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推しのことを調べていたらTVに出た刀剣オタク

2021年3月21日(日)午後9:00~ NHK BS4Kで、「名品の来歴 幻の刀『膝丸』が語る1000年」という1時間の番組が放映された。
(2021年4月23日(金) 午後10:00~ NHK BSプレミアムとBS4Kで再放送予定。NHKオンデマンドでも配信される。)
私は、その番組に出て、江戸時代初期に太刀「膝丸」の所有者だった女性・経子のことを語った。半ば在野の研究者、半ば膝丸ガチ勢オタクとしての枠である。
オタクがオタクを極めた結果、気が付いたらTVに出ていた。何が起きているのか自分でもよくわからないが、せっかくなので、その経緯をまとめておこうと思う。


1 番組制作会社からのメッセージ

私がPixivで、NHKのBSプレミアムの番組制作会社のディレクターさんからのメッセージを受けとったのは、2020年の12月18日のことだった。

――2021年3月に、「名品の来歴」というタイトルで、源氏の宝刀「膝丸」をテーマに準備を進めている。大覚寺の方から、とてもよくまとめられている資料があると、さよのすけ様の出した同人誌「【考察】GHQと京都刀剣」を紹介されて、読んだ。ついては、膝丸について教えてもらいたいので、話を聞かせてもらえないか――。

ざっくりと、そんな内容のメッセージだった。

少し解説が必要だろう。
「薄緑(別名 膝丸)」とは、京都の大覚寺が所蔵する太刀の号だ。源氏に代々伝えられ、源義経の手にも渡ったとの伝説を持つ名刀で、重要文化財に指定されている。
2015年、ゲーム「刀剣乱舞―online―」がリリースされて以来、ゲームのファンが現実の刀剣にも興味を持ち、刀剣ブームが起きたことは、ご存じの方も多いだろう。
「刀剣乱舞」では、名ただる名剣が「刀剣男士」としてイケメンの姿で登場する。平たく言えば、刀剣の擬人化ゲームだ(正確に言えば「刀の付喪神」なのだが、説明しだすと長いので、興味がある方は今すぐ刀剣乱舞をプレイしていただきたい)。
膝丸もそんな刀剣男士の一振で、薄緑色の髪を持つきりりとした美青年である。兄の「髭切」のことをいつも気にかけている、ブラコン気味なところがチャームポイント。百振ほどいる刀剣男士の中でも、髭切と膝丸は、かなりの人気を集めている。その影響で、大覚寺の「薄緑(別名 膝丸)」も、近年、人気になっていた。

私もまた、ゲームを通じて、髭切と膝丸にはまったオタクの一人である。
「好き」の一念で、推しのことを徹底的に調べるのは、オタクの性(さが)。私は、2016年1月ころから、オタク的情熱の赴くまま、二振にまつわる伝承や来歴を調べては、PixivTwitter同人誌に発表してきた。
【考察】GHQと京都刀剣」は、そんな同人誌の一冊だ。京都・北野天満宮所蔵の鬼切丸(別名 髭切)の古い鞘には、英語が書かれた紙が貼りつけられている。この貼り紙はなんだ?と行政資料を調べていくと、戦後の京都の進駐軍の刀剣回収の実態が浮かび上がってきた――という内容の調査本である。
そして、この同人誌は、膝丸の所蔵元の大覚寺の目に入ることになった。
実は、大覚寺の膝丸の鞘にも、英字の貼り紙があったのだ。「CERTIFICATE FOR CEREMONIAL SWORD」なる付属文書も保管されていた。その貼り紙や文書の意味が、私の本で初めてわかった、というのである。2020年10月に、大覚寺の管財課課長さんからそのことをうかがい、丁寧にお礼をいただいたときには、私は天にも昇る心地だった。
「お、推しのご実家が、私の同人誌をご存じだった!? びゃあああ」
と、私の中のキモオタが驚いたり喜んだり照れたり、大変なことになったものである。このときのご縁で、その後、私の2冊の本(「大覚寺の宝刀 薄緑 その伝承と来歴」「GHQと京都刀剣 普及版」。なお、どちらも一般向けの内容で、二次創作ではない。)を、大覚寺の売店で取り扱っていただけることになった。
ディレクターさんは、その大覚寺さんの紹介で、私のことを知ったというのである。

