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「稚拙で猥雑な戦争劇場」3

場面3/ルバム国内・牢屋~監禁部屋

    織部が牢屋の壁を掘っている。その傍らで煙草を吸う明神。

明神  「やっぱり生きるって難しいですね。人生最後の風景がこんな場所
     だなんて。ねえ織部さん、僕は死ぬときは畳の上でね、こう孫と
     か娘夫婦とかに囲まれて『いい人生だった』とか若い嫁さんに言
     って、草木が枯れるようにね・・・それがこんなんですよ。むさ
     くるしいオッサンと二人でこんな場所で。織部さん、俺結婚もし
     てないんですよ。前の彼女もその前の彼女も『健ちゃんは結婚相
     手には向いてないんだよねー』って、こうですよ。俺だって好き
     な女と結婚すればちゃんとしますよ。そういうとこまで見える女
     ってなかなかいないんですよねえ」
織部  「ああそう」
明神  「何してんすか?」
織部  「説明したよね。掘ってるんですよ」
明神  「何でですか?」
織部  「説明したよね。これ掘りまくって、抜け穴を作って、逃げるんだ
     って。言ったよね、手伝えって。君は何一人で煙草吸ってくだら
     ないこと喋っちゃってんのよ」
明神  「あ、そうでした?手伝います手伝います。それなんすか?」
織部  「(鉄の棒)さっきの爆撃のときに拾った。ほい(渡す)」
明神  「これで?掘る?分かりました。・・・結構掘りましたねえ。もう
     お隣さんの領域ですよ」
織部  「君がくだらないこと言ってる時間が長かったってことだ」
明神  「織部さん、そういう風にネチネチいうの嫌われますよ」
織部  「黙って掘りなさいよ!」
明神  「はいはい」

    明神、能天気な鼻歌を歌いながら掘っていく。

明神  「あれ?」
織部  「どうしたの?」
明神  「なんか、空洞にぶつかりましたよ」
織部  「本当?」

    確認すると何だかとても広い空間があるのがわかる。

織部  「ちょっと中を見てみなよ」
明神  「あ、はい・・・広いっすねえー」
織部  「危なそう?」
明神  「いや、大丈夫じゃないですか?」
織部  「よし、じゃあ行ってみよう」
明神  「行きましょう。お先にどうぞ」
織部  「え?僕が先?・・・わかったよ・・・長いなあー」
明神  「いい傾向じゃないですか」

    二人匍匐前進で入っていく。しばらく進むと、百合子が監禁されて
    いる小部屋に繋がっていた。何故か着替え中の百合子と織部。

百合子 「キャー!」
織部  「あ、すいません」
明神の声「織部さん!進んで!進んで!足下が!足下が!」
織部  「ああ、ちょっと待て」
百合子 「出てって!」
織部  「はい、はい、ちょっと待ってください・・・戻って!戻ってて
     ば!」
明神  「ここまで上って来て戻れるはずないでしょう。とにかく1回行っ
     て!」
織部  「バカ!押さないで!押しちゃだめだって!」
明神  「あ、落ちる、落ちる・・・うわー!(落ちて行った)」
織部  「明神くん、明神くーん!」

