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後味を伝えられないこの1曲 その8

マーヴィン・ゲイ(MARVIN GAYE)の1曲「愛する者たちへ」(I wanna be where you are)はアルバム「アイ・ウォント・ユー」におさめられています。

マーヴィン・ゲイはアメリカ生まれのソウルミュージシャンで作曲家。1939年に生まれ、1984年に亡くなっています。モータウンサウンドというイメージがあります(諸説あり)。

「愛する者たちへ」を聞くと、曲がはじまり「さあ」というタイミングで曲がフェードアウトしながら終わります。「おやすみ=Good  Night」などと語りながら。何か違和感が残ります。

事情があります。ライナーノートにはこう記されています。

リリースされた′76年当時は、当然ながらA面、B面と分かれたアナログ盤だった。では、A面のラストは?と考えてみた場合、即座にお判り頂けると思う。そう、マイケル・ジャクソンがオリジナルの5「愛する者たちへ」(マイケルが歌ったものの邦題は「ボクはキミのマスコット」、念の為)である。愛するジャニスや子供たち(マーヴィンとジャニスの子どもたち)に″おやすみ″とマーヴィンが囁き、前半が幕を閉じるという設定は、アナログ盤ならではのアイディアだ。

とあります。なお、ジャニスとはマーヴィン・ゲイの妻です。

リリース当時はレコードのためA面とB面の切り替えを意識した録音、編集ということです。

けれども、違和感はそのようなことではないと思います。この曲を聞いていると「取り残された感」をヒシヒシと感じます。

腹が立つわけではない。焦るわけでもない。途方に暮れるわけでもない。雑踏のなかで孤独を感じるわけでもない。

「取り残された感」は「おやすみ」という言葉にあると考えます。

おはよう、おはようございます、は誰にでも使います。元気よく見知らぬ人にも。

けれども、おやすみ、おやすみなさい、は親密な人に向かってしか使わない。もちろん、飲み会などの別れ際に、元気よく「おやすみ!」と言ってわかれますが「さようなら、また明日」を言い換えているものですよね。

一度も会ったことがない、親密度のかなり低いスーパースターに「おやすみ」と言われても、ひたすらモヤモヤしてしまう。もちろん、ライナーノートが書くように家族に向けてですが、こちらの耳にも入る。

しかも、曲が盛り上がる前に「グッドバイ!」なら次への期待も高まりますが、「おやすみ」と優しく囁かれてもという気持ちになります。

繰り返し恐縮ですが私に向かってなんか言ってないのはわかるのですが。なんとも言い難く返す言葉が無いです。

マーヴィン・ゲイ(MARVIN GAYE)「愛する者たちへ」(I wanna be where you are)、モータウンレコード、アルバム「アイ・ウォント・ユー」


後味を伝えられないこの1曲

勇気がわく、元気になる、愛おしい、懐かしい、わかるよ、せつないね、に当てはまらない曲がある。モヤモヤしてしまう、不吉さを感じる、うまく枠組みにはまらない曲たち。

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