さて、前置きが長くなったが、連絡をいただいた私は、興奮のあまり立ち上がって、部屋の中をぐるぐる歩き始めた。

これは、チャンスだ。
推しのことを世間に知ってもらう、千載一遇のチャンスが来た。

私は、5年もの間、髭切と膝丸についてゴリゴリと調べてきた。気が付けば古文書や行政資料まで紐解き、一般には知られていない来歴や伝説も知った。進駐軍の刀剣回収の話もその一例だ。
そういった情報は、刀剣乱舞ファンと共有し、それで満足していた。けれど、いつの間にか、ある夢――欲といってもいいが――が、私の中でめばえてきていた。

もっと広く、推しのことを知ってもらいたい。

推しには、こんな豊かな逸話や伝承がある。それを、私や、私のTwitterや同人誌を読んで下さる一部の方たちだけの狭い範囲で抱えて、終わらせてしまうのはもったいない。
できれば、推しの所蔵元に認知してもらって、推しの来歴の一部として、後世に伝えていってほしい。
できれば、世間の人々にも推しを広く知ってもらい、あわよくば推しに興味をもってほしい。さらにいえば、刀剣乱舞をプレイして、はまってもらいたい。

実のところ、刀剣ブーム以来、TVで大覚寺の膝丸が取り上げられる機会も、それなりにあった。
しかし、ガチ勢から見ると、その取り上げ方は浅いというか、物足りなさが残った。不正確な部分も多い。TVというのはそういうものだと割り切っているので、別にいちいち目くじらを立てたりはしないが、それでもやっぱり、「膝丸はこんなもんじゃないんだよおおお。もっと、もっと色々あるんだ!」という歯がゆさはあった。
それが、今回、天下のNHKで、1時間も、大覚寺の膝丸の来歴だけを特集して放映するというのだ。そのディレクターさんが、私の話も聞いて下さるというのだ。こんな機会がまたとあろうか。放映の4か月以上前から下調べを進めるなんて、わりと本気の企画なのだろう。チャンスチャンス、これまで眠ってきた膝丸の逸話を世間に大々的に知らしめる大チャンス到来である。
私は、「喜んで協力いたします。」とディレクターさんにお返事をした。
この機会に、推しのために、私にできることは、なんでもやろう。手間も時間もお金も惜しまない。全面的に協力する。そう決意していた。


2 ZOOM会議と取材依頼

2020年12月26日(土)午後。
私はZOOMで、ディレクターさんと、もう一人の制作会社の方と、ミーティングをした。
ディレクターさんは女性。もう一人の参加者さんも女性である。お二人とも知的で礼儀正しい方だ。
会議は、1時間ほどだったと思う。楽しい時間だった。
番組制作会社の方々は聞き上手だったし、何より、オタクは、推しの話なら何時間しても飽きないからだ。
私は、語った。膝丸の来歴、伝承、史料のありか。私がいかにして膝丸を推すようになり、どのように沼に沈んでいったか。これまで調べた資料のクリアファイルの塔をパソコンの周りに築き、その資料をめくりつつ、熱く、惜しみなく、推しのことを語った。
ミーティングの最後に、
「面白い方ですね。膝丸もですが、さよのすけさん自身にも興味がわきました」
と、制作会社の方がおっしゃった。
リップサービスだろうと軽く受け止めていたが、どうやらそうではなかったらしいということが、後でわかった。ミーティングが終わってしばらく経って、ディレクターさんから新たな申し出があったのである。