    出てくる織部。穴を覗くともう明神はいない。
    百合子、着替えを終える。

織部  「明神くーん、僕を一人にしないでくれよー!(くれよーくれよー
     れよー)」
明神  「(遠くから)織部さーん!(さーんさーんさーんさーん)」
織部  「明神くん!おーい!大丈夫かー!(かーかーかーかー)」
明神  「大丈夫でーす(でーすでーすでーす)」
織部  「上ってこれるかー?(かーかーかーかー)」
明神  「無理ですー(すーすーすーすー)助けてくださーい(さーいさー
     い)」
織部  「無理ですー(すーすーすーすー)」
明神  「あ、あ、あ、ああー流されるー」
織部  「明神君?明神くーん!」
百合子 「何ですか?」
織部  「あ、すいません」
百合子 「命でも取りに来たんですか?」
織部  「命?」
百合子 「覚悟ならできてます」
織部  「いや、そういうんじゃ」
百合子 「殺すなら殺しなさい!」
織部  「違うんです」
百合子 「違う?」
織部  「そうだ!まずは深呼吸でもしませんか?それ、スーハースーハ
     ー」
百合子 「おじさん日本人?」
織部  「ええ。ってことは、お嬢さんも日本人か」
百合子 「ええ」
織部  「僕は日本から来たセールスマンです。この国に車を売りに来たん
     ですけど、うまくいかずに監禁されてしまいました」
百合子 「おじさんも?」
織部  「じゃあお嬢さんもセールスマン?」
百合子 「違います。私も監禁されてるんです」
織部  「そうなんですね・・・しかし、男と女でこんなにも待遇が違うも
     のかねえ」
百合子 「男女の差だからじゃないと思います」
織部  「じゃあ何で?」
百合子 「それは・・・私が若くて可愛いから」
織部  「そういうのは自分で言わないほうがいいですよ、お嬢さん」
百合子 「おじさん」
織部  「はい」
百合子 「口がくさい」
織部  「だって何日もハミガキしてないんだから仕方ないでしょ・・・お
     嬢さん、お名前は?」
百合子 「・・・百合子」
織部  「おじさんの名前は織部。織部オサム」
百合子 「織部さん」
織部  「そうです。百合子さんはどうして監禁されてるんですか?」
百合子 「私は国際協力隊の隊員です」
織部  「国際協力隊?ああ、知ってる。ニュースで見ました」
百合子 「そこで集団行動していたんですが、米軍の誤爆に遭ってしまって
     隊はバラバラに。私は運悪くここに逃げ込んでしまったんです」
織部  「運悪くも何も総統閣下の家だよ。とんだとこに逃げ込んだね」
百合子 「フセイン閣下にも会えました」
織部  「あ、僕も会いましたよ」
百合子 「そうなんですね」
織部  「ええ」

    若い女性と中年男性が二人っきりなので話が弾まない間。

織部  「あの、とりあえず、ここを出ないといけませんね」
百合子 「おじさん、ここも監禁された部屋なんです」
織部  「それでも脱出しないと。この国の人はわけ分かんないから」
百合子 「でも、どうやって?」
織部  「それを今から考えるんですよ・・・この扉の向こうはどうなって
     ます?」
百合子 「見張りがいます」
織部  「あー見張りかー。見張りねえ・・・」

    考えていると織部が通った穴からピーターが顔を出している。

ピーター「エクスキューズミー」
二人  「うわー!!」
ピーター「すいません、ちょっとここから出していただけますか?」
織部  「だだだだ誰?」
ピーター「アイダホの牧場に開いていた穴に入って見て、どんどんどんどん
     歩いてきたんです。そうしたらここに着きました」
織部  「え?この穴はアメリカまで続いてるの?」
ピーター「ウソです。今のはアメリカンジョークです」

    織部がピーターを穴に押し戻そうとする。

ピーター「ごめんなさい。ごめんなさい。やめてください。私はピーターと
     いいます。USアーミーです。先日のルバム軍との戦いの際に砂
     漠でルバム兵に捕まってしまいました。とにかくここから出して
     下さい。抜けなくて」
織部  「捕虜か・・・よいしょ!」

