ハロー!ジャパニーズメタル その12
筋肉少女帯の「元祖高木ブー伝説」は、アルバム「サーカス団パノラマ島へ帰る」におさめられた1曲です。筋肉少女帯は1980年代初頭に活動を開始。80年代後半にメジャーデビュー。90年代後半に活動凍結。2000年代半ばに活動を再開しています。
至宝の一曲「元祖高木ブー伝説」
すべての楽器が正気を失ったようなカオスな演奏からはじまる。曲の終わりにシャウトが続きますが「Oh Yeah!」、「My Baby」ではなく「ブー、ブー」という新しいシャウト語が使われます。
曲名にもなっているザ・ドリフターズのメンバーは「間のあるおおらかな芸」を得意としています。雷様のコントも絶妙な間のやりとりの面白さがあり、ウクレレ演奏を聞いていてもメロディ以外にも聞く側にゆるい心地よさを与えてくれます。
ボーカリストはその芸風を別の次元「何もできない」という形で捉え意味づけて歌詞にし歌唱します。
その枠組みを彼女と共有し笑っていたのですが、別れが訪れてしまう。別れにあって何もできない「俺」は笑っていたドリフターズメンバーそのものであるという「自己」を自虐的に発見してしまう。しかも、テレビは近くにあるが最も遠いスーパースターの姿に。
ジャパニーズメタルで「自虐」を扱ったことに至宝さがあると考えますが、いかがでしょうか?それも、ジャパニーズメタルの先祖のイギリスやアメリカの言葉をオマージュするのではなく、70-80年代の日本社会の文脈を抽出しています。
ボーカリストは、みんながわかる「自虐」の言葉やアイコンを探してみたものの、おそらくそれは無かった、見当たらなかった。
見い出したのは彼と彼女のあいだの親密な交際の記憶。たどり着いたのがテレビ番組のスーパースターへの意味づけ。
使えるものが無いなかで自虐のアイコンを代理させて歌ったところに至宝さがあると考えます。
WIKIによると1990年に有名遊園地のエイプリルフールネタで「史上最低の遊園地」というコピーが新聞に出たくらいですから。やはり当時、自虐は見い出しがたかったし、今のようにアイコンも自虐ネタもすくなかったはずです。
ジャパニーズメタルのなかで「自己とは何か」の問いを立てて、70-80年代の日本社会の文脈で答えたところに至宝が宿ると考えますがいかがでしょうか。
筋肉少女帯「元祖高木ブー伝説」、アルバム「サーカス団パノラマ島へ帰る」におさめらた1曲
ハロー!ジャパニーズメタル
シティポップが海外から注目されています。70年代後半から80年代の日本のポップス音楽です。特徴は都会的な雰囲気です。
同時代に流れた音楽にジャパニーズメタルがあります。特徴は世界を目指す音楽です。こちらだって起源はイギリス、アメリカで洋楽志向。ブルース、ロック、ハードロック、ヘビーメタルと様式起源は異なるけれども、同じように日本語に乗せるのに苦労している。ジャパニーズメタルの至宝の曲をどうぞ。
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