――さよのすけ様に取材できませんか。

は? しゅざい? 私に?
それはつまり、私がTVに出るということですか??
そうか……番組制作の人が「おもしれー女」と言ったら、「番組に出てみない?」に繋がるんだ。あのZOOM会議はそのための試金石だったのか。
しかし、TV……TVかー。
私は、頭を抱えた。とっさに、「断ろう」と思った。
これがラジオならばいい。だが、TVには、顔が出る。身バレの危険があった。
オタクは、身バレを恐れる生き物だ。顔も本名も職業も家族構成も秘めて、ただ、「推しが好きな一個人」としてSNSや同人誌で活動している。「推し最高ー!!ハアハア」などと奇声を上げられるのも、匿名であればこそ。社会人としてそこそこマトモに働き税金を納めている本名の自分に、推しに狂ったきわめてプライベートな奇行を紐づけられるなど冗談ではない。それでなくとも、個人情報は極力明かさないのが、現在のネットのスタンダードである。
それに、私のTwitterのフォロワーさんに「こんな程度の人か」と幻滅される可能性もある。「調子にのっている」とアンチの反感を買うおそれもあった。リスクは色々ある。断ろう。
だが、一方で。出てみたい、という気持ちもあった。
情報は、歪む。
以前、本業で手掛けた仕事が注目されて、TVや新聞で紹介していただいたことがあった。しかし、マスメディアから発信される情報というのは、どうしても多少は歪むのだ。それは、人を媒介する情報伝達の宿命といってもいい。多分、今回の「名品の来歴」の番組も、ディレクターさんがどんなに誠実な仕事をしても、不正確な部分は出てくるだろう(そして、実際、不正確な部分はあった)。
その歪みを極力抑えようとするなら、私の伝えたいことを、私が直接語るのがベストだ。
あと、単純に、膝丸と同じTV番組に出られるなんて、一生の記念である。この機会を逃すのは惜しかった。
どうしよう。どうしたらいいんだ。
私は悩みに悩んで、友人や家族にも相談してみた。
母は、不思議そうな顔をしながら言った。
「そんなん、他に、学者さんとか、その分野に詳しい適当な人はいないの?」
「えっ……(しばらく考え込む)。いや、いない、わ。多分、私が一番詳しい」
言われて初めて気づいたが、考えてみれば、膝丸について、私以上に詳しい人間は、(多分)いないのだ。いるのかもしれないが、少なくとも表には出てきていない。
ディレクターさんにも、
「さよのすけ様以上に「膝丸」に愛情をもって文献研究をされている在野の研究者はいない」
と言われたが、それはおそらく、事実である。
たとえば、膝丸が登場する物語である「剣巻」なら国文学者、河内源氏の歴史であれば歴史学者など、より細分化されたテーマであれば、その道のプロはいらっしゃるし、私のような素人の出る幕ではない。しかし、こと大覚寺の膝丸の来歴という一点突破的なテーマで見ると、広さ×深さの総量で、私以上に掘っている者は、おそらく、いない。刀剣研究者は、鑑定・鑑賞の専門家が多く、刀剣の来歴や伝承については、そこまで興味を持たないことも多い。国文学や歴史学で、大覚寺の膝丸に的を絞った研究論文なども、知らない。
つまり、私は、日本一――というか、世界一、大覚寺の膝丸の来歴に詳しい人間なのだ。なんてこったい。
私は、ゲームが好きで、推しの髭切と膝丸が大好きで、仕事が終わった後にせっせと図書館に通っては閉館時間の夜の8時9時までねばり、自由研究のノリで夢中で推しについて調べて興奮し、「わー、すごい! これ、見て見てー」とオタク村で珍しい虫を見つけた子供のようにはしゃいでいるだけのつもりだった。それが、いつの間にか、世界一とか、そんなところまで来てしまっていたとは。
何年経ってもまだまだ知らないことが多くて勉強することばかりだし、間違うこともあるし、くずし字を読むのに苦労するし、至らないことだらけだが、振り返ってみると、ちまちまと登ってきた道が結構な高さに至っていたことに、我ながら驚いてしまう。コケの一念というやつだろう。

