記事一覧
「神様のボート」江國香織著(読書備忘録)
書名:神様のボート
著者:江國香織
出版年:1999年
出版社:新潮文庫
久々に読んだ。
江國さんが書く登場人物は、自分と他人の境界がはっきりしていてそれぞれ世界を持っている。
親子であっても、恋人であっても、その境界は浸食されない。
「完璧に分かり合うことなんてできない」こと、「孤独」であることが前提で、そこがなんだか心地よい。
「神様のボート」もそうだけど、情景やこれからの予定を淡々と記さ
「よみぐすり」坂口恭平著(読書備忘録)
書名:よみぐすり
著者:坂口恭平
出版年:2022年
出版社:東京書籍
ネットで買って、忙しさにかまけて積読になっていたこちらの本。
開くと、「字、でかっ!」「文字、少な!」となった。
でも、心が疲れているとき、これがかなりありがたかった。
文字が読めないくらい疲れていたから、読める文章があることがうれしかった。
少ない文字の理由は、坂口さんのTwitter(X)の言葉を抜き出し、再構成したも
本をもって旅に出る「運慶仏像の旅」(読書備忘録)
書名:運慶仏像の旅
監修:山本勉
出版年:2017年
出版社:JTBパブリッシング
仏像と言えば運慶、と言うくらいよく耳にする平安末期から鎌倉時代に生きた仏師。
2017年に東京国立博物館で開催された興福寺金堂再建記念特別展「運慶」で見た「無著菩薩立像(むじゃくぼさつりゅうぞう)・世親菩薩立像(せしんぼさつりゅうぞう)」のリアルさに心を打ちぬかれた。リアルを通り越して神々しかった。
失礼を承知
「祖母姫、ロンドンへ行く!」椹野道流著(読書備忘録)
書名:祖母姫、ロンドンへ行く!
著者:椹野道流
発行年:2023年
出版社:小学館
はじめはネットでの連載だったかと思う。
読みだすと止まらなくて、祖母姫のチャーミングな我儘さ、孫娘の献身、ロンドンの素敵が詰まった文章に一気に惹きつけられた。
書籍になったと聞いて発売に合わせて書店に駆け込んだ。
木村セツさんのちぎり絵スコーン、表紙をめくると見える赤いタータンチェックなど、「イギリスっぽさ」が
「みるみるつながる仏像図鑑」監修: 三宅 久雄(読書備忘録)
書名:みるみるつながる仏像図鑑
監修: 三宅 久雄
出版年:2019年
出版社:誠文堂新光社
記憶力が悪すぎて読んでもするする知識が抜けるザルのような私の海馬。
色んな仏像を見て素敵だと思いつつ、時代ごとの特徴や運慶・快慶作の仏像を俯瞰したらどういう特徴があるのかなどどうにもわからなかった。
この本は、時代ごとの仏像の特徴をイラストで丁寧に解説してくれていて、書名通り「つながる」。
あの有名な
「おつかれ、今日の私。」ジェーン・スー著(読書備忘録)
「おつかれ、今日の私。」
ジェーン・スー 著
2022年 マガジンハウス
ジェーン・スーさん。
パワフルで、押しの強いタイプが苦手で書籍もラジオも避けてました。
ペンネームがいかにも陽キャ、スクールカースト上位という感じで私と真逆の世界に生きる人だと思っていたから。
が!NHKの番組出演で初めてお話しされているのを見て(聞いて)、あれ??ちょっと気になるぞと思い始めたところ、書店で偶然この本に出
「もうあかんわ日記」岸田奈美著(読書備忘録)
「もうあかんわ日記」
岸田奈美 著
2021年 ライツ社
わたしの「もうあかんわ」な怒涛の日々が落ち着き、落ち着くとモヤモヤ、そわそわしてしまい久々にぱらぱらと読み返す。
2021年第一版なので、オリンピック開催前、まだまだコロナの影響が色濃い日々のエッセイだ。
そういえばオリンピック、東京であったんだなぁ(開会式、怖いもの見たさで見たけどやっぱり怖かったなぁ)とか、各地で厳戒態勢の聖火リレ
大河ドラマに教科書副読本(読書備忘録)
