『美貌の絶頂期における記録格差について、とある大女優の心境吐露』

私は女優。年齢は、そうね、さすがにミニスカートは履けないくらいかしら。やだ。大女優なんて呼ぶのはやめて。ただ古いって言いたいだけでしょ。世の中、本当に不公平だわ。私はね、一番不幸な世代なの。私が若かった頃はね、そう、だから短い女の生涯で一番綺麗だった時よ。テレビはまだアナログ放送で、画質はとても荒いものだったわ。それがね、若さがピークを過ぎた頃になって、突然にテレビが綺麗になっちゃった。綿棒の先で隠せるくらいの小さなシミまで世間に堂々晒されるの。おまけに大画面よ。余計なお世話ったらありゃしない。「解像度」がどうとかって言うんだって。悪魔みたいな単語ね。ネットじゃ、私の今の写真と昔の写真を並べて、「劣化したよねー」なんて言って盛り上がってるの。ひどいじゃない。せめて同じ解像度で比べてよ。

今の若い女優の子たちが羨ましくてしょうがないわ。一番綺麗な姿を、4K画質で記録に残せてるんだから。何が一番悔しいって、これから先どれだけ解像度が高くなっても、4K画質とそれ以上未来の画質との差はほとんど無いってことよ。4Kと未来画質の差なんて、アナログ放送と地デジの差に比べたら微々たるものでしょ。結局、あの子たちは逃げ切れるの。最悪だわ。