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マルタのルームメイト(フランス恋物語84)

Malta

「フランス語が多少話せても、英語が話せないと意味がない。」

そう痛感した私は、フランスのワーホリ期間中に、ヨーロッパ圏内での英語の短期留学を考えるようになっていた。

普通なら、フランスの隣国であり、英語の本場であるイギリスを選ぶだろう。

でも、なぜかこの国に惹かれることがなく、どうしても行きたいと思えなかった。

そんな中、他の候補地を探してみると、アイルランドとマルタが出てきて、私は地中海に浮かぶ、かつてイギリスの植民地だったマルタ島に注目した。

【Republic of Malta】(マルタ)
イタリアのシチリア島の南に位置し、面積は316km2で、東京23区の面積622.99km2の約半分の大きさである。
1964年9月21日、英連邦王国自治領マルタ国(State of Malta / Stat ta' Malta)としてイギリスから独立、さらに1974年12月13日には、君主制から大統領制に移行し、イギリス連邦加盟のマルタ共和国となった。
2004年5月1日に欧州連合(EU) に加盟した。
通貨はユーロ、首都はバレッタである。人口は約40万人
言語は、マルタ語英語が公用語である。
また1934年まで公用語であったイタリア語もかなり使用されている。

温暖な気候、物価の安さ、治安の良さ、遺跡など観光地にもこと欠かない・・・という理由から、私は留学先をマルタに決めた。

ただ、現地の人はマルタ語も話すし、彼らの英語はマルタ訛りがひどいらしい。

どちらかというと、「本気の英語学習者というより、バカンスがてらにヨーロピアンが行くところ」・・・という留学情報サイトに書いてあった。

「とにかく英語圏で生活して、英語の語学学校に行きたい。自分の気に入った国で観光もしたい。」という思いが強かった私は、それで良かった。

「帰国は10月31日」と決めてたことから、マルタ留学期間は直前の10月11日から25日までの2週間にした。

from Paris to Matla

10月11日、パリAM11:45発のフライトで私はマルタへ向かった。

飛行機の中で、私はこれから始まる2週間の留学生活に思いを馳せた。


一番気がかりだったのは、学校が用意するアパートのルームメイトのことだ。

そのアパートは、リビング・バス・トイレ共用で、寝室だけ別という2~3人用のシェアルームが基本だった。

プライベートを重視したい私はシングルルームを希望したが、日本の仲介エージェントは、「シングルルームは埋まってしまったので、二人用の部屋しか残ってません。」と言われ、諦めざるを得なかった。