もちろん、私が髭切と膝丸のことを調べてこられたのは、私一人の力ではない。
例えば、「名品の来歴」の中で、私は、江戸時代初期の膝丸の女性の所有者「経子」について語っているが、経子については、げんまいさんの先行研究があり、ネットや同人誌で発表されている(なお、私とは史料の解釈が違う部分もある)。
また、「GHQと京都刀剣」の元になった行政資料のありかは、道端さんが最初に見つけて、Twitterで呟いて下さった。実際に資料を調べて発表したのは私だが、ここにこんな資料があるよ、というのを見つけなきゃ話が始まらないので、道端さんの功績は大きい。
他にも、直接情報提供をいただいたり、SNSの呟きを拾ったりして、私は髭切と膝丸の新情報の手がかりをつかんできた(ネットの情報は玉石混交なので、最終的に自分で出典元にあたることは絶対に必要だが)。刀剣乱舞ファンには、「調査沼」「考察ガチ勢」などとも言われる、来歴・伝承好きの人間が、けっこういる。そういったファン同士の交流や情報交換の中で、新しい発見・知見が生まれてきたのである。ちょうど郷土史の研究が地元の愛好家の同好会の中で発展していくような状況が、刀剣乱舞界隈のネットまわりでは見られるのである。ガチ勢の中には、「この刀剣にかけては、この人より詳しい人間は世界中探してもいないだろう」という、オタク生まれゲーム育ちの野生のプロみたいな人は、けっこういる
そして、そういった考察ガチ勢を育てているのが、ニッチな調査研究を受け止めてくれる、多くの刀剣乱舞ファン達なのだ。PixivやTwitterで「こんな情報あるよ!」と発表すれば、ブックマークやいいねで反応をくれる人がいる。同人誌をわざわざ買って、感想をくれる人がいる。推しの来歴や伝承に興味を持つ幅広いファンの存在こそが、ガチ勢の調査研究の原動力になっているのだ。
私の調査研究も、以上のような土壌から生まれてきたものだった。

話を元に戻そう。
膝丸について、私より詳しい人はいない。私のその言葉をきいて、母は笑って言った。
「それなら、あんたが出ないとしょうがないやん」
「そうやね……」
「顔は、マスクしとけば、わからんよ。みんな、意外と気がつけへんって。それに、出たい気持ちもあるんやろ」
「うん」
たしかに、出たい気持ちはあった。だって、膝丸の、最推しの、1時間スペシャル番組なんだよ!
それに、私は、推しのために、私にできることはなんでもやると、決意した。なんでもだ。
身バレやフォロワー減を恐れて、推しのために自分ができることをやらなくて、どうする。ここで退いてはオタクがすたる。
心を決めた私は、ディレクターさんへの返信をしたためた。
「私へのインタビューですが、マスク着用でもよろしければ、喜んで応じさせていただきます。」
と。
それでも、往生際悪く、「本当は、膝丸のぬいぐるみを代理にしたいくらいなのですが」とも付け加えた。私はけっこう本気だったのだが、ディレクターさんにはスルーされた。当然であろう。同じNHKの「ねほりんぱほりん」なら、ぬいぐるみでいけたんだけどなー。ちっ。

ともあれ、こうして私のTV出演は決まったのである。


3 撮影

2021年2月7日(日)。大阪府内某所で取材が行われた。
場所は、私の自宅の近くの貸会議室。曜日も仕事が休みの日にしてもらえた。こちらの都合に配慮していただけて、ありがたい。
なお、無償で協力する気満々だったのだが、後日、謝礼支払いの申し出があった。推しの話をしてお金をもらっていいのだろうか。いただくけど。

事前に、簡単な質問予定が送られてきたので、今までの資料を見返したり、ファイルを整理したりして、知識の確認と準備をしておく。
話す内容が一番大事だが、TVで刀剣乱舞ファンとして紹介される以上、ファンのイメージをあまり損なわないよう、見た目にも気を配るべきだろう。知的で爽やかな美女になりたかったが、素材が私では無理な相談なので、せめて「まともそうな人」に見えるよう、仕事用の黒と白のきれいめブラウスを着た。ボトムは、スーツではカタすぎると思ったので、フェイクレザーの黒のロングスカートで抜け感を目指す。黒と白は、刀剣男士・髭切と膝丸の衣装のテーマカラーでもある。マスク、アクセサリー、ネイルは、「薄緑」にちなんで、差し色のグリーン系でまとめた。薄緑は、刀剣男士・膝丸の髪の色だ。オタクはすぐに推し色を身につけたがる。
当日のメイクは30分かけた。短い!とコスメ勢に叱られそうだが、いつも5分か、せいぜい15分のメイクで済ませている限界オタクにしては頑張った方なので、許していただきたい。まあ、マスクで顔が半分以上隠れるので、いくぶん気楽である。
資料用のファイル5冊を詰め込んだトランクをがらがらと引いて、いざ、撮影場所に到着である。ディレクターさんと、カメラさん、照明さんの、3人が迎えてくれた。
挨拶をして、撮影に入る。
まずは、私がやってくるシーンを撮りたいということで、外に出た(カットされたが)。ツツジの植え込みのある駅前の歩道で、高価そうなごついカメラを構えるスタッフに、通りすがりの小学生男子やお年寄りが珍しげな目を向けている。
カメラマンさんの「4Kのレンズにつけかえます」との言葉に、私はうろたえた。4K!?私を4Kで撮ってどうするんだ。4Kは、雄大な自然とか、美しい花とかを撮るためのものじゃないのか。容姿にはあまり自信がない。そんな、毛穴まで写せそうな怖いもんに収まる勇気はなかった。
しかし、私が4Kということは、膝丸も4Kだと思いなおして、落ち着きを取り戻した。推しが4Kの鮮明な画像で保存されるならば、自分が4Kで撮影されることもやむなしである。
その後は、屋内に場所をかえての撮影になった。まずは、髭切と膝丸に関する資料をまとめた、5冊の分厚いファイルを机の上に並べていく。最近は私もかしこくなって、資料をPDF化することを覚えたが、最初の2~3年は資料は全部紙で保存していた。紙資料でぱんぱんにふくれたクリアファイルは、いかに私が髭切と膝丸の調査に血道を上げていたかを視覚的に明らかにしてくれる。ディレクターさんのリクエストでファイルを持参したのは、その「映える画」のためだ。

