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「可愛くない」と言われて育った女性の「美」への考察

「美しいね。大好き。」

私にそんなことを言ってくれる人が世の中にいると思わなかった。言われる度に、幸せで胸がいっぱいになる。

彼は本当に私が美しいから言っているのかな。本当にそう思っているのかな。

時々そんなことを思う自分を、殴りたい。

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幼い頃から、私は家族から「可愛くない」と言われていた。

「白人の子は可愛いね」

「ママみたいに目が大きければ」

「誰の遺伝子なんだどうね」

「泣くともっと不細工になるからやめなさい」

そう、私は白鳥家族のみにくいアヒルの子。失敗作。物心ついた頃からその意識が脳に釘で打ち込まれたかのように強く、深く存在した。

そして天使のような金髪に、透き通るような青い目を持った子、吸い込まれそうになるくらい大きな、真っ黒な目に美しい小麦色の肌を持って生まれた子供達がわんさかいる土地で育ったことは、その釘をより深く打ち込む金槌となった。

幼い私は、他人に自分の外見以外の面で注目され、褒められるように努力した。沢山本を読んだよ!テストで満点とった!書いた絵を見て〜!ピアノ上手になったでしょ?と。

お願いだから、私の顔以外のところを好きになって。家族にとって美しくない私は、当然他人にとって美しいはずがない。当時私は「美」が何かとははっきりわからなかったが、自分は違う、ということだけは明白だった。

美しく生まれるとは、どういう感覚なんだろう。美しい人は、毎日どういう気持ちで鏡を見ているのだろうか。

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中学生になり、私は初めて世の中が「美しい女性」と定義するものに触れた。そしてそれは、メイク、ダイエット、髪型、服装という、投資と地道な努力で近づけるものだということも知った。雑誌、広告、ネットの目鼻立ちがはっきりした、しなやかな女の子たち。本物に見えなかった。

私もあの子達のようになりたい。私が美しくなれば、家族も喜ぶだろう。もっと愛してくれるだろう。誇れる娘になりたかった。

ある雑誌の特集で、モデルの体重が公開されていた。

168cm、46kg

170cm、47kg

165cmの〇〇ちゃん、43kgを目指してダイエット!

私の心の中のスイッチが入った。私もモデルと身長は変わらない。45kgくらい、目指せるわ。

身長168cmの私は、半年以内で50kg以上あった体重を40kg近くまで落とした。

それを4年間で3度も繰り返した。医者の警告、鏡に映る骸骨のような自分への嫌悪感、心配する友人の声に対する羞恥心により復活しても、痩せたときの快感が忘れられなかった。

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全ての人間が美しいのであれば、本当に美しい人間はいるのだろうか?

私はもう3年程、過酷なダイエットはしていない。これからするつもりもない。

多数の自己啓発本、セルフヘルプブログ、インターネットの記事を読み、その作者たちが唱える言葉を何度も頭の中で繰り返すことで、私は少し自分に自信が持てるようになった。外見が全てではない、ということにも気づくことができた。私には昔から、外見ではなく、彼女らが持つ心や笑顔、知性などが美しいと思い、憧れた女性は沢山いた。彼女らに対するその考え方を、自分にも当てはめて考えることができるようになった。

しかし、人間の「美」とは実際、何なのだろう。

私は花や綺麗な景色、絵画を美しいと感じる。また、自分が素敵なドレスを着たときに感じる、美しくなった気分もわかる。しかし、社会的な意味で本当の「美」が何かはよくわからない。

最近のメディアやポピュラーカルチャーでは「全ての人間はユニークで美しい!」「多様性を受け入れよう!」という文言を掲げられ、私たちは「ありのままの自分を愛せよ」と日々呼びかけられている。時にはその意識を嬉しく感じ、社会にとって大切なメッセージであると感じつつも、時によってはただの薄っぺらい、バカバカしい嘘だと感じることもある。もし全ての人間が美しいのであれば、本当に美しい人間はいるのだろうか?

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自分は美しくないと思って育つことは、一生の傷として残る。そしてその傷は、ときには美を追求する世界に対する苛立ちとして表れることもある。しかしそれはまた、自分の美しさを自分で発見できるチャンスとなることもできる。

美に対して様々な感情を持つ私だが、そんな私でも大切な人に美しいと言われると、理由はわからなくともやっぱり嬉しい。

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Bazzi の Beautiful という曲。

"Beautiful, beautiful, beautiful, beautiful angel

Love your imperfections every angle

Tomorrow comes and goes before you know

So I just had to let you know..."

リピートで流しながら部屋で考え事をしている夜、携帯の着信音が鳴った。

「可愛いね。大好きだよ。」

熱い涙が頰から手の甲へと落ちた。