    ピーターを穴から引っこ抜く。

ピーター「ふう、助かった。ありがとうございます」
織部  「ピーターさん。あなたも牢屋から抜け出てきたんですか」
ピーター「はい。穴を掘ったらすぐに通路になってたので良かったです」
織部  「穴の中で日本人に会いませんでした?」
ピーター「分かりません。上から誰かが落ちて来て、更に下に落ちて行きま
     したが・・・」
織部  「それは多分私の同僚です」
百合子 「二人とも牢屋から抜けてきたみたいだけど、ここも監禁されてる
     の」
ピーター「サルも木から落ちる、ですね。がっかりです」
百合子 「どういうことです?」
ピーター「アメリカンジョークです」
織部  「でもこの部屋は鉄格子じゃなくて、普通の扉じゃないですか。向
     こうは監禁してるのがこのお嬢さんだけだと思って油断してるか
     もしれないですよね」
ピーター「してないね。50人くらいの兵隊がいたら完全にアウトよ」
織部  「じゃあ他に出口はありませんかね?」
百合子 「ないと思います」
ピーター「ないね。四面楚歌だね」
織部  「じゃあなんとかここから出る方法を考えるしかないんじゃないで
     すか」
ピーター「そうなっちゃいますね」
織部  「そうだ!僕と百合子さんは一般市民だ。一般市民は無条件で解放
     されるんじゃなかったかな」
百合子 「一般市民を戦争に巻き込むのは犯罪です」
織部  「じゃあセールスマンなんて完全に一般市民だ!やった!」
百合子 「私は国際協力隊が一般市民だということを信じて貰わないと」
織部  「ああ。そうか。百合子さん国際協力隊なんですよね」
百合子 「調べれば分かってくれるとは思うんですが」
織部  「じゃあよかった」
百合子 「ピーターさんは・・・」
織部  「・・・」
ピーター「いやいやいや、私も兵役が終れば一般市民ですよ」
織部  「でも今は兵隊でしょ?しかもアメリカの」
ピーター「でも元々は一般市民ですし」
織部  「じゃあフセイン閣下にそう言えばいいでしょ」
ピーター「言いますよ。当たり前じゃないですか」
織部  「絶対やめて。無理だから。あなた米兵だから」
百合子 「きっと殺されちゃいます」
織部  「アメリカに政治的な要求をするときにピーターさんを使おうとし
     てるのかな」
ピーター「使う?」
織部  「映像見たことありません?タリバンもやってた残虐な映像」
ピーター「もしかして・・・ユーチューブのあれですか」
織部  「多分それです」
ピーター「やだやだやだ。そんなのやだよー」
百合子 「おじさん、助けてあげなよ」
織部  「は?僕はただのセールスマンですよ。それが助ける?無理無理無
     理無理。そんなのできるはずないでしょ。そんなことしてフセイ
     ン閣下にばれたらそれこそ殺されちゃいますよ」
百合子 「見殺しにするっていうの?」
織部  「そうじゃなくて、アメリカ兵を助けたなんてことがばれたら一般
     市民っていう特典が帳消しにされちゃうってこと。そうなったら
     僕らまで殺されちゃうかも知れないんですよ。分かってます?」
百合子 「結局見殺しにするんじゃない。信じられない」
織部  「何なんです?信じられないのはこっちだよ・・・だいたい何でセ
     ールスマンが米兵を助けなきゃいけないの」
ピーター「そんなこと言ったって」
織部  「ピーターさん、あんた軍人でしょ?軍人なんだから自分で何とか
     しなさいよ。むしろあなたが私たちを助けるべきじゃないの?米
     軍は世界ナンバーワンなんでしょ?頑張れ米軍!日本にだって基
     地を置いたりして散々迷惑かけてるんだから!」
ピーター「いや。僕には無理!お願いしますよ。一緒に逃げてくださいよ」
織部  「僕と百合子さんは一般市民なの!一緒に逃げたら僕らのリスクが
     高くなるの!」
百合子 「私は彼が殺されるかも知れないと思うと、ほっとけません」
織部  「それはそうかも知れませんよ。でもですよ」
百合子 「私たちが助かったあとでピーターが殺される映像を流された
     ら・・・私にも罪悪感が残っちゃいそうで。そんなのイヤだ」
ピーター「僕が死ぬのは前提ですか?」
百合子 「あ!」
ピーター「頭隠して尻隠さずですね」
織部  「ん?」
ピーター「アメリカンジョークです」
織部  「僕らが死ぬかもしれないんですよ」
百合子 「なるほど。そうですか」
織部  「わかってくれましたか」
百合子 「わかりました。こんなおじさんに頼ってもムダ。もう結構です。
     私がピーターさんを守ります」
ピーター「ありがとうございます」
百合子 「ひとでなし!」
織部  「ひとでなしで結構です」
百合子 「ふん!」
織部  「・・・なんでこうなっちゃうんだろうなあ。分かりました分かり
     ました。みんなで力を合わせてなんとか逃げればいいんでしょ」
百合子 「そういうこと」
ピーター「私たちは仲間、一緒に逃げましょう」
織部  「仲間?仲間ではないでしょう」
百合子 「ピーターはもう仲間です」
織部  「仲間じゃないですよ。面倒くさい」
ピーター「仲間でいいじゃない」
百合子 「そう」
織部  「じゃあピーターさん、一緒に逃げる仲間になれるかどうかテスト
     させて下さい」
ピーター「何ですか?」
織部  「あなた、ルバム兵を殺しましたか?」
ピーター「え?」
織部  「この国の人を殺したことがありますか」
ピーター「・・・わかりません」
織部  「わかりませんってなんですか無責任だなあ」
ピーター「だって分からないんです。この国に上陸してから何度か戦闘があ
     りました。敵に向けて発砲はしました。でも当たったのか当たっ
     てないのかさっぱり」
織部  「それくらい分かんないんですか」
ピーター「すいません」
織部  「じゃあ、なんで捕まっちゃったんですか?」
ピーター「歩いてたら人が倒れてたんですよ。ほっとこうとも思ったんです
     よ。死んでるのかなとも思ったんですが、生きてたらどうしよう
     と思って。そのままにしてたら死んじゃうかも知れないじゃない
     ですか。それで声をかけたんですよ。そしたらそれが罠だったん
     です。それで捕らわれちゃったという・・・情けない話ですよ」
織部  「本当に情けないですね」
ピーター「すいません」
織部  「戦場じゃ絶対やらないことだよね」
ピーター「そうでしたか」
織部  「でもピーターさん。あなたのそういうところは嫌いじゃないで
     す。仲間になりましょう」
百合子 「うん」
ピーター「ありがとうございます」
織部  「いやでも本当に。本当に大丈夫なのかなあこのメンバーで」
百合子 「仕方ないでしょ。この3人でやるしかないんだから」
織部  「そうなんだけどね・・・」
百合子 「じゃあ作戦会議をはじめましょう」
ピーター「ちょっと・・・(簡単な手品を始める)ほら!」
織部  「ほらじゃないよ」
ピーター「アイムソーリー。場を和ませようと・・・」
百合子 「おじさん、がんばろう」
織部  「がんばりますよ」
ピーター「大使館まで行けばなんとかなると思います」
織部  「アメリカ大使館ですか、どこにあるんです?」
ピーター「アメリカ大使館はこの国にはもうありません。日本大使館です」
百合子 「日本大使館もないんじゃないですか?」
織部  「いや。一回ここで捕まったときに日本大使館に送られそうになっ
     たの。だからあるはずです。よし、とにかく日本大使館を目指し
     ましょう!」
百合子 「日本大使館か・・・」
ピーター「よーし。サルもおだてりゃ木に登るですね」
織部  「ブタね。アメリカンジョークはいいから・・・とはいえ、まずは
     ここをどうやって出るかです」