取材は、2時間半に及んだ。TVの放映で使われたのはそのごく一部である。
ディレクターさんの質問に答える形だったが、「よく話して下さるので助かります」と言われた。取材となると、あまり言葉が出てこない方も多いらしい。ディレクターさんの水の向け方も上手だったが、やはり私を支えていたのは、膝丸だったと思う。オタクは、推しの話ならば、いくらでも饒舌になれる。不正確なことを言ってはいけないので、言葉を選ぶようには気をつけたが、推しのことを語れる喜びに、あまり緊張なども感じず、のびのびと話ができた。
後から思い返して「こう言えばよかった」と反省する点がなかったではないが(オタク特有の一人くよくよ反省会)、語るべきことはおおむね語りきって、取材を終えることができた。

4 放映

2021年3月21日(日)午後9時。
いよいよ、「名品の来歴 幻の刀『膝丸』が語る1000年」の放映である。
時間までに入浴も済ませ、パジャマ姿でTVの前に座る。
うちのTVは、幸い4K対応だ。今まではあまり4Kのありがたみを実感したことはなかったが、この日のためにうちのTVは4Kだったんだな!と、ありがたく視聴・録画した。4Kの推し!4Kの推し!
具体的な番組の内容については、これから視聴する方のために、ここでは語るまい。TVらしい誇張や省略、不正確な部分もあったとはいえ、専門家に丁寧に取材し、ガチ勢の私が見ても興味深く勉強になる好番組だった。
ネタバレにならない(予告で告知されている)範囲でいえば、膝丸が一人称で語る構成は、なるほどそうきたか!と感心した。物が語るゆえ物語。来歴を語るなら、物に視点を設定するのは、いい切り口だ。
「名品の来歴」の今後は未定だそうだが、刀だけでもドラマチックな来歴を持つ名品はたくさんあることだし、シリーズ化するといいなと思う。

そして、私の出番である。
――ヒッ。ひいい~~。私だ、私が喋ってる~~~。
いや、なんか……顔かたちは盛れていなくて、ザ・私!でしかないんだが(当たり前)、目がキラッキラしていて、私、推しのことを語るとき、こんな顔してるんだな……と新鮮な気持ちになった。特に間違ったことを話したりはしていなくて、一安心である。
幸いというか、番組では、私以外にも刀剣乱舞ファンの女性が何人か登場していた。皆さんチャーミングである。おしゃれできれいな方々だというのもあるが、何より、生き生き輝く表情が魅力的だ。推しはオタクの美容にいいというのは本当なんだな~。一見普通の女性なのに、膝丸を愛するあまり、いい感じにイカれた言動を見せる(お前が言うな)ところも意外性があって、ユニークでよい。視聴者の方々の刀剣乱舞ファンへの好感度は、彼女たちのおかげで、私一人の場合よりも、格段にアップしたものと思われた。

番組のエンドロールが流れて、私はため息をついた。

宴は、終わった。

夢がかなったなあ、と思った。

――もっと広く、推しのことを知ってもらいたい。
――推しには、こんな豊かな逸話や伝承がある。できれば、それを推しの所蔵元に認知してもらって、推しの来歴の一部として、後世に伝えていってほしい。できれば、世間の人々にも広く知ってほしい。