しかも日本と違い、欧米のシェアルームは男女分けずにランダムに振り分けられ、同室になる可能性もあるという。

「彼氏でもない男の人と、ルームシェアなんて絶対イヤだ!!」

私は、ルームメイトが女性であることを心から祈った・・・。

Apartment

マルタ空港には14:20に着いた。

移動時間の短さ、同じEU圏なので出国・入国審査もない、通貨は同じユーロ・・・。

こういう時、パリで暮らしていると気軽にヨーロッパに行けていいなと思う。

空港では、学校が用意したドライバーがゲート前で待っていた。

彼の運転する車に乗りこみ、私は今日から住むアパートへ移動した。


アパートに着くと、ロビーで女性スタッフが出迎えてくれた。

「Hello. Nice to meet you. I'm Reiko.」

とりあえず無難な英語で挨拶をしてみる。

スタッフは笑顔で「ようこそ。部屋に案内するわね。」と言った。

アパートは3階建てで、私の部屋は2階にあった。

彼女は部屋の説明をして鍵を渡すと、「ドアはオートロック式だから、外出時は気を付けて。」と言い残し出て行った。


私は自分の部屋をぐるりと見渡した。

築年数は浅くて綺麗で、白を基調としたシンプルな内装は良かった。

バスルームの洗面台を見ると、髭剃りがあるのを見付けてがっかりした。

「なんだ、男か・・・。」


荷解きを終えるとアパートを出て、周辺を散策してみた。

私が通う語学学校はアパートから5分の距離にあることがわかった。

たまたま近くにあったスーパーも見付けたので、そこで夜の食材を買った。

街の景色は雑多な感じだったが、10月に入ってもまだ南国の空気を感じられたのは嬉しかった。

Roommate

30分後、自分の部屋に戻り玄関の鍵を開けようとしたが、鍵が壊れていて開かない。

「初日から使えない鍵を渡されるなんて、運が悪すぎる。」

失意の気持ちで打ちひしがれていると・・・内側からドアが開いた。

「Hello?」

中から、FACE BOOK創業時のマーク・ザッカーバーグに似た男の子が出てきた。

「この子がルームメイトか。」

私は英語で挨拶した。

「Hello. I'm Reiko.

I'm your roommate from today.」

すると彼は人懐っこい笑顔になり、「Come in!!」と中に案内してくれた。


リビングに通されると、「僕の名はヨハン。よろしくね。」と彼は言った。

「あぁ・・・男の子だけど、すごく感じの良さそうな子で良かった。」

私は、ルームメイトが爽やか好青年で安心した

また、彼には大変失礼なことなのだが、一目惚れレベルのイケメンではないのもちょうど良かった。

「何か飲む?」

彼が冷蔵庫を開けて見せたので、オレンジジュ-スをいただくことにした。

Johan

私たちはソファに座って、お互いの自己紹介をした。

ヨハンはオランダ人で、20歳の大学生だと言った。

3ケ月コースを選択していて、9月から11月の間ここに滞在するのだという。

私は、彼の英語の発音が凄く綺麗なことに驚いた。

「オランダ人って英語が上手いって聞くし、きっと彼は上級クラスなんだろうな・・・。」

私はフランス語が出そうになるのを抑えながら、「え~と、英語ならどの単語になるんだっけ?」と思い出しながらゆっくり自己紹介をした。


彼はレディファーストで、キッチンやシャワーの利用時間は私の希望を優先してくれるという。

渡された鍵が使えないことを話したら、「このアパートの管理は学校だから、明日受付で言ったら、新しい鍵と交換してくれると思うよ。」とアドバイスをくれた。

彼の優しさと誠実さに、私はますます好印象を持った。

ヨハンと話していていると、彼からは清らかなオーラが漂っていて、まるで修道士のようだと思った。

「この人となら、異性を意識することなく共同生活ができそうだ」と、私は安堵した。


その夜、日本から持って来たノートPCを使ってみたが、インターネットが繋がらない。

「おかしいな。仲介エージェントは『アパ―トでネットが使える』って言ってたのに・・・。」

私はヨハンに相談しようかと思ったが、遅い時間なので今夜はやめておいた。

Orientation

授業は9時開始だが、初日はオリエンテーションがあるので8時に登校するように言われていた。

受付に行くと、昨日マルタに来たばかりで今日から授業がスタートすること、渡された鍵が使えなかったことを伝えると、スタッフは新しい鍵と交換してくれた。

「さすがにまた使えなかったりしないよね・・・。」


そして、オリエンテーション用に用意された部屋に通され、今日入学の生徒たちと一緒に授業などの説明を受けた。

周りにいる10人くらいの生徒を見渡すと、予想通りヨーロピアンがほとんどだった。

私のようなアジア人からすれば、ヨーロッパ圏の話者は英語なんて簡単だろう、彼らはきっと上の方のクラスなんだろうなぁと思ったりした。

最後に、スタッフに「レイコはClasroom8に行ってください。」と指示された。

ここにいる生徒たちでClassroom8と言われた人はいなくて、「予想通り、自分のクラスは下の方だろう」と思った。


オリエンテーションが終わるとClassroom8に移動し、空いている席に着席した。

今日から2週間、私の新しい学校生活が始まる・・・。


初日の鍵といいネットの接続不良といい、このマルタ生活はトラブルが続き、私を色々と悩ませるのであった。


ーフランス恋物語85に続くー


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