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フランボワーズメモリー

慣れない店が苦手な僕を

君はかわいいと言って笑った


デートの終わりには

いつものカフェで

僕は決まって

日替わりコーヒー

君は季節の

ケーキを頼んで


窓際の角のボックス席

耳に懐かしいレコードに

月が昇るまで身を任せてた


静かに笑いあう

穏やかな時間が

窓の外に流れる

いくつもの季節が

少しづつ僕らの

日常に溶けていって


そして、いま

君と離れてみたら

その時間の愛しさが

身に染みて痛いくらい


僕の前に君がいなくても

コーヒーの味は

変わらないみたいだ


君の前に僕がいなくても

ケーキの味は

変わらないだろうね


君は、いま

どんな景色を

見てるのかな

どんな顔で

ケーキを食べてるの?


僕から見える景色は

いつもと変わらないけれど


隣に君がいないから

行きなれたカフェも居心地が悪いんだ


手を繋ぎたい

並んで歩きたい

美味しそうにケーキを食べる

その横顔が見たいよ


季節が変わった今日は

春のデザートを頼んでさ

君のようにそれを食べてみても


瞳の奥に何度も何度も

はじめて手を繋いだ

帰り道のこととか

並んで歩いた

公園の散歩道とか

美味しそうにケーキを食べる君の

口の端についたクリームとか

君といた季節ばかり

浮かんでは消えていって


だから、また

君と会う日まで

柄にもないけど

味わって食べることにしたよ


桜の木の下で

キスした夜の

君の味に少し

似ているような気がするから



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