見出し画像

[小児科医ママが解説] 保湿✕科学的根拠【Vol.1】 保湿ってホントに大事なの?塗る量や回数の目安。

おしゃぶりといい、頭の形といい、健診で聞かれることの多いテーマを取り上げてきていますが、今回は「保湿」です。

保湿って本当にしたほうがいい?何をどれくらい塗ればいい?医学的な根拠・情報をもとに、2回にわけてみていきます。

【Vol.1】保湿って本当に大事なの?塗る量や回数の目安。
→ 今回の記事。保湿の効果と、量や回数の目安を解説しています。

【Vol.2】何を塗ったらいいか。お風呂で気をつけること。
→ 市販のものでもいいのか。処方された薬の違い。お風呂での注意点を解説しています。


たっっっっっっぷり塗ってこそ、意味のある保湿。できれば1日2回だけど、ムリせず。


赤ちゃんに保湿すると良さそうだな、というイメージは皆さんあると思うのですが、実際に効果が示された論文があります。

生後すぐから保湿剤を塗り続けることで、1歳ころまでのアトピー性皮膚炎の発症を30~50%くらい低下させるのではないか、また、場合によっては食物アレルギーの割合も低下させるのではないか、という報告があります。
(①J Allergy Clin Immunol 2014;134:824-30. ②British Journal of Dermatology 2018;178(1):e19-e21)

保湿によってこのような効果を得るには、たっぷりと塗ることが非常に大事です
外来でも、保湿剤を塗っていても全然赤みや乾燥が良くなりません・・・という方に塗っている量を聞いてみると、とても少ないことがあります。

塗る量をちょっと多くしただけで、お肌の状態がとても良くなるケースもよくあります。

具体的な塗る量の推奨は、以下です。

※以下、つらつらと書きましたが、ヒルドイドなどを販売しているmaruhoさんのホームページがわかいりやすいです。

●(軟膏やクリームなら)大人の人差し指の第一関節分。(ローションなら)1円玉の大きさ。これが、です。この薬の量を「大人の手のひら2枚分」に塗ると適量です。

●たとえば生後6ヶ月のお子さんの場合でも、お顔だけ塗る場合でも1FTU=つまり大人の手のひら2枚分に広げた保湿剤の量が必要です。
全身に塗ろうとなると、1回に使う保湿剤の量は3~4gくらいにはなります。
もし1日1回全身に保湿している場合、たとえばヒルドイド(ソフト)軟膏25gのチューブを、1週間に1本は使いきるようなイメージです。

ええいもうわからん面倒くさいわ!って人は、「塗ったあとに、ボディビルダーみたいにテッカテカになるくらい塗ってください」と伝えています。それくらい、たくさん塗ってこそ効果があります。


ちなみに、入浴後すぐに塗る!というイメージの方も多いと思います。
たしかに米国小児科学会AAPも「まだ肌が湿った状態のところに塗るほうが、保湿剤の効果はあるだろう」としています。

が、一方で、入浴後すぐに焦って塗る必要はあまりないのでは、というデータもあります。
入浴後にすぐ保湿剤を塗った場合と、入浴30分後に保湿剤を塗った場合を比べても、90分後の皮膚水分量には有意な差がなかったという研究です。(Pediatric Dermatology 2009;26:273-8.)

お子さんが動くようになってきたり、ご兄弟がいたりして、なかなか入浴後すぐに保湿剤を塗れなかったとしても、気にしすぎない材料の一つになれば幸いです。


なお塗る回数については、「1日1回よりは、1日2回のほうが保湿の効果があるだろう」という見解が一般的です(①米国小児科学会、②日皮会誌,2012; 122:39-43 など)。
ただし子どもがいると、朝も夜もバタバタ、なかなか落ちついて保湿できる時間もない、という場合も多いと思います。

ヨーロッパのガイドラインでは「最低でも週2回の保湿」という感じで、もう少しハードル低めです。(Pediatr Dermatol 2016;33:311-21.)

昨日とか今日とかそういえば塗れてなかったわー。っていう日も、あまりご自分をせめない材料の一つになれば幸いです。



今まで塗ってなかった!今日塗らなかった!でも、あせらないで。


さて、上記で紹介した「保湿によって、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーのリスクを下げられるかも」というデータは、実は「アトピー性皮膚炎のハイリスク群」の赤ちゃんを対象にした研究であることに注意が必要です。

具体的には、たとえばご両親や兄弟にアトピー性皮膚炎ガいる、という赤ちゃんだったり、そのほかアレルギー性鼻炎など何らかのアレルギー疾患を持つご家族がいる、という赤ちゃんが対象になっています。


では、こういったハイリスクには該当しない赤ちゃんに対して、どこまで保湿が効果があるのか。
これを検証した研究があるのですが、「(両親がアトピー性皮膚炎などハイリスクではない赤ちゃんに対しては、)新生児から保湿剤を使用しても、アトピー性皮膚炎は発症を有意に予防することはできなかった」という結論でした。
(Int Arch Allergy Immunol
. 2019;180(3):202-211. )

しかし、じゃあ保湿が意味ないじゃん、という話にはなりません

そもそも赤ちゃんが今後アトピー性皮膚炎を発症するハイリスク群かどうかは、生まれた瞬間に正確に分類することなどできません。

上記はあくまで一つの指標として、ご両親のアトピー性皮膚炎などをあげていますが、果たしてこれらだけで十分なのかというのは検証が不十分です。

生まれてきた赤ちゃんが今後、アトピー性皮膚炎になりやすいのかどうかなど、(現時点の医学では)正確に予測することは困難。
ということは、全ての赤ちゃんがアトピー性皮膚炎になりうるリスクが少なからずある。

・・・と考えて、やはり保湿は積極的にしても良いのでは、という見解が一般的です。


次は、保湿剤といっても何をぬったらいいのか。お肌のために、お風呂でも気をつけられること。こんなことを書いていきます。

【Vol.2】何を塗ったらいいか。お風呂で気をつけること。

(この記事は、2023年1月27日に改訂しました。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?