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こんな時代だからこそ、鳥飼茜の漫画を読もう


ここ数日、世間を賑わせているこちらのニュース。

断言します。ありえないです。でもわたしはそういった怒りを感じるというよりかは、なんとなく納得してしまったのでした。日本ってそういう国だよね…と。

以前の記事で「お酒が飲めないから飲み会が好きではない」という話をしましたが、わたしが飲み会を苦手だと思う別の理由に「性的な被害を受ける可能性がなくはない、そして何かされても私は声をあげることができない」というのがあります。
人よりも僅かな量のお酒でもぐったりしてしまうということは、それだけ他の人より危険な目に遭う可能性も高いということ。だからわたしは、なるべくお酒を飲む環境に身を置きたくないのです。

でもこれは、「飲み会に行って自分だけお酒を飲まなければいい」という問題ではありません。居酒屋という環境は、お酒を飲んでいる男性がたくさんいるということ。そしてこれは逆差別的であるかもしれませんが、それだけ自分に危害を与える男性に出遭ってしまう確率が上がるということです。

例えば居酒屋のお手洗いとか、やっぱり利用するのは怖く思えてしまいます。実際に重大な被害を受けたことはないですが、女子トイレを覗き込んでいる若い男性複数名を見かけてお手洗いを利用するのをやめたことや、女子トイレから出たらなぜか目の前に男性がいて、声をかけられて逃げたことなどがあります(後者は本当に怖かった)。

でもこういう思いをしたことがある女性って、かなりの割合で存在しているのではないでしょうか。そして誰もがそれを「当たり前のこと」として受け止めてしまっている気がします。


実際に、犯罪まがいのことをされたことのある友人もいます。「自分が汚れた気がする」「親しい男友達ですら怖いと思うようになってしまった」「もう男の人を今後好きになれる気がしない」という友人の台詞を聞きながら、わたしは泣いてしまったのを覚えています。でもそんな本人は、もはや泣くことすらできないという。涙すら出なくなるくらい、性犯罪は人の心を枯らします。

もしかしたらこれらのわたしの考えを読んで、「自過剰乙w」「いや大袈裟っしょw」みたいに思われる方も男女問わずいるかもしれません。今回はそんな方々にこそ読んでほしい漫画を紹介しようと思います。

それは、漫画家・鳥飼茜『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』という作品。社会の性の不平等について鋭く切り込んでいる社会派の漫画です。特に『先生の白い嘘』はかなりショッキングで、目を逸らしたくなってしまうような漫画ですが、強姦が無罪になってしまうような現在、この作品こそ読まれるべきなのではないかと思います。

まずはそれぞれのあらすじをご紹介。

①『先生の白い嘘』
主人公は24歳の高校教師、原美鈴。友人の美奈子の婚約者である早藤に襲われた過去があり、なんなら現在も継続的に関係を持たされ続けている。そんな彼女の前に、「女性にレイプされた」という男子生徒、新妻が現れてー。

こちらから試し読みもできます。


②『地獄のガールフレンド』

シングルマザーの加南、独身真面目OL悠里、自由人超絶モテ子奈緒の三人が、ひょんなことから一緒に住むことになって、「オバサン問題」とか「女の人生比べ」とか、身近な「生きづらさ」について夜な夜な語るデトックス漫画。

試し読みはこちらから。


『先生の白い嘘』はときどき読んでいて気持ち悪くなってしまうような場面もある(作者自身も描いてて気持ち悪くなってしまうことがあったそう)ので、最初に読むには『地獄のガールフレンド』をおすすめします。登場人物が女性ばかりですし、一話一話が短いのでとても読みやすいです。

『先生の白い嘘』は、性の不平等の残酷さと諦めが色濃く描かれている作品で、かつ、性犯罪は男性から女性に対してのみ起きるものではなくて、逆もあり得るのだということを訴えている作品です。それに対して『地獄のガールフレンド』は、その生きづらさとか不平等に負けずに生きていこうぜ!みたいな、女の人が負ける必要はないんだよ、ということを呼びかけているような作品。テーマは通底していますが、それに対する切り込み方はだいぶ異なっているように思えます。


例えば、『先生の白い嘘』においては、レイプされてしまった女性が「レイプされた」という事実を自分でなかったことにするために、積極的にその加害者と連絡を取るようになっていき、その被害者は加害者にどんどんのめり込んでいきます。「自分は悪くない」と思い込むための行動とは言え、ものすごく虚しくて悲しい。でも読んでいると、そんな彼女の行動を「あり得ない」と言い切れなくなってしまうのが鳥飼茜のすごいところ。

それに対して、『地獄のガールフレンド』においては、ナオさんという超かわいいモテ女子がいるのですが、彼女は過去に男性に刃物で脅されたことがあるのです。それに対して他の女性が「女子やめたくなるでしょ」と言う中、「いや翌日は超ミニ履いて髪巻いて出勤したよ、だってそんな奴のために『カワイイ私』やめるのなんて嫌じゃん!」と言い放つのです。カ、カッコイイ〜〜〜!!!

そうです。「痴漢されるのはミニスカートを履いてるからだ」「痴漢されるのは女性専用車に乗っていないからだ」とかいう、「自衛しなかった女性が悪い」的な意見を頻繁に耳にすることもありますが、女性側は悪くないです。どう考えても悪いのはそこに漬け込んで痴漢をする加害者側です。自衛は確かに大事だけれど、それで自衛をしなかった女性を責めるのはお門違いなのではないのでしょうか。それに、どんなに気をつけていたって、犯罪者がいる限り犯罪は発生してしまいます。

犯罪に合わないために「かわいい自分」を捨てるなんて、馬鹿げてる。誰だって、自分のなりたい自分で生きていっていいのではないでしょうか。


これらの漫画を読んだ後は、作者のインタビューを読んで、日本社会における「性のあり方」をなるべく多くの人に考え直してもらえると嬉しいです。


わたし自身、実際に毎日生きていて、女性ならではの生きづらさを感じることはありますが、そこで「仕方ない」と黙って諦める時代は、もうとっくに終焉を迎えているのだと思います。このnoteを読んだ人に一人でも多く、社会にひっそりと横たわる性差別について、意識してもらえると嬉しく思います。



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