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金融で貧困脱却!経済成長!~金融は意外に大切だった!?~ (要約)

〇農業信用市場
・意義

金融機関を使った融資が広まれば、経済発展に沿った効率的な資源配分が行われるようになる。つまり、金融機関をもっと利用することで、より人々の生活を豊かにすることができる。


・課題


①金融機関が近くにない
②儲ける事業とわかっていても、信用がないので必然的に利子率が高くなってしまう。
③将来のことを考えて投資や貯金をしようと思っても、自分の力だけではできない。
④家族の間でも、適切なお金の使い方でもめることがある。そのため、クローズド(閉鎖的で隠すこと)になる。
⑤マイクロクレジット制度は、資産がなくても低金利で貸し出すことができるようになったが、それですべての人が助かったわけではない。マイクロクレジットだけでは資金が足りず、インフラ整備も課題となる。

1,農村途上国の金融


途上国の農民が必要としているものが「貯蓄」「融資」(信用)「保険」「送金」と先進国と変わらない。しかし、途上国はフォーマル(民間金融機関)を頼る比率が少なく、インフォーマル(地主や商人、親戚など)を頼る比率が多い傾向にある。近年では、民間金融機関でも、低所得者が利用しやすい金融サービス「マイクロクレジット」が出てきているが、フォーマルなサービスが依然として普及していない。

2,信用制約


儲けることが分かっていても、銀行は担保がなければ融資をしてくれない。貧困な人は担保に出来る資本を持っておらず、銀行から相手の情報(性格、取り組み方)が全くわからない(情報の非対称性)ため、銀行から信用してもらえず融資を受けることができないという現象が発生している。かといって、利子率を高くして融資をしても、融資先は必然的にハイリスクハイリターン事業が集まるため、社会に普及されず、品質も落ち、多くのお金が返ってこず、銀行も損をするという結果になってしまう。
そんな現状でフォーマルな金融サービスが受けられないため、性格や取り組み方が分かりやすく、信用がなくてもお金を借りられるインフォーマル金融が人気になってしまう。

3,将来に備えて


銀行が近くにないため、集金に人件費がかかったり、貯金をしに行くまで多大な労力がかかったりすることになる。そこで、代わりに使われるのがタンス預金であるが、これは利子が全くつかず、目の前の誘惑にも負ける特徴が備わっている。そのため、貯蓄をしにくい途上国でも我慢がしやすいシステムにする必要がある。では、どうやってシステムを作るのかというと、前もって約束を設定することで自分や相手を縛り、誘惑に負けること(機械主義的行動)を防ぐようにする「コミットメント」を利用して構築すればよい。例えば、指定の被に自動手振り込みが行われるサービス、多数の人が毎回集まって資金を集め、毎回別の人に資金集中をしていくサービス(メンバー間の信頼が必須)などがある。

4,家庭内での資金の使い方に関するもめごとや隠し事


家庭内での資金の使い方は、価値観が違っている人がいるため、違うのは当たり前。傾向として女性は将来を気にかけ、母親は子供の教育に積極的な傾向がある。貯蓄の初期段階で使い方をしっかり話し合い、決定しておくことで効率の良い貯蓄を行うことができる。

5,マイクロクレジットの特徴と限界


マイクロクレジットはグループで協力して借りたり返したりすることができる特徴を持っている。そのため、一人ではできない貯蓄でもみんなで協力することで貯蓄ができるようになる。特に、子供の世話をするため現実的で長期的な視野になり、失敗や返済負荷が起こらず、借りられる機会が少なく、グループに参加しやすい女性が利用しやすい制度となっている。
一方、初期のマイクロクレジットは、機関が補助金に依存せざるを得なくなる、柔軟性がない融資や返済が借り手に重くのしかかる、最も貧困な経営者の稼ぐ力がないなどの課題がある。
農業分野では、マイクロクレジットでは中小企業にとって少額すぎる、インフラ整備や教育充実などの政策が必須であることも課題である。

6,してはいけない政策


①政府による公的信用供与
農業開発銀行が公的部門になり、低金利で公的な資金を借りられるような制度
影響→零細自作農や小作農は対象外。融資を受けた金持ちは返せなくなるなり、それが普通になる。
②政府による強制的な農村金融機関創設政策
民間銀行に農村支店を設置する。
影響→効果なし。

・解決


原則:市場の自動調整力や農民の自発性・合理性を利用した金融自由化が効果的。(オハイオ州立大学の「農村金融市場論」)※儲け優先の民間企業に任せるのではない
グループによる返済は存続したまま、連帯責任制(全員が責任を負う制度)は廃止
②返済日程の調整。(頻度を落としたり、農業が暇なときは会合を休んだりして柔軟性を持たせる
③マイクロクレジットで排除されていた最も貧乏な経営者にも優しい「パッケージ型マイクロクレジット」を導入。

▽参考文献


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