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父から娘へ「最後のプレゼント」

認知症の父が、窓越しで泣き出した。

介護施設に入所している父。今年の2月まで、私は頻繁に施設へ足を運んでいた。しかし、感染症のことで面会自粛になる。夏になると、1ヶ月に1回だけ窓越し面会が可能になり、久しぶりの再会だった。

今回は、母と旦那と私の3人で会いに行った。私達の姿が見えるなり、父は泣き出した。私のこと、娘というのも忘れてしまったはずなのに。

窓越し面会とは、一階の空き部屋に、父と介護士の方が待機していて、私達は外から窓越しで父と面会するというもの。

父は泣きながら「ありがとう」を連呼していた。
悲しくて泣いたのではなく、嬉し泣きだった。

会いにきてくれてありがとう。
わざわざきてくれてありがとう。
遠くからきてくれてありがとう。
嬉しくて泣けてくる。

ずっと繰り返していた。
ちなみに遠くはない。

そして父は、
ごめんね。
名前を忘れたから教えて、と。

教えてあげると嬉しそう。
頭では忘れちゃったけど、心の方では覚えているのかな。懐かしいとか感じるのかな。

10分くらいの面会だったが、父が喜んでくれたので目的は果たした。

私は、認知症の父からプレゼントをもらい続けている。と思うことにしている。

☆ ☆ ☆

3年前の私だったら、自分も泣いていたかもしれません。冷静に受け止められるのは、こちらの本のおかげです。

親の「老い」を受け入れる
著者 長尾 和宏 丸尾 多重子

3年前に脳出血で入院し、認知症が一気に進行してしまった姿を見て、悲しみに暮れている時に、この本に出合いました。何度も読んで、親の老いを受け入れられました。

こちらの本では、著者の長尾和宏さんと丸尾多重子さんが語り口調で諭してくれます。

癒し効果の為に、動物の親子写真が数ページごとにあります。

また、本のはじめに、長尾和宏さんの詩が書かれています。この詩はシンプルに私の父の事を表現しているように感じます。

最後の三行だけ引用します。
本書では、さらに多くの言葉が綴られた詩です。

親が老いていくということ

それは、命の仕舞い方を、
あなたに教えてくれているということ

あなたもいつかこうなるのだと
それは最後のプレゼント

だから、今、後悔ないよう生きなさい。

と言われている気がしてなりません。
前を向いて生きる力が湧いてきました。

同じ悩みを持つ方がいらしたら、ぜひオススメしたい本です。

父の隣にいた介護士さんは、父の目を見て一生懸命に応対して下さいました。家族の代わりに介護していただき、本当に頭が下がる思いです。

介護士の皆様に感謝申し上げます。

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親の「老い」を受け入れる
~下町医師とつどい場おばはんが教える、認知症の親をよくする介護~

著者 長尾 和宏 丸尾 多重子
発行者 木谷 仁哉
発行所 株式会社ブックマン社

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