曲
【東京事変復活ライブ 2/29 東京国際フォーラム】セトリ 感想

私は彼女を崇拝するあまり、同時代に活躍する歌姫と呼ばれる女性アーティストたちに恨めしい感情を抱き、「なんで彼女たちより林檎ちゃんが売れないんだろう」とばかり思っていた。

そんな反発的な思いは、浜崎あゆみにも向けられた。

お人形のようなルックスは美しいと思ったが、自分を「あゆ」と呼ぶのにイラッとしたし、鼻にかけた声も好きではなかった。(ファンの人すみません)

『M 愛すべき人がいて』を読もうと思ったきっかけ

2019年、浜崎あゆみのシンデレラストーリーを元にしたフィクション小説『M 愛すべき人がいて』が、その全盛期から約20年の時を経て出版された。

そのニュースを聞いた時も、読もうという気は起こらなかった。

ではなぜ、2020年の現在、なぜこの本を手に取ったのか。

・・・それは、夫に勧められてなんとなく観た同名のドラマがめちゃくちゃ面白かったから。(笑)

ドラマにすっかりハマッてしまうと、あゆのリアルストーリーとドラマの答え合わせがしたくて、この中間的存在とも言える小説『M 愛すべき人がいて』を読んだのだった。

歌姫の知られざる苦労

私が浜崎あゆみについて知っていたのは、福岡出身なこと、売れないアイドル時代に「未成年」などのドラマに出ていたことくらい。

その他の知識はゼロだったのでこの小説やドラマを見て新たに知ることもたくさんあった。

・幼い頃父親が蒸発し母と祖母との3人の家庭で育ち、家計を支えるため小学生の時のスカウトをきっかけに芸能活動を始めたこと。

・中学卒業後家族で上京、東京の大手芸能事所に所属し女優やグラビア活動をしたものの、パッとしなかったこと。

・何かを求めてベルファーレに通い詰めているうちに松浦勝人と出会い、歌手にとしての才能を見出されてavexに移籍したこと。
(ドラマではひと悶着あったが、小説では円満退社後の移籍となっていた)

・デビュー後1年も経たないうちに1stアルバム『A Song for ××』がオリコンチャート1位を獲得し、以降の快進撃ぶりは周知の通り・・・。

だが、ファンではない私にとって、そこに至るまでの彼女の苦労は知る由もなかった。

また売れた後も、アーティスト”浜崎あゆみ”のイメージを守るためにプライベート”浜崎歩”を犠牲にするというジレンマも知った。
(想像すればわかることだが、当時彼女を毛嫌いした私は知ろうともしなかった)

松浦勝人との禁断の恋

この小説、およびドラマの一番の注目すべき点は、浜崎あゆみとavex創業者・松浦勝人とのラブストーリーだろう。

二人の交際は1999年週刊誌でスッパ抜かれていたようだが、私は今回の小説で初めて知った。

「あのMAX松浦か、ちょっとキモイなぁ。」というのが初めに思った正直な感想・・・。(松浦氏ファンの人いたらすみません)

15歳年上でも、ドラマの三浦翔平みたいなイケメンだったらこうは思わなかったんだろうけど。(ひどい)

でも小説を読んでみて、今まで芸能界で芽が出なかった自分の才能を見出し、トップアーティストにまで押し上げた恩人だったら、惚れてしまうのは自然な流れなのかもしれない。

彼女の場合5歳の時に父親が蒸発したと聞くし、父親の愛情に飢えている女性が年上の男性に惹かれる気持ちも理解できる。


どこまでがリアルでどこからが創作かはわからないが、小説の中のあゆのセリフが、私の胸を突いた。

「最高のシンガーになって(中略)、あゆはマサを喜ばせたい。でも、いつか、もう少し時間が経ったら、あゆはマサと、マサの子供たちだけに過ごすお母さんになりたい」

そっか、あんなトップアーティストでも平凡な幸せを望むんだ・・・。

セレブなイメージの彼女が、「好きな人と結婚して、子どもを産んで、幸せな家庭を築く」という夢を持っていたのが、意外すぎる。

でも父親不在の不遇な家庭環境を思えば、そんなささやかな願いを持つことも頷けた。


2011年と2013年の2回、浜崎あゆみは外国人男性と結婚をするがいずれも破局を迎え、2019年の年末に極秘出産し、翌年の元旦に未婚の母になったことを発表。

そして、人生で一番好きな相手だったであろう松浦氏とは、現在でもビジネスパートナーとして良好な関係を築いている。

↑ 2019年の松浦氏のtwitterより。冗談で壁ドン撮影できちゃう関係。

「松浦勝人と結婚し、幸せな家庭を築く」という夢は破れたが、彼女が選んできた道のりは、結果的に幸せだったのではないか

なんでそれがわかるかって・・・!?

なぜなら、私はあゆと同い年の女性だから。

歌姫とプロデューサーといえば

「歌姫とプロデューサーの恋」と聞いて一番に思い浮かぶのは、やはり華原朋美と小室哲哉カップルだろう。

2020年復帰した小室哲哉の記事はこちら。
【小室哲哉復帰】乃木坂「Route 246」&TKの偉業を振り返る

TKミュージック好きの私はもちろん朋ちゃんも大好きで、二人の恋を心から応援していた。(華原と小室の年齢差は16歳だったけど、小室さんはカッコイイからアリ。←ひどい)

↑1996年リリースのアルバム『LOVE BRACE』より、同名曲「LOVE BRACE」。シングルカットもされた。

二人のラブストーリーを閉じ込めたアルバム『LOVE BRACE』がダブルミリオンという異例のヒットを出したことからも、日本国民の多くが二人の恋を温かく見守っていたのは間違いないだろう。

でも、二人の蜜月関係は長くは続かず、小室さんにフラれた後の朋ちゃんの不幸っぷりはみなさんご存じの通り。

そう思うと、交際時から浜崎あゆみがセルフプロデュースできるように導いた松浦氏は、賢明で責任感のあった人だといえる。
(もちろん、歌姫それぞれの生い立ちや性格を思えば、男性側だけの責任とはいえないけれど)


公私ともに小室から完全に離れた華原朋美は、99年7月、小室への恨み節とも取れる「as A person」をリリースした。(オリコンチャート6位、約30万枚のリリース)

なんとこの曲のプロデュースが松浦勝人なのである。

松浦氏は小室ブームを作り上げた立役者だったが、色々あったようで97年前半に小室哲哉と決別している。

こういったエピソードを聞くと、芸能界ってつくづく業の深い世界だなと思う。

総論

話は脱線してしまったが、小説『M 愛すべき人がいて』の総論はこちら。

・あゆ、松浦さん、お疲れ様でした。音楽業界大変だけど、これからも頑張って!!

・今まで毛嫌いしてたけど、浜崎あゆみの曲をちょっとは覚えて、カラオケで歌ってみようかな。

・朋ちゃんと小室さんの恋愛小説とドラマも見たい。


日本の音楽界を盛り上げてくれたみなさんが、元気で幸せに生きてくれたら、私はそれだけで嬉しいです。

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