「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」岸田奈美著(読書備忘録)

著 者:岸田奈美
発 行:2020年
出版社:小学館

3年前、岸田奈美さんの文章をきっかけにnoteという媒体を知った。
流れるようにテンポよく紡がれる言葉で厳しい状況がするすると読めてしまう。
大変な状況なのだろうけれど、同情を求めている文章ではない。
頑張る私の自己アピールでもない。
するする読み進められるけれど、エッセイでもなく、私小説でもない。
家族という一番小さい集団でいろんな難局をを乗り越えていく冒険譚のような勢いのある本だった。

冒険というと失礼かもしれない。
悲しいこと、苦しいことにぶつかったり、薄目でやり過ごしたり、反発したり、とりあえず避けて通ったり。
生きるって大変だけど、温かくてむかついてありがたい。
この本でいろんな感情が湧いて自分の心が面白かった。

「わたしにとって生きるというのは、がんばることではなかった。ただ毎日『死なない』という選択をくり返してきただけの結果だ」
  岸田奈美「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」

ついつい損得でいろんな選択をしてしまうけれど、損得の選択でその先に「死ぬ以外にない」の思い込みが待っていることがある。
もっとシンプルに、「死なない」選択を積み重ね、一日1回死ななかった自分にまるをつけようと思う。


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