    みんな扉に注目する。

織部  「問題はこの扉の向こう側の見張りが何人か?」
百合子 「さっきトイレに行ったときは十人はいたわ」
ピーター「十人!無理だ。諦めましょう」
織部  「待って、トイレに行くときはこの扉を開けてもらえるの?」
百合子 「そうよ」
織部  「お!そうだ!(ゴニョゴニョゴニョ)どうですか?」
ピーター「グッドアイデアです」
百合子 「・・・グッドアイデア?いやいや無理でしょ」
織部  「今となってはここにいるほうが危険です」
百合子 「そうかもしれないけど」
ピーター「みんなで力を合わせましょう」
百合子 「・・・わかった」
織部  「よし!。やりましょう」

    みんな頷く。織部、扉に耳を当てる。
    ベルマーレがなにやらラップの練習をしているらしい。

織部  「(大丈夫そう)百合子さん!今です」
百合子 「(扉をドンドンして)すいません。お手洗いに行かせてくださ
     い」
ベルマ声「ヌルンダ!アボカドヌルンダ?」
百合子 「お手洗いに!トイレに行きたいんです」
ベルマ声「アボカドヌルンダ!トイレ?」
百合子 「トイレ!トイレです!」
ベルマ 「おお、トイレ!トイレガムシロ、トイレガムシロ」

    ベルマーレが扉を開ける。
    M・マジックショーの時に流れる音楽。
    みんな一斉に拍手をしベルマーレを歓待する。
    百合子がすかさずベルマーレに抱きついて座らせる。
    ピーターがベルマーレに手品を披露する。

