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短編小説

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#学園祭

『La Fiesta ~ジャズ研 恋物語~ 20』

『La Fiesta ~ジャズ研 恋物語~ 20』

 学祭はいよいよ2日目。
 代わる代わる部員たちの熱のこもったステージが繰り広げられる様子を見ながら、MJG全体のポテンシャルが上がっていることを感じていた。
 学祭では代々、部長のリーダーバンドがトリという伝統があるため、菊田組の【菊座衛門】は今年度のラストステージと決まっていた。桜子さんと俺のバンドは、そのひとつ前の出番だった。
 「そろそろだろ。篠崎、楽しみにしてるぜ」控室でビールを飲んでい

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『The Chicken ~ジャズ研 恋物語~ 10』

『The Chicken ~ジャズ研 恋物語~ 10』

 「2日間のライブスケジュール、これにて終了です! 今年もありがとうございました!」
 トリを務めた桜子さんのバンド【唯我独尊】の演奏が終わり、観客席から拍手が響く。MCマイクを握る桜子さんが「部員の諸君、打ち上げは20分後からスタートです!」と小さくガッツポーズを作る。場内にいた部員たちは各々「おお~」と気合の入った声を上げる。
 今年の学祭はトラブルらしいトラブルもなく、無事に終わった。これも

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『Misty ~ジャズ研 恋物語~ 9』

『Misty ~ジャズ研 恋物語~ 9』

 学祭前は、いつにも増して気ぜわしい。部長の仕事は学祭運営側や学生課との折衝もそうだし、借りたい資材のピックアップもある。ある程度覚悟して先代の部長であるベースの吾郎さんから引き受けた部長職だが、なかなかどうして思い通りには上手くいかないもんだ。
 「お疲れさまです。桜子さん、飲みますか?」
 部室のローテーブルを前にして、ひとりうなだれていたあたしのところに、部室のドアが開く。オリーブドラブの薄

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