NHK大河ドラマ「光る君へ」に完全に心を持っていかれている。
高校時代、日本史や古典の授業を何となく受けていた(好きでも嫌いでもなく、そもそも興味がなかった)自分が恨めしい。
「源氏物語」はかろうじて大和和紀さんの「あさきゆめみし」で履修した程度で、光源氏…マザコン拗らせ男で女に甘えすぎだ!と苦々しく思っていた程度。
1000年以上前にこんなに豊かな文章表現、生々しい人間模様が描かれていたのに
「口の立つやつが勝つってことでいいのか」頭木弘樹著(読書備忘録)
「口の立つやつが勝つってことでいいのか」
頭木弘樹 著
2024年 青土社
タイトルを見ただけで購入したが、タイトルについて解説するものでもなく、答えが用意されているものでもなかったが、うれしい誤算だった。
言葉が文脈を飛び越えてあり得ないほどの重さを持ち凶器になる今、「言葉って何だろう」から一歩踏み出し、言葉を受け取る私たちについて、そして言葉にできないものの価値や意味を改めて考えてみたくな
「永訣の朝」 宮沢賢治
中学の教科書で知った詩
「あめゆじゆとてちてけんじや(雨雪を取ってきて、、、賢治や)」のフレーズが好きで最初の3行だけ何度も読んだ。
ただ、「あめゆきとてちてけんじゃ」と思っていたな。
最後のところは、”賢治や”なのか。うろおぼえだったな。
本当に好きだったのかと問われれば私の脳スペックの問題なのでとしか言えない。
死にゆく妹と兄の静かで悲しみで満ちた部屋で交わされる言葉、そこには兄が妹を想
「ハンチバック」市川沙央著(読書備忘録)
読むのが怖い、でも読まねばならぬという妙な義務感を持ちながら数か月が過ぎた。
ようやく読み始めたが…厳しい。
ずっと胸ぐらをつかまれて「お前、わかった気になるなよ?」と言われている気がした。
これまでは、主人公の目線で共感しながら読み進め、主人公から離れたりまた戻ったりしながら、伴走するような読書をしていた気がする。
「ハンチバック」はそれがすべて否定された気持ち。
否定?というか、拒絶が近いか
「『消えたい』『もう終わりにしたい』あなたへ」(読書備忘録)
「『消えたい』『もう終わりにしたい』あなたへ」
水島広子(精神科医・医学博士)著
2023年 紀伊國屋書店
「死にたいのではなく、こんなに生きづらい人生からおりたいのです」
帯のフレーズに引き寄せられた。
そうなの!死にたいわけじゃないの。
生きづらさ、息苦しさから離れたいのです。
その手段が「死」しかないのかと追い詰められているのよ。
この一文だけで勇気がわいた。
絶対に読まなきゃいけ
「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美著(読書備忘録)
著 者:岸田奈美
発 行:2020年
出版社:小学館
3年前、岸田奈美さんの文章をきっかけにnoteという媒体を知った。
流れるようにテンポよく紡がれる言葉で厳しい状況がするすると読めてしまう。
大変な状況なのだろうけれど、同情を求めている文章ではない。
頑張る私の自己アピールでもない。
するする読み進められるけれど、エッセイでもなく、私小説でもない。
家族という一番小さい集団でいろんな難局をを
「〈弱さ〉を〈強み〉に-突然複数の障がいをもった僕ができること」天畠大輔(読書備忘録)
「〈弱さ〉を〈強み〉に-突然複数の障がいをもった僕ができること」
天畠大輔 著
2021年 岩波新書
数年前、ひょんなことで天畠さんの講演を聞いた。
介助者の方が彼の手のひらの下に手を置き、「あかさたな…」と言うと、天畠さんの手が「は」で少し引っ張るように動く。
介助者は「はひふへほ…は…」とハ行を言うと2回目の「は」で反応された。
介助者はさらに「あかさたな…」と続けサ行でまた反応、「さしすせ