ベルマ 「マギー?シローマギー?」

    織部がベルマーレの後ろから殴る「ポコッ」。
    ベルマーレ昏倒する。

ピーター「やった!」
織部  「上手く行きましたね」
百合子 「おじさん!いくよ!」

    こっそりと出て行く3人。

織部  「ごめんなさいね」

    時間経過
    やってくるエロメイド、フセイン、フーセン。兵士3人。

エロ  「こちらでございます」
フーセン「百合子、どこへ行ったの?私の百合子!」
フセイン「起こしなさい!」
エロ  「ニンギョーオブポーランド!」
ベルマ 「ハ?ネーチャン!」
エロ  「デクノボー、カラクリニンギョー(ベルマを叩く)」
ベルマ 「テクノカット!テクノカット」

    エロはベルマーレの指導係なのでとても厳しく叩く。

フセイン「トロロイモ!」
ベルマ 「タマネギ!タマネギナガネギ!」
フセイン「カモネギロクニンマエ!」
兵士1 「(やってきて)フセイン閣下、あちらの牢屋も空っぽです」
フセイン「日本人とアメリカ兵も?とにかく全員捕まえなさい!殺しても構
     いません」
フーセン「ダメ!殺しちゃダメ。生け捕りにしてちょうだい」
フセイン「ママ!」
フーセン「生け捕りにしてください。閣下」
フセイン「・・・全員生け捕りに!」
兵士たち「ははー!(と出て行く)」
フセイン「お前もだ!行けベルマーレ!カモネギドロマミレ」
ベルマ 「ニンニクアブラー(慌てて走り去る)」

    フセインの部屋。

フーセン「百合子・・・私の百合子・・・」
フセイン「ママ、あの子は日本の総理大臣の娘なんですよ」
フーセン「わかってるわ。わかってるけど・・・あんな真っ直ぐな目でママ
     と呼んでくれた・・・こんな私に」
フセイン「いい加減にあのことは忘れてください。エロ、まだ見つからない
     のですか」
エロ  「ベルマーレは犬の嗅覚を越える鼻の持ち主です。すぐに捕らえさ
     せます」
フーセン「もし百合子に何かあったらあなたを許しませんから」
エロ  「フーセン様、どうしてそこまで」
フセイン「とにかく誰一人として逃がすわけにはいきません」

    そこに戻ってくるベルマーレ。
    全裸にネクタイの明神が放り出される。

フーセン「なんですこの汚い野良犬は?」
明神  「うううう」
ベルマ 「ケツ・ビューティフル!」
フセイン「カモネギシルガウマーイ。これは?日本の中古車屋の片割れです
     よね」
エロ  「ベルマーレ、アジコメカタメ!(何でこいつなんだ)ユリコカン
     ダガワアブラスクナメ(神田川百合子はどうした?)」
ベルマ 「アカダマシロタマイップードウ」
エロ  「川で溺れていたのか」
ベルマ 「テニス」
エロ  「こんな奴を助けてるヒマがあったら神田川百合子を探せ!」
ベルマ 「ケツ・スイカワリ」
エロ  「フセイン閣下、申し訳ありません」
フセイン「野良犬さん!」
明神  「・・・あ、チビ閣下。あんたのせいでこんな目に」
フセイン「相変わらず礼儀を知らないようですね。ベルマーレ」
ベルマ 「オダワラ(明神を殴る)」
明神  「痛てえなーてめえ。ぶっとばすぞ」
ベルマ 「チョウチン(さらに明神を殴る)」
明神  「痛いって言ってるだろ」
エロ  「謝りなさい」
明神  「何で謝らなくちゃいけないんだよ。この国に来ただけで何もして   
     ないのに何でこんな目に遭わされて、その上謝らなくちゃいけな
     いんだよ。あ?かわいい!」
エロ  「アッラーに謝りなさい。フセイン閣下はアッラーによりこの国を
     託されているのです。閣下を蔑むことはアッラーを蔑むことにな
     るのです」
明神  「アッラー?」
エロ  「私たちイスラムの神です」
明神  「あっらーすいません」
エロ  「お前、殺す」
フセイン「・・・アッラーへの祈り方をこのエロに教わるといいでしょう」
明神  「エロって言うの?エロ?いいですねえ。よろしくお願いします」
フセイン「あなたは脱獄した挙句、川で溺れてベルマーレに助けて貰ったの
     です」
明神  「はあ、またあの牢屋に入れられるんですかね?」
フセイン「ベルマーレにありがとうは?」
明神  「ありがとうベルマーレ」
フセイン「まずはその格好をなんとかしてください・・・エロ!」
エロ  「はい。ベルマーレ!カポン」
ベルマ 「カポン(カポンを明神に渡す)」
明神  「ありがとうベルマーレ」

