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「神様のボート」江國香織著(読書備忘録)

書名:神様のボート
著者:江國香織
出版年:1999年
出版社:新潮文庫

久々に読んだ。
江國さんが書く登場人物は、自分と他人の境界がはっきりしていてそれぞれ世界を持っている。
親子であっても、恋人であっても、その境界は浸食されない。
「完璧に分かり合うことなんてできない」こと、「孤独」であることが前提で、そこがなんだか心地よい。

「神様のボート」もそうだけど、情景やこれからの予定を淡々と記されている文章に、登場人物の性格やささやかな心の揺らぎなどが感じられる。
そして、まあまあ大きな出来事や事件が起きたりするのに、日常として淡々と流れていく。
センセーショナルにならない。

消えたパパの帰りを待つ草子とママ。
引っ越しを繰り返すママ。
16年ぶりに娘を預かってほしいと実家に連絡するママ。

絶対にとんでもなく迷惑なパパとママ。
実際、ママは母親に心配をかけていることは自覚している。
そのことも書かれている。

それなのに、「迷惑な人」よりも「そういう人」と思わせる魅力がある。
はた迷惑を世間基準でジャッジすることに、その基準で大丈夫?と言われている気がする。


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