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好きになってはいけない人へ。③

最初に飲みに行った時は、あれだけの罪悪感があったのに、彼の家に泊まったあの日は、全く何も感じなかった。
それより、もしかして。。。まさかね。
そんな気持ちで、わたしの心は浮ついていた。

いつも長蛇の列を作っている手相占いの小屋に誰も並んでいなくて、軽い気持ちで見てもらった年末、
“来年、結婚に繋がる縁があるよ。その人ともう出会ってるか間もなく縁があるか。”
そう言われたのだ。
ゲッターズ飯田さんの占いでは、”背はそこそこスタイルが良く顔が小さい整ったイケメンの彼と近々縁があります。”
こうきたのだ。

”....まさかね”。
だって、でも、私、この人の事好きにならないし。。

彼の家に泊まった3日後のバレンタインデーの日、私は友達といつものBarで飲んでいた。
バレンタイデー私たちは一体何してんだかねー。そんな会話していると、まだ、失恋の傷が癒えない、私を振った彼が来た。
(話がややこしくなるので、元彼と呼ぶことにする。)私より15歳ぐらい若い彼女を連れて。
胸が痛んだ。
私の存在を無視する元彼。
存在否定されてる気分になる。
ザワザワして心が隠せなくて口数が増える。
どうでもいい話に集中した。
そんな時、彼が来た。

わたしの心のザワつきを見抜いたのか
彼は友達と隣の席に座って、私達と会話をした。
その時の心情も会話も、正直覚えていない。
ただ、私は動揺を見せたくなくて、必死でみんなと話し続けた。

終電の時間も近くなり、私達は店を出た。
彼の友達が階段を降り、私の友達が階段を降り、そして、私が降り、そして、最後に彼が降りてきたその時、お尻をペン!

ひゃっ!
大きく息を吸った。

....やめれ。

なぜ、ケツ叩く。。
君は、紳士だろ。
誰かに見られてたらどーする。
なぜか私は彼の紳士ではない部分を隠すように誰にも見られてない事を確認して
ジロっと振り返った。
イタズラな顔で笑ってる。
ザワついてた心が静かになった。

この日は駅までの道のりが同じじゃなかった。
彼は、私の友達を送って行った。
私は、彼の友達と駅に向かった。

ホームでなんとも言えない心を感じながら、電車を待った。
私達がbarにいた時、年下の彼女を連れた元彼は先に店を出た。その時、私以外の皆んなとは言葉を交わし、私の目は見ないで帰っていった。
円満なお別れをしたわけじゃないんだから当たり前のことかもしれない。
でも、その態度が傷つく。
繕おうよ。もう、君の事は忘れるから、笑って私にも、”またね”って言ってよ。
とても深いため息が出た。

その時、ラインが鳴った。彼からだ。

“俺がおるから、落ち込むな。”

私はまた大きく息を吸いこんだ。
......彼は、私に呼吸をくれる。
少し、切なくなった。
そして、心に丸くて温かい何かを感じた。

それから数日して友達が
『バレンタインの日、帰りに彼にチョコを渡したんだけど、いつもなら、すぐに、お礼のラインが届くのに、なかったんだよね。。嫌だったのかな。』
そう、バレンタインの日一緒にいた友達は、彼の事を気に入っている私の友達だった。
何も返事する事が出来なかった。

“俺がおるから、落ち込むな”

ちょうどそのラインのやりとりの時だったから。

この時から、私は友達の彼についての話を一切聞かないことに決めた。
そして、遅くまで飲んだ後は、時々泊まらせてもらってたその行為も一切やめた。

私の中で彼は、
“好きにならない人”
から
“好きになってはいけない人”
に変わっていたのだ。



———- - - -

後になって、
『そういえばあの時、
“俺がおるから、落ち込むな”って、
そんなラインくれてたのにねー』
って言ったら
『俺ってそういう事、言うよねー』
って言うあなたの余裕の悪い顔に、私はいつも居心地の良さを感じてたんだよ。



つづく。



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