    明神の股間にカポンを装着するベルマーレ。

明神  「つけました」
エロ  「(確認して)よし。ぴったりだ」
明神  「本当にぴったりですか?ちょっと見てもらえます?」
エロ  「どこだ?」
明神  「いや、この下のあたりが」
エロ  「見せてみろ(とタマキンを確認しようとする)」
フセイン「やめろ!ベルマーレ!」
ベルマ 「テニス」
明神  「ちっ。あ、ぴったりになりました。もう大丈夫です」
ベルマ 「テニス」
明神  「それで・・・俺をどうするつもりですか?」
フセイン「あなたはわが国が嫌いですか?」
明神  「閣下!俺はこの国を豊かにしたくて車を売りにきたんですよ!好
     きです」
フセイン「金が欲しくてここに来たんですよね?」
明神  「まあ、そうなんですけど。でも(エロをチラ見して)好きです」
フセイン「ずっとこの国にいさせてあげることもできるのですよ」
明神  「ずっと?ずっとと言われましても」
フセイン「日本に帰りたい?」
明神  「ええ、まあ」
フセイン「なぜ?」
明神  「なぜ?両親は・・・いないな。友達は・・・ろくでもない
     な・・・仕事は・・・どうでもいいな・・・なぜ?なぜ俺は日本
     に帰りたいんだ?」
フセイン「考えておきなさい。それまではエロの下で捕虜として働きなさ
     い」
エロ  「わかりました」
明神  「エロさんと一緒に・・・わっかりました!了解です」
フセイン「いい?(銃を出し)あなたを殺すのは簡単です。殺した言い訳も
     簡単」
明神  「ヒー!はい!」
フセイン「お前の命は私次第というわけです。おすわり!」
明神  「ワン!」
フセイン「そのまま待機」
明神  「ワンワン!」
フセイン「それで、ベルマーレ。神田川百合子はどうしました。見つけたん
     ですよね」
エロ  「はい。追い詰めたのですが、生け捕りにはできなかったと」
フセイン「ヌラナイパチンパチン!説明しなさい!」
ベルマ 「テニス」

    (回想)
    百合子、織部、ピーターが走ってくる。
    ベルマーレが追う
    織部たち、砂を撒き散らすのでベルマーレが怯む。
    ベルマーレ、思わず銃を百合子に向ける。
    止まってしまう百合子。
    引金を引くベルマーレ。百合子に当たったように見える。
    3人はよろよろと逃げていく。
    ベルマーレ、『殺してしまった!』とガックリとしている。

フーセン「百合子が・・・死んだ・・・(泣き崩れる)」
フセイン「まさか・・・殺してしまったの?神田川百合子を・・・」
ベルマ 「ケツヌラナイセッカン(土下座)ケツヌラナイセッカン」
フセイン「愚か者!」

    そこに「ピンポーン」と呼び鈴が鳴る。

エロ  「お客様のようです(と玄関へ)」
フセイン「ベルマーレ。ママを悲しませるなんて、許しませんよ」
ベルマ 「ヌラナイ、ヌラナイ」
明神  「織部さんが若い女と?」
不二子声「ケツ・ビューティフル!」

    峰不二子が入ってくる。
    不二子、エロ、フーセンが踊る。キレッキレの不二子。

エロ  「閣下、日本からお客様がご到着です」
明神  「日本から?」
不二子 「フセイン総統閣下。お初に御目文字申し上げます。私は日本国総
     理大臣、神田川為五郎が私設秘書。峰不二子と申します。本日は
     神田川のご令嬢、百合子様の身柄を引き取りに参りました」
明神  「こんにちわ日本の偉い人。僕、捕まってるんです」
不二子 「あなたは?」
明神  「明神健一郎です」
不二子 「その格好は?」
明神  「話せば長くなりますが、話しましょう」
フセイン「ハウス」
明神  「ワン」
不二子 「(一瞥して)」
フセイン「峰不二子様、はるばる我がルバム国へようこそ。神田川総理はお
     元気ですか?」
不二子 「神田川もこちらに来ております」
フセイン「神田川総理が?」
不二子 「総理どうぞ」