刀剣乱舞ファンと私が掘り起こした、膝丸の来歴。
それが、膝丸の所蔵元の知るところとなった。おそらく、これからも、膝丸の来歴として後世に伝えられていくだろう。
さらに、今回、TV番組を通じて、広く日本中の人々の知るところとなった。

嬉しい。
とても嬉しい。
夢がかなった。

手前みそになるが、この番組の後半は、私のこれまでの調査がなければ、なかったものだと思う。GHQの刀剣回収についても、ネタ元は私の本だ。
先ほども述べたが、刀剣乱舞の考察ガチ勢には、情熱の炎の中から生まれた野生のプロのようなすごい人がけっこういて、わくわくするような発見が、刀剣乱舞ファンの一部の間でひっそり共有されている。その発見・知見は、所蔵元などにもっとフィードバックされてもいいんじゃないかとも思う。マスメディアのネタ元としてもっとスポットを当てられてもいいんじゃないかとも思う。論文の参考文献になったりしてもいいんじゃないかとも思う(私の書いた同人誌「山姥切考察本」は、学術論文の参考文献になったことがある)。刀剣乱舞界隈の知識は、オタクの垣根を越えて、もっと広く共有され活用されてもいいんじゃないかと思う。
今回の私のケースが、そのひとつのきっかけになれば、幸いだ。

さて。
私の夢には、続きがある。
――できれば、世間の人々にも推しを広く知ってもらって、あわよくば推しに興味をもってほしい。さらにいえば、刀剣乱舞をプレイして、はまってもらいたい。

というわけで、さらなる私の野望をかなえるべく、ここに読者の皆様へのご案内を掲げておく。

☞「名品の来歴 幻の刀『膝丸』が語る1000年」
NHKオンデマンドで配信(単品220円)
DVD発売中(4180円)Amazon等でも取り扱いあり

☞刀剣の膝丸に興味を持たれたという方。
京都の大覚寺や博物館で膝丸(薄緑)が公開されることがある。

☞膝丸の伝承や来歴に興味を持たれたという方。
よろしければ私の同人誌をご参照いただきたい。こちらで通販ができる。
また、同人誌のうち一般向けの2冊(「大覚寺の宝刀 薄緑 その伝承と来歴」「GHQと京都刀剣 普及版」)は、大覚寺の売店でもお買い求めいただける。
Pixiv
にも、髭切と膝丸の伝承などについて書いている。
Twitterはこちら

☞刀剣乱舞に興味がわいた、という方
「刀剣乱舞」で検索すれば、ゲームアプリをインストールできる。スマホ、パソコン、どちらでも遊べる。
私の推しは髭切と膝丸、あと、山姥切国広と山姥切長義と鶴丸国永だ。名剣約100振があなたを待っている。

☞刀剣乱舞はアニメや2.5次元などのメディアミックスがさかんだ。
(追記)
なんと!2.5次元ミュージカルの大傑作「ミュージカル刀剣乱舞 髭切 膝丸 双騎出陣」が、2023年2月18日までYouTubeで無料配信されている!!
日本が世界に発信すべき舞台として、国際交流基金の事業に選ばれたのだ。すごくない?すごいでしょう!!
舞台の髭切と膝丸を、この機会に是非ご覧いただきたい。観て下さいお願いです後生ですから私を助けると思って。

そのほか、ミュージカル刀剣乱舞をまとめてご覧になるなら、月額440円で見放題のd-アニメストアがお得だ。
「つはものどもがゆめのあと」と「髭切 膝丸 双騎出陣」(d-アニメストアのものは2019年版なので、YouTubeの配信とは内容が大きく異なる)は、推しが出るので特におすすめしておく。

また、「映画 刀剣乱舞」をご覧になるのもよいと思う。私の推しは出ていないが、刀剣男士の短パンの太ももが眩しかったり(薬研藤四郎という子なのだが、この子もかなり好きだ。というか、刀剣男士は実は全員好きだ。)、豊臣秀吉がサルてめええ!だったりして、面白い。

(最後に)
ここまで読んで下さって、ありがとうございます。

どうかどうか、私の推しを、刀剣乱舞と膝丸を、よろしくお願い申し上げます。

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