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「ひまわりの見た夢」6 終

第6章

護、静子、今日子、勉、明日香が食事をしている。

静子  「勉、しょうゆ?」
勉   「・・・」
静子  「(しょうゆを渡す)」
明日香 「・・・」
護   「予備校、行かなくていいのか」
勉   「・・・」
今日子 「今度こそ合格するって言ってたのに、もう諦めたの」
勉   「・・・うるさい」
護   「ここで働けないからか」
勉   「・・・」
静子  「今ちょっと調子が出ないだけよね。勉はやればできるもの」
勉   「・・・うるさい」
今日子 「別に歯医者にこだわらなくてもいいと思うけどなあ。あんたやりたいこととかないの?」
静子  「きょんちゃん」
勉   「・・・うるさい」
今日子 「ま、自分で考えることなんだけどね」
勉   「・・・うるさい・・・うるさい・・・うるさい・・・うるさい!」

勉、しょうゆをテーブルに叩きつける。

静子  「勉?」
勉   「うるさいって言ってんだよ!」
静子  「勉、どうしたの?」
勉   「やりたいことを言っても全然許してくれないじゃないか!」
護   「そんなことないだろう。みんなお前の歯科大進学を応援してる。歯科大に入れないのはお前の問題だ。変なことを言うんじゃない」
勉   「うるさい!うるさい!」

出て行こうとする勉。

田口  「待て!」

強い雨音。
先ほどの雨のシーンになる。

勉   「こんにちは」
田口  「こ、こんにちは」
勉   「僕、あなたのこと覚えてますよ」
田口  「こないだ会ったばかりだ」
勉   「違いますよ。十二年前にです」
田口  「え?」
勉   「駅前のファミリーレストランで明日香と二人でごはんを食べてた」
田口  「・・・」
勉   「あなた、明日香のことが好きだったでしょう」
田口  「・・・」
勉   「明日香、楽しそうにしてたなあ・・・責任も果たさずに」
田口  「責任ってなんだ」
勉   「知ってますよね。うちは代々歯医者だってこと。僕らの両親も歯医者です。僕ら兄妹は生まれたときから歯医者になることが決められていたんだ」

雨音が止む。三十年前。
懐かしいオルゴールの音。テーブルの上に置かれた折り紙。
今日子、勉、明日香が体育座りになり並ぶ。
それとは別に幼子たちを抱いている体の護と静子。

護   「この子たちみんなが歯医者になってくれたらいいなあ」
静子  「みんないい子だから、きっとこの家を継いでくれる。三人で力を合わせてこの家を守ってくれるわ。今日子、勉、明日香、それがパパとママの夢なのよ」
今日子 「私、頑張って歯医者さんになる」
勉   「僕も歯医者さんになってパパとママの夢を叶えたい」
明日香 「私も歯医者さんになりたい」
護   「パパとママの夢を叶えてくださいね」
静子  「三人とも立派な歯医者さんになるのよ」
今日子 「私、歯医者さんになる」
勉   「僕も」
明日香 「私も」
護   「嬉しいねえ、ママ」
静子  「本当にいい子たち、嬉しいわ、ねえパパ」

強い雨音。

勉   「三人が立派な歯医者になることが両親の夢、それは僕たち兄弟がずっとずっと持ち続けた夢でもあるんだ」
田口  「でも夢は変わることだってある」

勉、食事中の家族に向き直って

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