    作り笑顔で登場する神田川総理。

神田川 「ケツ・ビューティフル、フセイン総統閣下!」
フセイン「ケツ・ビューティフル、神田川総理。ようこそルバムへ」
明神  「あ、テレビで見たことある人だ!神田川総理!助けてください。
     僕、捕まっちゃったんです」
神田川 「この人は?」
フセイン「ああ、気にしないで下さい」
神田川 「君、申し訳ないが今回は私用なので見なかったことにするよ」
不二子 「はい、この人はいません」
明神  「なんだよそれ!おい馬鹿総理!国民を助けないのかよ」
フセイン「ハウス」
明神  「ワンワン・・・くそっ」
フセイン「ところで総理、約束の件は?」
神田川 「あの後オバマ大統領に連絡をした。しばらく爆撃はしないと約束
     をしてくれた」
フセイン「ありがとうございます」
明神  「ワンワン」
不二子 「総理、この国には日本人はおりません。渡航が許されていないの
     ですから」
明神  「ワンワン。ワンワン。ワンワン。ワンワン」
神田川 「確かにそうだ」
不二子 「さて、本題に入らせていただきます。総理、どうぞ」
明神  「ワンワーン。ワンワンワン。ワンワン」
フセイン「(銃をチラつかせて)ハウス」
明神  「クーン・・・」
神田川 「約束は果たした。百合子を返していただこう」
フセイン「もうひとつの約束についてはどうなりました?」
神田川 「もうひとつ?」
フセイン「『ルバム無差別爆撃』の報道発表ですよ」
神田川 「その件に関しては我が国で調査中だ。まだ発表はできない」
フセイン「無差別とはどういう意味かご存知ですか。爆撃対象が一般市民も
     含まれるということです。国際ルールではたとえ戦争中であって
     も一般市民を攻撃対象にしてはならない」
神田川 「その通りです」
フセイン「国際連合の常任理事国であるアメリカは、国際ルールを侵しわが
     国に無差別にミサイル攻撃を行っています。どう思われますか」
神田川 「私にアメリカのことを聞かれても困ります」
フセイン「神田川総理、落ち着いて聞いてください」
神田川 「どうしましたか」
フセイン「残念なことです。あなたの娘・神田川百合子さんもまたアメリカ
     の無差別爆撃の犠牲者になってしまいました。お悔やみ申し上げ
     ます」
神田川 「なに?なんだって?」
フセイン「百合子さんは、あなたとの電話を切ってすぐにルバム市街地へ行
     き、買い物中に米軍のミサイル爆撃に遭ってしまったのです」
神田川 「は?・・・あなた何を言ってるんですか。ウソをつくんじゃな
     い。百合子が死んだだと?バカなことを言わないでいただきた
     い」
フセイン「神田川総理、私はあなたとの約束を全て守りました。爆撃からは
     守れない可能性があることも伝えましたよね」
神田川 「信じないぞ。そんなこと信じない。フセイン閣下、あなたは何を
     たくらんでおられる」
フーセン「本当なんです。百合子ちゃんは・・・百合子ちゃんは・・・ああ
     あああ」
神田川 「信じん。こちらでも調べさせていただく。不二子くん」
不二子 「かしこまりました」
フセイン「信じられないお気持ちは分かります。どうぞお気の済むように」
神田川 「フセイン閣下。この調査が終るまではここルバムに滞在させてい
     ただく」
フセイン「どうぞ。お部屋を用意させましょう」
不二子 「しかし総理、群馬の会合のほうは?」
神田川 「過労で緊急入院したことにすればいいだろう。女子医大の佐々木
     先生なら上手くやってくれるはずだ」
不二子 「・・・了解いたしました。ではそのように手配を」
神田川 「百合子・・・」

    不二子、早速出て行く。
    対峙する神田川とフセイン一派と明神。
    暗転。

4へ続く


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アラブ諸国の人が見るニュースと我々が見るニュースは全く違う。報道はいつも思想、政治、仮想敵国によって操作される。米国がジャイアンよろしく某…

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